断罪された悪役令嬢はその場で事件を解決する
王立セレスティア学院の卒業祝賀会は、一人の令嬢を裁く場へ変わっていた。
楽団は演奏をやめている。広間を囲む窓には夕方の光が残っていたが、百人を超える招待客の目は中央に立つセレフィーナ・アルノールへ集まっていた。
その正面には王太子アレクシスがいる。普段なら人を安心させる笑顔を浮かべる青年も、今夜ばかりは口元を固く結んでいた。
「セレフィーナ・アルノール。私は今この場をもって、君との婚約を破棄する」
宣言を受けてもセレフィーナは背筋を曲げなかった。濃紺のドレスには銀糸の飾りがわずかにあるだけで、黒髪にも大きな宝石はない。祝いの席には地味すぎる装いが、今は喪服のように見えた。
招待客の間から押し殺した声が上がる。
驚いている者ばかりではない。ようやくこうなったかと納得した顔も多かった。セレフィーナは学院で好かれていない。それは本人も知っている。
「理由をうかがってもよろしいでしょうか」
「君はリリアナ・ベルモント嬢へ長く嫌がらせを続けてきた。身分を理由に授業から追い出し、友人との交流を妨げ、何度も王太子である私へ近付くなと脅した。今日に至っては彼女の命まで奪おうとした」
アレクシスの左手側には長椅子が置かれていた。淡い桃色の髪を乱したリリアナが横たわり、学院付きの医師から診察を受けている。顔色は悪い。呼吸は落ち着き始めていたが、震えの残る右手を胸元で固く握っていた。
セレフィーナは数日前に読んだ地方紙を思い出した。ベルモント男爵が始めた織物事業は失敗し、王都の商会が借金を買い集めている。父親の事情と今夜の事件が関係するかは、まだ分からない。
セレフィーナはまず医師を見た。
「彼女の容体は?」
「命に関わる状態ではありません。口にした量が少なかったのでしょう。ただし毒物らしい反応は出ています」
「私に答えろ」
アレクシスの声にセレフィーナは視線を戻した。
「質問の順番を決めるのは殿下ではございません。命が危ないなら先に治療すべきです」
祝いの席で王太子を言い負かしたいのか。そんなささやきが聞こえた。セレフィーナには反論する必要も感じられなかった。
アレクシスは一度目を閉じてから側近へ手を差し出した。
「証拠はある。これを」
銀縁眼鏡をかけた細身の男が一歩進み出た。王太子府財務官ユリウス・カルマン子爵である。彼は白い布を敷いた盆を持っていた。
リリアナが倒れた直後に「毒を飲まされた」と声を上げたのもユリウスだった。医師が診察を始める前だったため、セレフィーナはその言葉を覚えていた。
一か月前の会計説明では、王太子府の支出に不自然な点があると彼へ伝えている。結婚後に帳簿を調べるつもりだと告げても、ユリウスは表情を変えなかった。
盆の上には三つの品が並ぶ。透明な液体が残った小瓶。折り畳まれた手紙。毒物を売った商人の証言書だった。
「リリアナ嬢が倒れた直後、カルマン子爵の提案で君の学院の部屋を調べた。寮監と衛兵が立ち会い、鍵の掛かった薬棚からこの瓶が見つかった。彼女の杯から検出された物と同じ毒だ」
セレフィーナは小瓶へ顔を近付けた。触れようとはしない。
「ずいぶん早い捜索でしたのね」
「証拠を捨てられてからでは遅い。捜索には学院長も許可を出している」
「手続きの話ではありません。毒と決まる前に私の部屋を探す理由を、どなたが思い付いたのかと聞いております」
「私です」
ユリウスが答えた。声にも顔にも動揺はなかった。
「セレフィーナ様がリリアナ様を日頃から敵視していたことは王太子府でも知られております。給仕の証言もあったため、証拠の保全を優先しました」
「そうですか」
セレフィーナは手紙を開かせた。
『祝賀会で彼女に飲ませなさい。毒は薬棚にある。失敗は許しません』
続けて毒物の名と使用する日時が書かれ、最後にはセレフィーナ・アルノールという署名がある。筆跡は彼女のものと見分けがつかない。
「この手紙は給仕が持っていた。君から渡され、リリアナ嬢へ果実水を運ぶよう命じられたと証言している」
アレクシスはさらに商人の証言書を示した。黒髪で長身の若い女へ一か月前に毒を売ったと記されている。似顔絵まで添えられていた。
「そしてリリアナ本人も君から脅されていたと証言している。まだ否定するつもりか」
「いいえ」
広間がざわめいた。
アレクシスも返す言葉を失ったらしい。セレフィーナは手紙から顔を上げた。
「今の段階で否定しても意味がないと申し上げたのです。殿下はわたくしの言葉より、そちらの紙を信じるのでしょう」
「当然だ。証拠がこれだけそろっている」
「ええ。そろいすぎております」
セレフィーナは盆の上を順に見た。
「署名も毒の名も対象者の名も日時も書かれている。毒はわたくしの部屋に残り、購入先の商人までわたくしを覚えている。まるで罪を隠すためではなく、わたくしを犯人だと教えるために用意された証拠ですわ」
「言い逃れだ」
「妙ですわねと申し上げているだけです。わたくしが犯人なら、このような手紙を書く理由がありません」
アレクシスの後ろに立っていた貴族の一人が鼻で笑った。
「自分ならもっとうまくやるとでも?」
「はい」
即答すると笑った男の顔が引きつった。
「リリアナ嬢を害するつもりなら、わたくしは自分の署名も毒瓶も残しません。給仕へ目的まで書いた命令書を渡すこともございません。殿下も七年わたくしをご覧になったのなら、それくらいは分かると思っておりました」
「君の高慢さは無実の証明にならない」
「その点には同意いたします」
セレフィーナはリリアナへ目を向けた。リリアナはおびえたように顔を背ける。その反応だけを見れば、セレフィーナが長く苦しめてきたという話は真実に思えた。
実際に二人の仲は悪い。
リリアナが許可なく王太子専用の資料室へ入ったときは、その場で退出させた。課題を友人に書かせたと気付いたときは教師へ報告した。王太子との距離が近すぎると本人へ告げたことも一度ではない。
正しかったから謝る必要はないと考えていた。それで相手がどれほど傷付いたかは、今も判断の外に置いている。
「殿下。逮捕される前に一つだけお願いがございます」
「何だ」
「この事件を調べさせてくださいませ」
今度は先ほどより大きな笑いが起きた。
セレフィーナは笑った者の顔を一人ずつ見た。三人目まで見たところで笑い声は消えた。
「犯人に捜査をさせろと言うのか」
「疑われている者です。まだ犯人ではございません」
「証拠には触れさせられない」
「触れません。質問し、見て、考えます。それだけです」
「殿下」
低い声が横から割って入った。王都衛兵隊の制服を着たレオン・クロフォードが、人垣を抜けて中央へ出てきた。警備のため祝賀会へ派遣されていた彼は、倒れたリリアナの周囲に人を近付けないよう衛兵を配置していた。
「私は捜査の指揮を執る立場ではありません。しかし現場を閉じる前に逮捕を宣言すれば、後から手続きそのものを問われます。アルノール侯爵家が相手ならなおさらです」
「彼女の幼なじみである君の意見を、公平だと信じろと言うのか」
「信じる必要はありません。私の行動はここにいる衛兵全員へ見張らせてください」
レオンはセレフィーナを見た。
「お前はどれだけ必要だ」
「一時間」
「長い」
「あなたは推理が遅いですから」
「協力を頼む相手に言うことか」
「事実です」
レオンはため息をこらえるように口を曲げた。
アレクシスは招待客を見回した。これだけの貴族の前で私情による断罪だったと疑われることは避けたいのだろう。やがて彼は懐中時計を取り出した。
「一時間だけ与える。ただし広間と休憩室から出ることは許さない。証拠には衛兵が立ち会う。逃亡や証拠隠しの動きがあれば直ちに拘束する」
「十分です」
叔母のイザベルは、幼いセレフィーナが事件記録を読むたびに同じことを言った。
犯人を当てるな。まず何が起きたのかを考えなさい。
セレフィーナは盆の上からリリアナの杯へ視線を移した。
「では最初に、彼女が何を飲んだのか確認いたします」
杯は長椅子のそばにある小卓へ置かれていた。白い陶器に青い花と細い金線が描かれている。底には果実水がわずかに残っていた。
「誰も動かしていませんね」
レオンが答えた。
「俺が来たときにはそこにあった。医師が残った液を調べた以外は触れていない」
「給仕を呼んでください」
連れてこられたのは十六歳ほどの少年だった。青ざめたまま両手を前で握っている。
「あなたがリリアナ様へ果実水を運んだのですか」
「はい。ですが毒など入れておりません。本当です」
「誰から命じられました?」
「今朝、配膳室にあの手紙が置かれていました。セレフィーナ様の署名があったので従いました。赤い縁の杯へ果実水を注ぎ、リリアナ様へ直接お渡ししました」
セレフィーナは小卓を示した。
「あの杯ですか」
少年はそちらを見てから首を横へ振った。
「違います。私が運んだのは赤い縁でした。祝賀会では身分ごとに杯を分けています。男爵家の方には赤い縁の物を使いますから、間違いありません」
広間にいた者たちが小卓を見た。
青い花の杯は、男爵家の客へ配られる物ではなかった。
「リリアナ様へ渡した後は?」
「すぐ配膳室へ戻りました。ほかの方の飲み物も運ばなければならなかったので」
「彼女がその場で飲むところを見ましたか」
「いいえ」
セレフィーナはレオンへ顔を向けた。
「赤い杯を探してください。洗い場へ運ばれているかもしれません。青い杯がどこから出された物かも確認を」
「分かった」
彼が衛兵へ指示を出す間に、セレフィーナは医師へ尋ねた。
「検出された毒について教えてください」
「ネルディスという薬草から作る毒です。一定量を飲めば呼吸が止まります。リリアナ嬢には指先のしびれと息苦しさがありましたが、今は治まりつつあります」
「味は?」
「精製された物は無味です。果実水へ入れても気付くのは難しいでしょう」
「杯に残っていた量と症状は合っていますか」
医師はひげをなでた。
「杯へ入れられた全量を飲んだなら軽すぎます。底に粉が残っていましたので、溶け残った分が多かったとも考えられますが」
「飲んだ量を自分で調整した可能性は?」
長椅子の上でリリアナの肩が動いた。
医師は彼女を見た後で答えた。
「可能です。口に含んですぐ吐き出せば、同じ程度の症状になるでしょう」
「わたくしは怖くて、一口しか飲めなかったのです」
リリアナがかすれた声で言った。
「異変を感じたので、それ以上は」
「分かりました。今は休んでいてください」
セレフィーナはそれ以上追及せず、小瓶へ向き直った。
薬瓶は親指ほどの大きさだった。表面は磨かれ、栓には指で触れた跡が残っている。
「発見したときもこの状態でしたか」
ユリウスが答えた。
「ええ。薬棚の奥にありました」
「わたくしの薬棚をご覧になったのですね」
「寮監が取り出しました。私は立ち会っただけです」
「棚にはほこりが?」
寮監の女性が呼ばれた。彼女は考えてからうなずいた。
「休暇前の清掃から十日ほどたっております。棚の奥には薄くほこりがありました。ですが瓶はきれいでした。薬品ですので誰かが拭いたのだろうと思い、その場では気に留めませんでした」
「瓶を置いた跡はありましたか」
「いいえ。瓶の下にもほこりがありました」
「つまり長く置かれていた瓶ではない。ほこりの上へ今日か昨日に置かれた物です」
「君が自分で置いたとも考えられる」
アレクシスの指摘にセレフィーナはうなずいた。
「そのとおりです。これはわたくしの無実を示す証拠ではありません。ただし部屋から見つかったというだけで、一か月前に購入した瓶だとは言えなくなりました」
アレクシスは黙った。
セレフィーナは一つ目の証拠を退けたつもりはない。可能性を元の広さへ戻しただけだった。
決め付ければ見落とす。自分が無実だという事実も、考えるときには邪魔になる。叔母から何度もたたき込まれたやり方だった。
次に調べるべきは手紙だった。
セレフィーナは衛兵に紙を広げさせ、離れた場所から文字を追った。紙は王太子府でも使われる上質な物で、学院内なら珍しくない。筆記具も一般的な黒いインクだった。
「殿下。この署名を本物だと思われた理由は?」
「君が王太子府へ提出した文書と照合した。カルマン子爵と二人の文官が確認している」
「照合した文書を一つお持ちですか」
ユリウスが革の書類入れから一枚の紙を出した。卒業後の居所についてセレフィーナが提出した届けだった。末尾には名前と家名を続けて書いた署名がある。偽の命令書と並べると線の曲がり方まで同じに見えた。
「確かにわたくしの筆跡です。ただしこの手紙を書いた者は、わたくしと個人的に手紙を交わしたことがありません」
「なぜ分かる」
「私的な手紙へこの署名は使わないからです」
セレフィーナはレオンへ頼み、腰の小物入れから一冊の手帳を取り出してもらった。最後の頁には、祝賀会の準備について友人ではない同級生へ渡した短い覚え書きが挟まっている。
末尾にあるのは『S・A』の二文字だけだった。
「家族や親しい相手にはセレフィーナとだけ書きます。使用人への指示は頭文字です。氏名を全て書くのは王家や役所へ出す公的な文書に限ります」
「そんなものは習慣にすぎない。今回だけ変えた可能性もある」
「ええ。ですからこれも無実の証明にはなりません。ただ偽造した者が、王太子府に保管された文書を見本にした可能性は高くなりました」
ユリウスの表情は変わらなかった。眼鏡の位置を直すこともなく、セレフィーナを見返している。
彼は慎重な男だと聞いていた。王太子府の財務を任されながら社交界で名が広まらないのは、目立つ失敗も手柄も外へ出さないからだろう。
セレフィーナは手紙を見たままレオンへ声を掛けた。
「王太子府へ提出したわたくしの文書は、誰が閲覧できますか」
「俺に分かるわけがない」
「では分かる者へ聞いてください」
「お前は本当に人使いが荒いな」
「一時間しかございませんので」
レオンは近くにいた衛兵へ何事か耳打ちした。指示を受けた衛兵は広間を出ていく。
アレクシスが眉を寄せた。
「広間から出るなと言ったはずだ」
「セレフィーナは出ておりません。衛兵が確認へ行くだけです」
「言葉の穴を突くな」
「捜査では言葉の意味を正しく扱うべきです」
「お前は黙っていろ」
レオンは肩をすくめたが、口元にはわずかな笑いがあった。
そのやり取りを見ていたリリアナは目を伏せた。右手はまだ握られたままである。医師が何度か開くよう求めても、怖いから何かを握っていたいと言って拒んでいた。
「リリアナ様」
呼ばれた彼女は身を固くした。
「あなたへの嫌がらせについて確認いたします。わたくしが授業から追い出したというのは、薬学実習の件ですね」
「はい。皆の前で出ていけと」
「課題を友人に書かせたと教師へ伝えた件と、王太子専用の資料室から退出させた件も嫌がらせに含めましたか」
「それは……」
「セレフィーナ。被害者を責めるな」
アレクシスが前へ出ると、セレフィーナは手のひらを向けて止めた。
「嫌われる理由の確認です。わたくしと彼女の関係が悪かったことは否定いたしません。彼女が規則を破るたびに指摘したことも事実です。言葉が厳しすぎたと言われれば、おそらくそうなのでしょう」
リリアナは顔を上げた。セレフィーナが非を認めるとは思っていなかったらしい。
「ですが嫌われていることと犯罪者であることは別問題です。あなたは今日、わたくしが果実水へ毒を入れるところを見ましたか」
「見てはいません。でも給仕の方が、あなたからだと」
「ではわたくしに毒を飲めと直接命じられましたか」
「いいえ」
「倒れる前にわたくしと話しましたか」
「……話していません」
「あなたが知っているのは、わたくしと仲が悪いことだけですね」
リリアナは答えなかった。
セレフィーナは彼女を追い詰める言葉を選べた。だが今はまだ使わない。リリアナが何を隠しているのか確かめるには、逃げ道を残す必要がある。
レオンが青い杯を布越しに持ち上げた。
「こいつは休憩室から持ち出された物らしい。あちらには身分で分けていない予備の杯があり、同じ青い花の物が六客置かれていた。一客だけ足りない」
「赤い杯は?」
「広間の北側にある飾り布の裏で見つかった。果実水が半分ほど残っている。今、医師が調べている」
「リリアナ様が最初にいた場所は?」
「給仕から杯を受け取った後、休憩室へ入るところを二人が見ている。その後に青い杯を持って広間へ戻ったようだ」
招待客の視線がリリアナへ集まった。
アレクシスは彼女を守るように長椅子の前へ立つ。
「休憩室で誰かに交換されたのかもしれない」
「それならリリアナ様は赤い杯を持って入り、青い杯を持って出たことになります。室内にいた人物を確認しましょう」
「私だけです」
リリアナが答えた。
「気分が悪くなったので、一人で休んでいました。杯の色は見ていません」
「すでに気分が悪かったのですか。毒の入った青い杯を飲む前に?」
「緊張していたという意味です」
「なるほど」
セレフィーナは青い杯へ近付いた。縁に淡い桃色の跡がある。リリアナが使っている口紅と同じ色だった。
「休憩室で何者かが交換したとしても、毒を入れた時点はまだ分かりません。給仕が運んだ赤い杯に毒がないなら、わたくしの命令で毒入りの飲み物を運んだという証言は崩れます」
ほどなく医師が赤い杯の確認を終えた。
「こちらから毒物は見つかりません。少なくとも簡易の試薬には反応しませんでした」
ざわめきが広がる。
給仕はその場へ座り込みそうになり、近くの衛兵へ支えられた。彼が運んだ飲み物には毒がなかった。セレフィーナからの命令書が偽物なら、少年は名前を使われただけである。
「これで給仕が毒を入れた可能性は低くなりました」
「君が休憩室へ先回りして青い杯を用意したとも考えられる」
アレクシスはなお食い下がった。
セレフィーナは時計を見た。調査を始めて二十分ほどしかたっていない。自分の無実を訴えるだけなら、彼の言葉へ反論し続ければよい。だがそれでは何が起きたのか分からない。
「わたくしの所在は後で確認してください。今は毒を飲んだ方へ話を戻します」
セレフィーナは長椅子の前まで進んだ。
「リリアナ様。あなたは青い杯から何を飲んだのです?」
「果実水です」
「どのような味でしたか」
リリアナの唇がわずかに開いた。彼女は広間にいる者たちを見た後、アレクシスへ目を向ける。
「甘い果実水です。でも少し苦くて、それでおかしいと思いました」
セレフィーナは返事をせず医師を見た。
医師は先ほどと同じ答えを口にする。
「ネルディスの精製毒は無味です」
「だそうです」
「私がそう感じただけかもしれません」
「そうかもしれません。ですがあなたは倒れた直後にも、苦い飲み物をセレフィーナ様に飲まされたとおっしゃいましたね」
レオンが記録係の衛兵から紙を受け取った。
「最初の聞き取りに残っている。医師が毒の種類を調べる前だ」
リリアナの握った右手が震えた。
「口を開けてください。舌に傷がないか確認します」
医師の求めにリリアナは従った。医師は明かりを近付け、口内を見てから首をかしげる。
「吐き出したのであれば舌や唇に刺激の跡が残ることがあります。しかしほとんど見当たりません。ごく少量を飲んだのでしょう」
「怖かったからです」
「何が怖かったのです?」
セレフィーナが尋ねるとリリアナは黙った。
「毒だと知らなければ、一口目を自分で少なくする理由はありません。無味なら口へ入れた段階でも気付けない。あなたは飲む前から、それが毒入りだと知っていたのではありませんか」
「違います」
「では右手を開いてください」
「これは関係ありません」
「関係があるかどうかは、見てから決めます」
アレクシスがリリアナの前へ出た。
「彼女は被害に遭ったばかりだ。無理に従わせるつもりか」
「殿下は先ほど、わたくしの部屋を本人の許可なく捜索なさいました。被害者を疑うことだけが非情だとお考えなら、公平という言葉はお使いにならない方がよろしいでしょう」
アレクシスの顔に怒りが浮かぶ。しかし反論は出なかった。
レオンが二人の間へ入った。
「リリアナ嬢。証拠を持っていないなら手を見せるだけで済む。拒み続ければ、こちらも理由があると考える」
「でも……」
「俺たちはお前を罪人だと決めているわけじゃない。何を握っているのか確認するだけだ」
同じ要求でもレオンが言えば、責める響きは薄くなる。セレフィーナにはできない言い方だった。
長い迷いの末、リリアナは指を開いた。
手のひらには白い布の切れ端があった。細かな粉が繊維の間に残り、一部が汗で固まっている。
医師が別の布で受け取り、試薬を一滴落とした。白い布に紫色の染みが広がった。
「ネルディスです」
広間のざわめきは今度こそ抑えられなかった。
リリアナは両手で顔を覆った。泣き声は出なかったが、細い肩が震えている。
「なぜ彼女が毒を持っている」
アレクシスの声には先ほどまでの確信がなかった。
「本人へ聞けば分かります」
セレフィーナは長椅子の前に立ったまま言った。
「リリアナ様。あなたは休憩室で赤い杯を隠し、予備の青い杯へ毒を入れた。飲む量を抑えたものの、手に残った包みを捨てる余裕がないまま広間へ戻った。そして皆の前で倒れた。違いますか」
「……違います」
「なら苦味について、誰から聞いたのです?」
リリアナの肩が止まった。
「この毒には苦味がある。少量なら死なない。そう説明した者がいるはずです。あなたはその説明を信じていたから、実際にはしなかった苦味を口にした」
「知りません」
「あなた一人で計画したのなら、無味だと知らなかったことになります。しかし毒の入手先は? わたくしの署名をまねた手紙は? 部屋へ置かれた瓶は? あなたには王太子府の公的文書を見る手段がございません」
セレフィーナは声を強めなかった。ただ問いを重ねるたび、リリアナの逃げ道が一つずつ消えていく。
「あなたは首謀者ではない。誰に言われたのです?」
リリアナは顔を覆ったまま首を振った。
「お父上の借金と関係がありますか」
その言葉で彼女の手が落ちた。
紙面では債権を買った商会名までしか分からなかったが、リリアナが危険を冒す動機としては十分だった。
「なぜ、それを」
「新聞に載っていました。隠されていたのは債権を買った者の名だけです」
リリアナは唇をかんだ。アレクシスが彼女の名を呼んでも、もう顔を向けなかった。
「父の借金を全てなくすと言われました」
やがて出た声は聞き取るのが難しいほどかすれていた。
「私は少し毒を飲んで倒れるだけでいいと。死ぬ量ではないし、すぐ医師に診せれば後も残らないからと。従わなければ領地も屋敷も取り上げられる。弟たちも学院へ通えなくなると言われて……」
「誰にです」
リリアナは答えなかった。
アレクシスが片膝をつき、彼女と目線を合わせた。
「私に話してくれ。君を脅した者は必ず捕らえる」
その言葉を聞いたリリアナの顔がゆがんだ。
「それだけではありません。セレフィーナ様がいなくなれば、私が殿下のおそばにいられるかもしれないと思いました。家族のためだけではありません。私も望んだのです」
アレクシスは伸ばしかけた手を止めた。
「申し訳ございません」
リリアナはセレフィーナを見た。
「私が間違っていました。どうか許してください」
「泣けば罪が軽くなる制度はこの国にはありません」
周囲から息をのむ音がした。レオンだけが目を伏せ、何も言わなかった。
「あなたが謝る相手はわたくしだけではありません。名を使われた給仕も、偽の証言で判断を誤らされた方々もいます。許しを求める前に、知っていることを全て話してください」
リリアナは涙を拭い、広間の端に立つ男へ視線を向けた。
「カルマン子爵です」
全員の視線がユリウスへ移った。
先ほどまでセレフィーナを見ていた目が、同じ広間で同じように一人の男へ集まっている。立つ場所までほとんど変わらない。ただし今度は中央にセレフィーナがいた。
ユリウスは眼鏡の奥で一度まばたきをした。
「恐怖と混乱で判断を失っておられるようです。私はベルモント嬢と個人的に話したことすらありません」
「うそです」
リリアナは長椅子から身を起こした。
「三か月前に王都の貸家へ呼ばれました。父の署名が入った借用書を見せられ、協力すれば全て買い戻すと言われました。毒も今日の昼に休憩室の机の裏へ隠しておくと聞きました」
「その借用書は今お持ちですか」
ユリウスの問いにリリアナは首を横へ振った。
「でしょうな。存在しない物は出せません」
「証拠はあるのですか」
ユリウスはセレフィーナを見た。
それは一時間前、セレフィーナが王太子へ尋ねた言葉と同じだった。
彼女は迷わず答えた。
「もちろん」
ユリウスの片方の眉が上がる。
「まずあなたはリリアナ様が倒れた直後、毒だと発言しました」
「突然倒れれば毒を疑うのは当然です」
「医師は病気や過度の緊張も考え、診察するまで原因を断定しませんでした。ところがあなたは『毒を飲まされた』と言った。その場にいた衛兵の記録にも残っています」
「予想が当たっただけでしょう」
「次にわたくしの部屋の捜索を提案し、ほこりの上へ置かれた瓶を最初に見つけた。偽造された署名は王太子府へ出した公的文書のものです。閲覧できる立場の人間は限られます」
先ほど確認へ出た衛兵が戻り、レオンへ紙を渡した。
レオンは内容へ目を通す。
「該当する届けを保管庫から取り出せるのは王太子府の文官と財務官、それに王太子殿下の許可を受けた者だけだ。閲覧簿によると、一か月前にカルマン子爵が婚礼予算の確認を理由として持ち出している」
ユリウスはすぐに答えた。
「正当な職務です。将来の王太子妃がどこへ居を置くかは予算に関係する」
「ええ。これも単独では罪の証明になりません」
セレフィーナが認めると、ユリウスの口元へ初めて笑みが浮かんだ。
「では何が証拠だと?」
「ベルモント家の債権を買った商会です。リリアナ様は名をご存じですか」
「ガルド商会です」
「ガルド商会は王太子府へ布地を納めています。契約の認可を担当するのは財務官であるあなたです」
「王太子府と取引する商会は数十あります。偶然でしょう」
「毒を売った商人の証言書もあなたが用意しました。商人はどこにいます?」
アレクシスがユリウスを見る。
「証言の確認は取れているのか」
「部下に行わせました。署名と商会印に問題はありません」
「どの部下です?」
「この場にはおりません」
「では証言をした商人の顔を、あなた自身は見ていないのですね」
ユリウスは答えず、眼鏡の位置を直した。
セレフィーナはその動きを見てから続ける。
「あなたがリリアナ様を利用した理由は、わたくしを嫌っていたからではありません。わたくしが王太子妃になると困る事情があったからです」
「想像に付き合うつもりはありません」
「数か月前から王太子府の支出を調べておりました。婚礼費用の確認をしていた際、同じ物品が異なる商会名で二度計上されていると気付いたからです。金額は小さいものの、五年分を合わせれば相当な額になります」
アレクシスが振り返った。
「そんな話は聞いていない」
「お伝えしておりません。確認前の疑いを事実として扱うべきではないからです。結婚後に正式な閲覧権を得てから調べる予定でした」
「それを誰かに話したのか」
「一か月前の会計説明でカルマン子爵へ、結婚後は王太子府の帳簿を全て確認すると申し上げました」
「王太子妃として当然の仕事だと受け止めました」
ユリウスの声は変わらない。
「それだけで私を横領犯と呼ぶのですか」
「いいえ。あなたには公的署名を見る機会があり、毒を知り、捜索先を示し、リリアナ様の父親が負った借金を動かせる商会とつながりがある。さらにわたくしを王太子府から遠ざける動機もあった。それでも全て状況証拠です」
「ならば結論は出ています」
ユリウスはアレクシスへ向き直った。
「殿下。一人の令嬢の根拠のない推理で、王太子府の官吏をこれ以上侮辱させてはなりません。ベルモント嬢は罪を逃れるため私の名を出したのでしょう」
「ええ。これだけではあなたを犯罪者にはできません」
セレフィーナは同意した。
ユリウスは勝ちを確信したのか、張りつめていた肩から力を抜いた。
「ですから先ほどから時間を稼いでおりました」
大広間の扉が開いた。
濃い灰色の制服を着た六人の男女が入ってくる。先頭の女性は王国調査局の紋章を示し、招待客へ道を空けるよう告げた。
ユリウスの顔から表情が消えた。
「王太子府財務官ユリウス・カルマン子爵。横領及び公文書偽造の疑いにより、執務室と保管庫を捜索しました」
「令状もなく王太子府へ入ったのですか」
「緊急の証拠保全について王太子殿下の許可を得ています」
調査官の視線がアレクシスへ向く。
アレクシスは驚いてレオンを見た。
「私は許可など出していない」
「殿下は先ほど、証拠を捨てられてからでは遅いとおっしゃいました」
レオンが懐から一枚の書面を出した。
「セレフィーナの部屋を捜索するため、学院長へ出した許可書です。『毒殺未遂に関係する全ての場所について、衛兵隊及び王国調査局による緊急の証拠保全を認める』とある。対象を彼女の部屋だけには限っていません」
アレクシスは書面を奪うように受け取った。自分の署名がある以上、無効とは言えない。
「お前に調査局へ連絡させたのか」
「はい。杯を調べるよう頼んだ際に、王太子府の帳簿とカルマン子爵の執務室を確保するよう伝えました」
セレフィーナの答えを聞き、ユリウスがレオンをにらんだ。
「広間から出ていないはずだ」
「私は衛兵へ伝言を頼んだだけです。王太子府の出張所は学院の西棟にあり、祝賀会の費用を処理するため帳簿の一部も運び込まれている。確認には十分な時間でした」
レオンは淡々と答えた。
調査官が革張りの帳簿を二冊掲げた。表紙の色も大きさも同じだが、片方は背の内側に切れ目があり、薄い紙の束が隠されていた。
「表の帳簿ではガルド商会へ支払ったことになっている費用が、裏の記録では別口座へ移されています。口座の管理人はカルマン子爵の元使用人です」
別の調査官が封筒を示す。
「執務机からベルモント男爵の借用書も見つかりました。債権者はガルド商会ですが、買い戻しに使われた金は先ほどの口座から出ています。ネルディスを扱う薬品商への支払い記録もありました」
「帳簿を作り上げた者がいる」
ユリウスの声はまだ崩れていなかった。
「私を陥れるため執務室へ置いたのでしょう」
「机の隠し棚からは、セレフィーナ様の署名を練習した紙と王太子府の透かしが入った便せんも発見しています。部屋の鍵は捜索開始まで子爵が所持していました。詳しい主張は調査局で聞きます」
二人の調査官がユリウスの左右へ立った。
彼は初めて広間を見回した。助けを求められる者を探したのかもしれない。だが一時間前にセレフィーナへ向けられていた疑いは、全て彼の上へ移っていた。
「殿下。私は長年お仕えしました」
「だからこそ聞きたい」
アレクシスの顔から血の気が引いている。
「私の名を使い、人を罪人に仕立てようとしたのか」
ユリウスは何も答えなかった。
調査官に腕を取られ、扉へ向かう。セレフィーナの横を通り過ぎる直前、彼は足を止めた。
「あなたさえ帳簿へ興味を持たなければ、誰も傷付かなかった」
「違います。あなたが横領をしなければ、誰も傷付きませんでした」
ユリウスは顔を背け、そのまま連行された。
扉が閉じても招待客は動かなかった。楽団員も楽器を持ったまま、再開の合図を待つことすら忘れている。
セレフィーナは懐中時計を持つアレクシスへ尋ねた。
「一時間には間に合いましたか」
「まだ七分残っている」
「ではわたくしを逮捕なさいますか」
アレクシスは手の中の時計を閉じた。
「しない」
彼は招待客の前で姿勢を正した。
「セレフィーナ。私は君を信じなかった。誤った証拠に従い、弁明も十分に聞かず罪人として扱った。謝罪する」
「当然でしょう」
「何が当然なのだ」
「証拠だけを見れば、わたくしを疑うこと自体は当然だったと申し上げました」
アレクシスは目を見開いた。
「では私を許すと?」
「いいえ」
セレフィーナは盆の上に残された偽の手紙を見た。
「殿下はリリアナ様を信じたかった。わたくしを冷酷な女だと思っていた。その考えに合う証拠だけを集め、反する点を調べなかった。疑ったことを責めるつもりはありません。調べる前に裁いたことを責めております」
「そのとおりだ。私は公平なつもりで、自分に都合のよい答えを選んでいた」
彼は言い訳をしなかった。自分が利用された事実を認めることは、王太子にとって容易ではないはずだった。
「婚約破棄の宣言は撤回する。改めて君との関係を築かせてほしい」
「お断りいたします」
返事が早すぎたのか、アレクシスは言葉を失った。
「一度、公衆の面前で破棄なさいました」
「しかしあれは誤解に基づくものだ」
「理由が誤りでも宣言はなさいました。そしてわたくしも同意いたします」
「七年の婚約を今ここで終わらせるのか」
「七年あっても信頼関係を築けなかったから終わらせるのです。事件がなければ、わたくしたちは互いに不満を抱えたまま結婚していたでしょう。殿下は感情を語らないわたくしを嫌い、わたくしは事実より印象を優先する殿下を尊敬できない。王国のためにも良い結婚にはなりません」
言葉は鋭かったが、アレクシスは目をそらさなかった。
「分かった。婚約破棄については、私の責任として王家とアルノール侯爵家へ説明する」
「お願いいたします」
セレフィーナは一礼した。
長椅子ではリリアナが衛兵から事情を聞かれていた。毒殺未遂を装い、無実の人間へ罪を着せようとした事実は消えない。それでも家族の借金を使って脅された事情は、処分を決める際に考慮されるだろう。
「ベルモント男爵も共犯として捕らえるべきだ」
招待客の中から声が上がった。
「娘の教育が悪かった。爵位も領地も取り上げればよい」
「お待ちください」
セレフィーナが止めると、声を上げた男は不満そうに口を閉じた。
「ベルモント男爵が計画を知っていたという情報はありません。借金を負ったことと娘の犯罪へ加わったことは別です。罪を犯していない人間まで処罰するのでしたら、先ほどの殿下と同じです」
アレクシスは苦い顔をしたものの反論しなかった。
リリアナが衛兵に支えられて立ち上がった。顔色はまだ悪いが、自分の足で歩ける程度には回復している。
彼女が処分を受けるのは後日となった。学院の卒業資格は取り消され、王都からの退去を命じられた。父親の借金は横領事件に利用された財産として一度凍結され、正式な手続きで整理されることになる。
王太子との関係も、その夜で終わった。
ユリウスの執務室と王都の屋敷からは、さらに三冊の裏帳簿が見つかった。ガルド商会の主や王太子府の文官など複数の協力者が捕らえられ、横領額は当初の予想を大きく超えた。
ユリウスは爵位と財産を失い、文書偽造と恐喝と毒物事件への関与を含めて長期の投獄を言い渡された。
事件から一か月後、セレフィーナのもとへ王国調査局から一通の手紙が届いた。
調査官として働かないか。
女性貴族の採用例はほとんどなく、アルノール侯爵家はそろって反対した。父は王太子妃でなくとも別の有力貴族と結婚できると言い、母は事件現場を歩き回る仕事など令嬢のすることではないと訴えた。
セレフィーナは三日かけて家族の主張を聞いた。四日目に採用承諾書へ署名した。
「王太子妃より面白そうですので」
それが最後の説明だった。
さらに数か月後、王国調査局の一室でセレフィーナは盗難事件の報告書を読んでいた。
新人へ与えられた机は狭く、古い事件記録が左右に積まれている。華美な装飾のない黒い上着は調査局の制服で、腰まであった髪は仕事の邪魔にならないよう背中の半ばで切った。
扉が開き、資料の束を抱えたレオンが入ってくる。見習いではなく正式な衛兵となった彼は、セレフィーナの机へ遠慮なく書類を置いた。
「また事件だ」
「殺人?」
「盗難。宝石商の倉庫から首飾りが三本消えた」
「つまらないですわね」
「事件を選ぶ新人がいるか。それと調査局では、その話し方を直すつもりはないのか」
「ありません。言葉遣いと捜査能力に関係があるという証拠をお持ちなら拝見します」
「お前が人間の感情を証拠として扱わなすぎる問題は、まだ解決していないぞ」
「その部分はあなたが補えばよいでしょう」
レオンは返事をせず、机に手をついたままセレフィーナを見た。
「そういえば婚約者がいなくなったんだよな」
「それが?」
「いや。確認しただけだ」
「あなた。事件とは関係のない質問が増えましたね」
レオンが黙った。
セレフィーナは彼の顔を見上げた。広間で追及を受けたユリウスより分かりやすい。何を言おうとしているか見当は付いたが、証言としては不足している。
「出発します。現場を見ずに推理はできません」
資料を抱えて先に歩き出す。扉を通る前に足を止め、振り返らずに続けた。
「事件が終わったら続きを聞きます」
後ろでレオンが大きくため息をついた。
セレフィーナは次の事件の資料を開きながら廊下を進む。王太子妃になるはずだった悪役令嬢の人生は、以前よりずっと忙しくなりそうだった。




