フィルター越しの私
可愛い姿になったら、スマホのカメラボタンをポチッ!
春にもなったし、可愛い桜色のピンクのタンブラーにしようかな。
ノートにはピンクのペンで大きくハートを描いた。
私の周りには可愛いもので溢れている。
沢山のコスメに、お皿に盛られた果物。タンブラーの中には苺ソーダが入っている。
一口飲んだらスマホを手に取る。
カメラを回して準備は万端。
ノートのハートマークからスタート。
ラブリー系女子のルーティン紹介。
テーブルには麦パンにアボカドやポーチドエッグを乗せたサンドイッチやサラダ。
お気に入りのキャンドルを少しフレームインさせるのがポイント。
朝ご飯が済んだらスキンケア。
使っている化粧水やパックも見せて頬を指でツンッとするシーンをアップにする。
デスクワークをする前にパソコンを立ち上げた部分のみカメラに映した後は、休憩シーン。
新作スイーツとラテを映して彼氏と片手でピースサイン。
みんなも真似してみてね♪のテキストを入れたら、動画は終了する。
アップしてしばらく経つと、コメントがポコポコと現れる。
「QOL爆上がりすぎ!」
「可愛すぎて尊敬しかない!」
思わず口角が上がる。
私の「可愛い」を褒めてくれる人がいる。
スマホを見ている間にも、そういったコメントは増えていく。
私は上機嫌でスマホを置いた。
学生時代のことを思い出す。
いじめられていて、「可愛い」なんて言ってくれる人は誰もいなかった。
ロッカーの中身がビシャビシャに濡れているのも、ほぼ毎日だった。
でも、今は違う。
「可愛い」は私のためにある言葉だ。
もっと、もっと可愛くみんなに喜ばれるようになりたい…
…一息つくと、私はベッドしたからゴミ袋を出した。
大量に隠していたから何個も何個も出てくる。
散らかったゴミをいくつ入れただけで体力がグンッとなくなる。
カメラ外には服が散乱し、割り箸が落ちていた。
夜ご飯はカップラーメン。
朝ご飯は全てネットで頼んだものだ。
ぬるい麺をズルズルとすすりながらスマホを見る。
上げた動画は何万ものグッドマークがついていた。
画面を切り替えてレンタル彼氏の顔を見つめる。
振り込み額の桁が目に入りそうになり、目をそらす。
はぁっと苦いため息が漏れた。
カメラに映る部分のみは、こんなにもキラキラ輝いているのに。
ふと、インカメにして自分の顔を見る。
目の下の黒いクマ。
リップの剥げた乾いた唇。
加工アプリのフィルターはそれらを隠して光に変える。
インカメに写る自分は完全にきらめきを失った灰色の埃のようだ。
スマホに映っても、輝いているところはどこにもない。
可愛いと認められてるために家具や小物を買うのにも、お金は必要。
別れた彼氏はSNSに彼女との充実した写真を投稿していた。
お風呂にはいる気力もないまま、床に寝そべった。
あぁ、ナイトルーティンも撮らなくちゃ。
元カレにも学校の奴らにも負けないように。
もう私のほうが輝いているのを認め、羨ましがるように。
ゴミ袋を、またベッド下に戻す。
汚い部分は映さないで、キラキラと輝かしい部分のみを映す。
もっと認められなくちゃ。
もっと褒められたいから。
もっと私を見て欲しいから。
女の目は、虚ろだがギラギラと濁った光を宿していた。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
可愛いの裏にカワイがあったらこんな感じかなと思いながら作成しましたφ(..)
もし気に入ってくださったら他の作品も読んでくださると嬉しいです!(≧∀≦)




