36.不思議な人
ギャップに萌える私に、優しく笑いかけてくれる綿貫さん。
「僕はあの日レジで、佐藤さんのことおっちょこちょいな女の子だなって思ったんですよ」
「で、ですよねー……」
は、恥ずかしい……でもわかってた答え。それ知ってた。
「でもカフェで話してる時にすごく頭が良い人なんだなって感じて。普段はよく笑う女の子なのに、あんなに真面目に語られたら、やっぱりギャップでちょっとドキッとしちゃいましたよ、へへっ」
「……えっと?」
綿貫さんは何を言っているの?え、誰の話?今のギャップは良い意味?誰が誰にドキッとしたの?ド、ドキッとしたの!?
「佐藤さんって不思議です。きっとご両親も素敵な方なんでしょうね」
「そうですね。産みの親とは縁がなかったんですけど、育ての親の叔父さんが大切に育ててくれました」
「あ、すみません。踏み込みすぎてしまいました」
「全然、親のことは気にしてないんです、あの、ほんとに。自慢の叔父さんなので!」
佑樹さんは他人から見てもかっこいいと思う。事実、既婚者なのに他部署の人にもモテモテだし。
「佐藤さんが佐藤さんなのは、叔父さんのおかげなんですね」
「はい。本も勉強もたくさんさせてもらいました」
「ふふっ、佐藤さんは素敵ですね」
「あの……あんまり私のこと、その、褒めないでください……」
「あ、気分悪くさせちゃいましたか?すみません」
「いえ、あの……仕事以外のことを褒められたことないから……あ、えっと……お金ですか?」
綿貫さんになら全然お金払うよ。嘘でもこんなに褒められたら、嬉しい通り越して恥ずか死にそう。むしろ対価を払わせてください!
「ふふっ、なんでいつもそういうこと言うんですか」
「……へ?」
「佐藤さんは素敵ですよ。そして面白いですね」
綿貫さんの笑顔の破壊力がやばすぎる。そして不思議なのは綿貫さんの方です。なんでこんなに私と話してくれるのですか?
「あ、家、ここです……!あ、ありがとうございました。あの、その、あー……映画楽しみで、えっと」
「僕も映画楽しみにしてます。お昼ご飯はまだリサーチ中なので、また連絡しますね」
「へ?い、いいんですか?あ、私調べます?」
「こういうのは任せてください。僕年上なので」
どうしてこんな私と仲良くしてくれるの?なんか……本当に本物の友達みたいじゃん!
まるで「彼が私の王子様なのでは?」なんて柄でもないことを思っちゃうぐらい、彼の優しさが心に沁みちゃうよ。
今まで恋愛に縁がなかった理由はこれかもしれない。友達がいない理由もこれだったりして。
……なんてちょびっとだけしんみりしたのはお風呂に入るまで。
「えー、やっぱりこれが運命ってやつ?どうしよう、王子様と過ごすために何をしたらいい?準備するものってあるのかな?」
お付き合いするってなると、保護者の承諾が必要だったりする?だとしたら佑樹さんに話さなきゃだよね。
うわー、絶対大輝さん絡んでくるよ。自称兄の意見は無視して大丈夫なのかな?
というかよくよく考えたら、男だらけの職場にいて勘違いされたりしないかな?そうやってすれ違ってきたカップル死ぬほど見たよ、全部漫画とドラマでだけど。
湯船で妄想しすぎてのぼせた私は、アイスを食べながらネットサーフィン。
「綿貫さんが王子様……ぐふふ」
この日の夜、幸せにおぼれながら眠ったが、綿貫さんが夢に出てくることはなかった。いったいいつになったらでてきてくれるのかな。こっちもお金払わなきゃダメ?




