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修理師リエイのほのぼのクラフト生活  作者: 弌黑流人


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repair.8 『蒼銀の極細具』

リエイは、若手冒険者たちから買い取ったミスリルの欠片を作業台に並べた。これほどの純度を持つミスリルは、自分用の道具を新調するには最高の素材だ。


日々の修理で向き合う魔力回路は、年々複雑で微細なものになっている。今の道具では届かない「その先」へ至るため、リエイは三つの新たな相棒を作り出すことに決めた。


まずリエイが着手したのは、極微魔力修復針の鍛造だ。

削り出されたミスリルを、魔力火の熱で限界まで細く引き伸ばしていく。ただ細いだけではない。針の表面には、肉眼では見えないほど微細な溝を刻み、そこへ自身の魔力が滑らかに伝導するように調整を施した。


「……よし。これで、深層の魔道具に見られる毛髪より細い回路にも、直接魔力を流し込める」


完成した針は、光の加減でときおり青く煌めくだけの、ほとんど実体のない光の筋のようだった。


次に用意したのは、魔力糸である。

これはミスリルと魔力伝導性の高い蜘蛛の糸を融合させ、リエイの魔力で紡ぎ出したものだ。視覚ではほぼ捉えられないほど微細でありながら、一度回路に結びつければ、どんなに強力な魔力の奔流にも耐えうる強靭さを持つ。しかし、この糸はあまりに繊細で、わずかな空気の揺れでも複雑に絡まり合ってしまう。


そこで三つ目の制作物、定着式極小糸巻きの出番となる。

リエイは残ったミスリルを使い、親指の爪ほどの大きさしかない複雑な構造体を作り上げた。内部には微弱な斥力を発生させる機構を組み込み、魔力糸が互いに接触して絡まるのを防ぐ。さらに、使用したい分だけを確実に引き出し、一ミリの狂いもなく固定するための極小のストッパーを備え付けた。


「ふう……道具を作るための道具、か。これぞ修理師の醍醐味だな」


完成した三点の道具を並べ、リエイは満足げに目を細めた。

指先で新しい糸巻きを操作し、見えないほどの魔力糸を針に通してみる。驚くほど滑らかに、そして正確に。これまでは数時間かかっていた微細回路のバイパス手術も、これがあれば半分以下の時間で、より完璧にこなせるだろう。


リエイは、新しく加わった「相棒」たちを、特製の小さな革ケースに収めた。

外はすっかり夜が更け、迷宮都市の喧騒も遠ざかっている。


「これでまた、直せないものはなくなったな」


リエイは独り言をこぼし、ランプの火を落とした。

新調した道具たちが放つ微かな蒼い光が、明日の新しい出会いと、まだ見ぬ故障品たちを待ち侘びているようだった。


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