repair.44 『ギルドの雷と友への祝福』
一夜明け、リエイたちが通されたギルドのカウンターの奥、他の冒険者の目に見えないように充てがわれた個室にて、持ち込んだ戦利品はまさに山積みという言葉がふさわしい量だった。
「これ……全部、今回の探索だけで拾ってきたのか?」
リエイの担当者であるマイルズが、カウンターの上に溢れかえる魔鉱石やレアアイテムを見て、引きつった笑みを浮かべる。さらに驚いたことに、その中にはギルドが長年懸賞金をかけていたクエスト品まで混ざっていた。換金額を計算したマイルズの指先は、震えていた。
その時、背後の扉を蹴破るような勢いで、一人の女性が歩み寄ってきた。ドワーフの若きリーダーであり、鍛冶師の栄誉である『マイスター』の称号を持つギルド長、ブラルグである。
「ダンジョンに詳しい元門番様と、現在岩山ダンジョンの門番様二人が共謀して何をやってるんだ!」
彼女の怒号が遮音の結界が張られた室内に響き渡る。ブラルグはマイスターとしての威圧感を放ちながら、リエイとニーリルを交互に睨みつけた。
「他の冒険者への示しがつかん! 向こう三ヶ月、二人はダンジョンへの出入り禁止だよ、いいね! ったく、修羅の罠荒らしパーティだなんて不名誉な呼び名で恐れられてどうするんだい!」
リエイとニーリルは頭を抱えて平謝りするしかなかった。ブラルグが去った後も、マイルズによる説教は続いた。だが、リエイはふとマイルズの様子がおかしいことに気づいた。いつもの彼なら、もっと厳しく言い捨てるはずなのに、どこか浮ついている。
リエイはふと、小声で問いかけた。
「なぁ、マイルズ……ミュラとはうまくいったのか……?」
その瞬間、マイルズの顔が熟したトマトのように真っ赤に染まった。彼は言葉を失い、慌てて視線を逸らす。リエイはニヤリと笑った。
「そうか! おめでとう!」
「えっ、何何? 誰の話?」
状況の読めないニーリルに対し、「あとで説明するから」とリエイは笑いながら、マイルズの真っ赤な顔を残してギルドを後にした。
その後、リエイは今回の罠荒らしで得た特殊素材を工房へ持ち帰った。これまでは依頼品ばかりを作ってきたが、いよいよ修理屋としての「店」らしい動きを始めることにしたのだ。
店頭に並べられたのは、赤い氷海石を加工した『耐寒・保温マント』、魔力を循環させて極寒でも快適な『高機能保温テント』、そして短時間の拠点防衛に最適な『携帯結界発生器』。これらはどれも、極寒層という過酷かつ特別な環境を知るリエイだからこそ作れた逸品だ。
工房では、持ち帰った伝説級の魔道具を分解し、さらなる装備強化のための魔術回路を刻み込む作業が深夜まで続いた。リエイの指先が魔力油と氷海石の粉末を精密に調合していく。
(この素材があれば、装備の強度はさらに一段階引き上げられる……)
修理屋の看板を掲げた店内に、新たな道具たちが並ぶ。リエイは完成した防具を手に取り、次なる工房作業へと没頭していった。




