repair.43 『修羅の罠荒らし』
十八階層から上へと向かう道すがら、それはまさに蹂躙であった。
ノエルの精密な魔法解析と、メディスフィーナの結界干渉。二人が罠の機序を解き明かすたび、背後でニーリルが「次はこれね!」と容赦なく扉を吹き飛ばし、リエイが「加護」で溢れ出す魔物を完封する。
四人の背中に背負ったマジックパックは、瞬く間に多種多様なお宝で膨れ上がっていった。
「見て、これ! 十七階層の罠部屋から出た『氷華の魔鏡』よ。覗いた者の魔力適性を可視化する鏡らしいわ」
メディスフィーナが取り出したのは、淡い光を放つ円形の鏡。他にも、リエイが引き当てたのは、階層間の境界を無視して転移陣へ戻る際に役立つ、伝説級の魔道具『回廊の羅針盤』だった。
「これは……ギルドの重要指定品に該当するレベルじゃないか?」
リエイが苦笑交じりに呟く。分配は極めて公平かつ合理的だった。性能を最大限に引き出せる者が優先的に保持し、余った素材は高値で売却して山分けとする。ただ、あまりの収穫の多さに、ノエルさえも「これ、本当に持って帰っていいのでしょうか」と少し引き気味だ。
「あら、ダンジョンにあるものを拾うのが冒険者の仕事でしょ? 放置して腐らせるより、私たちが有効活用してあげるのよ」
ニーリルが事もなげに言うが、その手には明らかに呪詛を帯びた『深淵の魔石』が握られている。これにはさすがのリエイも「それはギルドに届けないとマズい」と説得する羽目になった。
結局、宝の山を抱え込み、あまりの荒稼ぎにダンジョンそのものがざわめき出した気配を感じ取り、四人は十六階層と十五階層を繋ぐ階段中腹の転移陣へ逃げ込むようにして帰路へと就いた。
彼らが去った後の階層は、もはや罠部屋としての機能を失い、空っぽの宝箱が寂しげに転がる無惨な光景となっていた。
後日。
あの階層で彼らの姿を見かけた他の冒険者たちは、震え上がっていた。
整然と解除された罠、徹底的に剥ぎ取られた素材、そして嵐のように去っていった四人組。その光景は、もはや冒険者というより「修羅の如き罠荒らし」そのものだった。
「見たか? あの四人組……罠部屋を暴食の化身みたいに空にしていくぞ」
「あれには絶対に関わっちゃいけない。……災害だ」
街の酒場では、彼らを恐れる噂が瞬く間に広まっていた。そんなこととは露知らず、リエイたちは持ち帰った伝説級のアイテムを眺め、次回の罠荒らしの効率化について熱く議論を交わしていた。




