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修理師リエイのほのぼのクラフト生活  作者: 弌黑流人


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repair.42 『ひとときの美食と感化された欲望』

小川のほとりでは、摘みたての星滴麦を贅沢に使った料理が仕上がっていた。

ノエルは持ち込んだ調理器具を鮮やかに操り、星滴麦を丁寧に炒めて香ばしさを引き出す。その横で、メディスフィーナがどこからともなく取り出した特性ハーブをすり潰し、料理の風味に深みを与えていた。


「ノエル、ここの火加減、もう少し強くして。星滴麦の芯まで熱を通すと、よりプチプチした食感が際立つの」

「分かりました、メディスさん! ……ふふ、なんだか本当に家で料理をしているみたいですね」


ノエルが火加減を調整し、丁寧にソースを混ぜる姿は、冒険者というより腕の良い料理人のようだった。仕上げに小川で見つけた沢蟹を加え、濃厚なグラタンとリゾットが完成する。


ニーリルは満足げに腰のポーチから小袋を取り出した。

「料理の仕上げはこれよ」


中から現れたのは、彼女が自ら狩った魔獣の肉を、長期間かけて香草で燻製した特製品だ。


「これはね、ただ燻しただけじゃないの。深層の乾燥した空気と、特定の魔樹のチップを交互に使うことで、肉の脂の旨味を極限まで濃縮させているのよ。これを入れるだけで、どんなスープも劇的に化けるわ」


ニーリルは慣れた手つきで燻製肉を細かく刻み、リゾットの仕上げに散らした。同時に、メディスフィーナが「食後はこれに限るわね」と、自身の専門である特性ハーブティーを淹れ始める。


「これは『月夜草』の葉と、少しの魔力水を混ぜたものよ。胃の負担を抑えて魔力の巡りを良くするから、食べ過ぎても大丈夫。ま、あんたたちなら平気でしょうけど」


四人は完成した料理を囲み、星滴麦のプチプチとした食感と、沢蟹の旨味、そしてニーリル自慢の燻製肉の香りが溶け合った至高の味を口に運んだ。

その瞬間、全員が同時に目を見開く。


「なにこれ……最高に美味しい!」


ノエルが頬を抑えて感嘆の声を漏らす。リエイもまた、グラタンの熱々のソースを口にして、あまりの美味に言葉を失った。極限の環境下で、最高級の素材を味わう――これこそが冒険者にとっての真の至福だろう。食後の特製ハーブティーで喉を潤しつつ、談笑は弾んだ。


談笑の最中、ニーリルが空になった皿を置き、どこか悪戯っぽい笑みを浮かべて切り出した。


「ねえ、お腹も膨れたことだし、これからの予定を決めない? 帰りは十五階層前の転移陣から戻るとして……せっかくだし、帰路でモンスターを狩りつつトレジャーハントでもどう?」


その提案に、リエイは即座に同意した。ニーリルの狙いは明白だった。このパーティには、ノエルとメディスフィーナという、罠解除において迷宮都市でも指折りの専門家が揃っている。


「いいな。上の階層にある厄介な『罠部屋』を片っ端から荒らしていこう。あそこにある宝箱や魔鉱石を放置するのは、あまりにも勿体ない」


リエイの言葉に、ノエルが柔らかく、しかし期待に満ちた笑みを浮かべる。


「ふふ、お任せください。どんなに複雑な罠も、私の魔法解析からは逃げられませんよ」

「ええ、私の結界干渉とノエルの解除術があれば、罠部屋はただの宝物庫ね」


メディスフィーナも扇子を揺らし、自信満々に頷いた。

かつては慎重を期すべき危険な場所だった罠部屋も、今のこの四人にとってはただの収穫場所だ。リエイの加護による安全確保、ニーリルの圧倒的火力、そして二人のスペシャリストによる解錠術。


三人の瞳には、ニーリルの影響を色濃く受けた、欲に目のくらんだ妖しい光が宿っていた。


「決まりね。それじゃあ、神樹の守護するこの聖域を出て、まずは十八階層の罠部屋から掃除していきましょうか!」


食事を終え、含み笑いを浮かべるニーリル。神樹の結界が背後で静かに閉じ、一行は荒稼ぎのための「罠荒らし」という名の狂乱へ歩み出すのだった。


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