6-9 ザマぁ!
二人の女性の前で、一人の男が伸びていた。
「それでヘレン。このカスエルフは何処で見つけたのかしら」
「カスはないだろう、鰓子。これでも勇者付きの魔法使いだったのだ。意見を違え物別れ、ごく短い期間でしかなかったが相応に敬意は表したい」
「じゃあ絞り滓エルフ」
「同じだ、それは。見つけたのはわたしが倒れて居た場所と同じ、コンビニの駐車場だった。既に青息吐息で意識も無かった」
「千客万来、異界のコンビニにようこそといった感じかしら。なけなしの備蓄も根こそぎ転移陣に吸い上げられたのね。ほほほほ、ザマぁ!」
「下品だろう」
「下品な相手には相応だわ。マンホールの蓋は閉めてくれたのよね」
「勿論だ。だが妙なのは閉めた筈の蓋がまた開いていたのだ。早番との交代間際に駐車場の掃除をしているとき気付いたのだが」
「おや。するとやって来たのはこのカスだけじゃないと言うコトなのかしら」
「かも知れない。だが鰓子、頼むからユテマルスをその呼び名で呼ぶのは勘弁してやってくれないか。プライドの高い男なのだ」
「エルフなんて総じて鼻持ちならないからキライよ」
「魔族もエルフからそう囁かれているのは知っているだろう。互いに互いを貶めるのは感心しない」
「あなたは真面目よね。まぁ他者に敬意を払い、公平足ろうとするその姿勢は立派だと思うわ。でも人には長年蓄積されて、醸造された感情というものも在るのよ」
「鰓子、まさかとは思うが・・・・」
「心配しなくても物騒なことはしないわよ。でも彩花ちゃんと公介くんの足跡がいきなり消え失せたのは恐らくコイツが元凶よね。地下のコンデンサーが空っぽになっていたし、管理ログにも転移記録が残って居たし。コチラ側と向こう側、双方の魔法陣が連動したのは間違いない。或いはもう一人のヤツが主犯なのかも知れないけれど、締め上げれば分る事だわ」
「気持ちは判るが穏便に願いたい。出来ればわたしに任せてもらえると有り難いのだが」
「コイツはエルフよ。トールマンであるあなたの意見を素直に聞くかしら」
「元とはいえ勇者であった者を無下にするほど大人げないとは思えない。それに鰓子が魔族であったと知れれば、態度が更に硬化するのではないか」
「いっそのこと魔女だって教えてあげようかしら」
「意固地になる可能性の方が高いと思う」
「まぁいいわ。此処はあなたの顔を立てましょう。ヘレンが駄目なら次はあたしという事でよろしい?」
「かたじけない」
勇者と呼ばれていた女性は軽く頭を垂れると、スポーツドリンクを片手に持ち、伸びている男の頬を軽く叩いた。




