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【1万1千PV感謝】下町侵略日記  作者: 九木十郎
第六話 千客万来です魔王さま
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6-7 メリット盛りだくさんだ

 ハルクックが何処どこか貧相に見える十騎長に案内されて引き合わされたのは、おりの中に囚われた男女であった。


 年齢は少し見当が付かなかった。少年の方は兎も角、女の方は年を経た様にも見えたし自分と同じ年齢にも見えた。

 そもそも魔族はトールマンとは別の意味で年齢不詳である。


 それにこんな濃い髪色に濃い肌の色の魔族など初めてだった。

 彼らの場合、黒髪の時には真っ白な肌と相場は決まっていたからだ。


「東方エルフ、メーサの国、国選魔法使いのハルクックと申します。色々と訊ねたい事があって参りました。先ずは、お二方のお名前をお聞きしたい」


 自分達にとって年齢の序列はあまり大きな意味を持たないが、トールマンはそうでも無いらしい。

 だが魔族はどうなのだろう。


 よく分らないので上位者に対する礼を取ったが、二人は奇妙な表情で顔を見合わせた後にそれぞれに名乗り、そして「何を訊きたいのでしょう」と返事をした。


 アヤカと名乗った女性は聞いた事もない言葉で喋り、コウスケと言う名の少年がそれを通訳する。


 二人の身の上もさることながら、肝心の魔導具の内容も埒外らちがいの物言いや前提条件が多過ぎて、はっきり言って途方に暮れた。


 専門用語というのは分る。


 だが「キカネンリョウのネンショウ」だの「往復運動を回転に」だの「回転する物体の安定」などと畳み掛けられても理解が追い付かない。


 そして話を進めるにつれて幾度いくども小首をかしげる羽目になった。


 一言でえば異質。


 言葉は確かに通じる。

 だが、ただ通じるだけだ。

 魔族の国の事情や慣習をまるで知らないし、かといってトールマン族の事情に通じている訳でもない。


 最初は話をはぐらかしてとぼけているダケかとも思ったが、カマかけにも反応せず理解出来ている様子もなかった。


 そして幾度いくどか言を重ねた挙げ句、本当に知らないのだと確信するにいたった。


 そもそも魔道具とは何かなどと、魔族の者が斯様かような質問をするだろうか。

 からかわれて小莫迦こばかにされているのかと思った程だ。


 事前に聞かされてはいたが成る程、これは二人を魔族と言い切るには違和感がある。


 確かに「小利口な理屈をこねる魔族」と決めつけて首をねるのは簡単だ。

 だが理解出来ないモノを「分らない」という理由ダケで闇に葬るのは乱暴に過ぎる。


 だがコレはどう判断すれば良い?捨てるには惜しいという理由で確保しても良いのか。


 いや、決定するのはわたしではないが。


 そして小さくない溜息が洩れた。


 この二人、まるで初めてこの地を訪れた異邦人のようだ。


 それも我らの与り知らぬ別天地から・・・・


「あ」


 脳裏にひらいた自分の思惑に固まっていると、「迷うでしょう」と立ち会いの十騎長が声を掛けてきて我に返った。


「トールマンの方々はどうお考えなのです」


「面倒なので処刑してしまえ、というのが圧倒的ですね。まぁ確かに後腐れは無いでしょう」


「魔道具の動く様は目の当たりにしているのでしょう?」


「アレはただあの中に蓄えていた魔力を発揮しているだけ。直に役に立たなく為るだろう、そうなればもう意味は無いと思ってます。なので欲しいのならくれてやる。だが代金は高いぞ、といった所です」


「それはあなたの意見ではありませんね」


「わたしの意見を聞いてどうします」


「あなたがこの二人と最初に出会った人だと聞いているからです。そして第一印象は大事だとも思って居ます」


「わたしはもう人死には見たく無いだけです。そして厄介ごとももう結構だと思って居るだけです」


「あの男の子の額に聖痕せいこんりましたが、気付いていらっしゃいましたか」


「ほう、それは見落としていました」


「・・・・気付いていたからこそ、穏便にと考えていらっしゃるのでは?自分の専属従者に聖痕を授けるのは魔族でも高位の者だけ。しかもあれはツノによる聖痕です。魔族でもツノが在るのは王族のみ。それも御存知だったのではありませんか」


「しかしそれで何か問題が?魔王はもう居ないでしょう」


「人は誰しもはけ口を求めています。辛いことがあった後なら尚更なおさらです。でも理性的かつ冷静な者ならば、寝覚めの悪いことはしたくありませんよね」


おどし文句の様にも聞こえます」


「わたしも人死にや厄介ごとはもう御免なんです。あなたの意見を聞いて下さるような上位の方はいらっしゃいませんか。いらっしゃるのなら、是非ぜひ紹介して頂きたいのです」


 小柄なエルフに詰め寄られ、しょぼくれた風体の十騎長は「むう」と小さく唸った。




「あんなノラクラした説明で良かったんですか」


「嘘は言っていない。だが初めて聞く者にはちんぷんかんぷんだろうな」


「不親切ですよ。目を白黒させていたじゃありませんか。あんな小さな子にこくなことしますね」


「そうは言うが国選魔法使いと言っていたじゃないか。きっとああ見えても大人だろうよ。エルフとかいう種族は押し並べて小柄らしい。まぁ、あの女性は極めつけに小さいようだが」


「女の子だったんですか?」


何処どこを見ているのカネ、きみは。物言いや物腰で気付かなかったのか?」


「え、いや、ローブ羽織ってましたし。髪だって彩花さんより短かったし」


「髪や凹凸だけが女性の全てじゃないぞ。それはそうと怪しい風向きだな。あのエントツとかいう隊長さんもしきりに『大人しく』と繰り返していた。バイクに興味津々な連中とそうじゃない連中の温度差が結構大きいような気がする」


「エントツじゃないでしょ。それにエルフとかいう人達は俺たちの事を随分気にしているみたいじゃないですか。バイクのことダケって事はないでしょう。俺らの事も別枠で考えてくれてますよ、きっと」


「わたしの愛車が気になって仕方が無い連中は、わたしらの事もワンセットなんだよ。そして興味が無い連中は全部まとめて廃却処分したくて仕方が無い。そんな感じだな」


 そこで彩花は疲れたような吐息をついた。


「見張りの連中の事あるごとの舌打ちや、汚物でも見るかのような視線は気付いているだろ?きっとアレがより大勢の『当たり前』なんだよ」


「廃却処分ってどういう事です」


「処刑だよ。死体にして捨てちゃえば餌も要らない、荷馬車も荷が減って軽くなる、見張りも要らない。メリット盛りだくさんだ」

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