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【1万1千PV感謝】下町侵略日記  作者: 九木十郎
幕間 日記その三
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毒され始めているのかも

 我が家に勇者がやって来た。


 いったい何を書いているんだと自問したいが、本当なのだから仕方がない。


 深夜のコンビニにまたしても公介くんが「異世界の住人」を連れ込んできて、目覚めた彼女が店内をしっちゃかめっちゃかにした。


 というか、伯母さんが無駄にあおったせいのような気がする。

 落ち着かせて説得すれば、平穏無事に納められたのではなかろうか。

 まぁ、事が済んだからこそ言える後知恵なのかも知れないが。


 勇者は女性で名前はヘレンギース。

 呼称でヘレン。

 上背があり、公介くんより高くわたしよりは目線ひとつ分低い。


 ちょっとした身のこなしだけでも身体が鍛えられているのが分った。

 一挙一動いっきょいちどうに無駄がないしキビキビとしていた。

 彼女と一緒に散歩しても身体の芯がブレないというか、プロのアスリートと普通の人が並んで歩くのに似ていると思った。


 そして随分と大人しくて疲れている感じだ。

 ファンタジーアニメでのやたら暑苦しかったり勇ましかったりする勇者とは真反対だ。

 アメリカの映画などで出てくる戦場から戻って来たばかりの帰還兵、厭世えんせい的な老兵といった雰囲気があった。


 いや、彼女の告白を聞くに至り、まさにその通りなのかも知れない。


 行き場が無いのであのお子様同様、我が家で引き取ることになった。

 わたしは全然構わないのだが、やはり自称魔王さまが日々ご機嫌斜めだ。


 確かに自分の大事な知人を害したとあれば、心穏やかではないだろう。


 気持ちは判る、と言うのは傲慢ごうまんだろうか。

 きっと本人にしか判らないだろうな。

 おもんぱかってやることは出来るが、軽々しく口にはしない方が良さそうだ。


 ちなみに伯母さんに二つ名があって、魔女エラなどと自称していたのは驚いた。

 ヘレンさんの様子だと割と名が知れているようだ。

 少し前のわたしなら何処の中二病だ、いい年こいた大人がいつまで戯れているんじゃない、などと思ったに違いない。


 むしろ三千本桜鰓子(えらこ)の方が偽名だと知って、そちらの方が余程にショックだ。

 わたしにとって伯母は「鰓子おばさん」でしかなくて、「異世界の高名な魔女、エラ」などでは無いからだ。


 確かに伯母さん自身が自分でそうだと言ってのけたけれど、他者がその頭イタイ名前をさも当たり前に口にするのとでは訳が違う。

 一般性を会得していたというその事実が衝撃的だった。


 だって伯母の自称だけなら「ああまた妙ちきりんな事を言い出した」で納得出来るからだ。


 であるならば、わたしの母、三千本桜君枝もまた二つ名なのだろうか?


 わたしの知らない本名があるのだろうか。

 父もそのことを知っていたのか。

 たとえそうだとしても「ふーん」程度に軽く流していたのかも知れない。

 実にり得そうだ。

 今度伯母さんにキチンと聞いてみないといけない。


 そしてやっぱり、母も魔女だったりするのだろうか。


 頭の痛い話はまだ続く。今日は色々てんこ盛りだ。


 この町の地下に魔法をかけて、異世界の住人を大量に移住させるのだという。

 数にして一〇数万人。

 不法密入国どころの話じゃない。

 侵略レベルの難民移住だ。

 実行されたら間違い無く政治家先生たちが大騒ぎすること請け合い。

 日本中で議論紛糾(ふんきゅう)、国会が、いや国民全員がゼッタイお祭り騒ぎになる。


 世界にもその事態は知れ渡るだろうし、収束するのが何時になるのか見当もつかない。


 どーするつもりなのだ?


 まぁ、ホントに実行出来ればの話なのだけれども。


 わたしは絶対不可能だと踏んでいる。

 だってどう考えたって出来っこない。

 全然科学的じゃないし「ナーンセンス」と大声で叫んでやりたかった。


 でも何故かわたし以外の三人はマジも大マジ、本気で出来ると信じて議論していた。

 ヘレンさんも最初は驚いていたが、話が進むにつれて「成る程」などと言って納得していた。


 どういうコトだ? わたし以外の人間は頭のネジが緩んでいるのか。

 人として大事なものを何処どこかに置き忘れているのではないか。

 おかしさ満点もいいところだろう。


 それともわたしがオカシイのか。


 そもそも魔法とは何なのだ。


 どういった種類の力なのだ?


 こんな疑問を持つこと自体、わたしも毒され始めているのかも知れないが。

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