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【1万1千PV感謝】下町侵略日記  作者: 九木十郎
幕間 日記その一
12/204

開始ページ

××××年××月××日


 此の日をもって本記録の開始日とし初日と呼称することする。


 記録開始の理由は特にない。

 えて言うのなら予感と表現するのが一番近そうだ。

 今までの日常とは随分と毛色の変わった出来事が始まりそうな、実によろしくない気配がするからだ。


 なるべく客観的かつ正確を期して記録するつもりだが、いくばくかの主観や感情が入り込むのは致し方がないと考える。

 観測者という者が存在する以上、完全無欠な客観性など存在しないからだ。


 故に本記録はただの備忘録、あるいは日記と捉えてもらって間違いはなかろう。


 本日、伯母である三千本桜鰓子(えらこ)の経営するコンビニエンスストアに闖入者があった。

 同僚である間柄公介

(一六歳公立鈴木高校の一年生。父母妹の四人家族。現在実家にて一人暮らし。家族は父親の仕事の関係で欧州にて生活。二年後に帰国予定)

 が、出勤途上で怪しげな外国籍と思しき幼女を保護してきたからだ。


 拐かしなどではない。

 断じてだ。

 彼は真っ当至極、清廉せいれんな男子高校生である。

 念の為補記。


 年の頃は一二から一三歳くらいだろうか。

 最初は言葉も分らなかったし暴れ回るので、大人しくさせるのに苦労した。

 その際に間柄公介くんが少女の狼藉ろうぜきにより負傷。

 より厳重かつ慎重な保護を行なった。

 とんでもないガキである。


 明け方に店主である伯母が来店。

 何だかよく分らないうちに、件のガキを伯母の家で預ることになった。

 伯母はどうやらガキと顔見知りらしい。

 「魔王」などと呼称していた。

 しかも驚くことにガキは大人に変身してみせた。

 トリックの類いだろうと今も思っているが、何故か伯母は当たり前のように納得している。


 しかも少女は伯母を「魔女」などと呼んでいた。

 伯母もそう自称していた。

 二人はいったいどういう知り合いなのだ。


 伯母からはひとしきり説明を受けたがどうにもこうにも胡散うさん臭い。

 魔法だの異世界だの昨今流行はやりのアニメ展開ではあるまいし。

 眉唾物の愚にもつかない法螺ほら話にしか聞えない。

 だが取敢とりあえず、話の内容とその子細は録音データと添付資料にて補足とする。


 伯母は色々と世間一般からズレたひとである。

 だが基本良識人だし、わたしがいま此処にこうして真っ当な生活を送れているのも伯母のお陰だ。

 感謝しているし信じられる人物である。


 だが頭から全てを鵜呑みにするというのは少し違う。

 信用と信頼は似て非なる別のものだろう。

 人格は信頼できても言動は時々信用ならない。

 むしろわたしに面倒事を背負わせないように、でまかせを並べ立てて厄介ごとから遠ざけて居るのではないか。

 そう考える方が余程に筋が通る。


 まったもって水くさい伯母だ。


 そしてとっても面倒くさい。

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