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スロウス国に行くとそこはスチームパンクでした

 突然だがこの世界の技術水準は現代の地球と比べて高くない、魔術を取り除けば良くて地球の中世ヨーロッパ程度だっただろう。


 そんな低い技術力を魔術によって大幅に引き上げているのだが、国の中には魔術無しで高い技術力を持った場所があるらしい。


 ・

 ・

 ・

 ギルドあさかわ 酒場 秋


「おい……マスターはいるか」


 気怠そうな声と共に奥の扉から酒場に入って来たのは黒いベストを身に着け、ウェリントンをかけた男だった。


 今日はマスターは書類仕事があると引っ込んでおり、他のギルドメンバーも大体依頼に出て酒場にいるのは俺とアルさんだけだった。


「エジア、君は身なりを整えるという事を覚えた方がいいんじゃないか?髪もぼさぼさじゃないか」


「余計なお世話だ……ん?今日はお前達以外居ないのか……そいつは新人だな」


「あ、どうもガイゼンっす」


「……」


 エジアと呼ばれた男は機械の駆動音を鳴らしながら右腕で眼鏡を直し……


「義手……?」


「……この際誰でも良いか、お前……名前は?」


「いや、さっきガイゼンって……」


「そうか、お前は転生者だな……?俺達転生者は説明を省きやすくて楽だ……報酬は出すから実験台になれ」


「えっ、あの話が見えなぐえっ」


 そう言うやいなやエジアは俺の首根っこを掴み引きずり始める、身体強化を使って抜け出そうとするがビクともしない。


 そうして俺は扉の奥に連れ去られ廊下をしばらく引きずられる事数分、ようやくたどり着いた部屋は蛍光灯が天井を照らし白いタイルが敷き詰められた、一言で言うとSFに出てくる様な研究室だった。


「な、なんだこれ……この球体魔力無しで浮いてるのか?こっちは電動の装置か何かか……」


「よし……ガイゼン、俺はエジアだ。お前は魔術は使えるか?」


「まぁ、魔術師ではあるっすけど」


「俺はこれから学術発表会でスロウスに行かないとならねぇ……そこでお前には俺の助手をやってもらう、返事は五秒待つ……3……」


 義手をこちらに向けてカウントダウンしてきた……しかも義手が光り始めて明らかにヤバイ。


「い、いいですけど一体何の助手をするんすか?」


「盲目的に返事をする奴は嫌いじゃない……細かい事は道中話してやる」


 そう言うとエジアは灰色のコートを羽織り俺についてくるよう促した。


 ・

 ・

 ・

 スロウス国 城下町 研究エリア


 スロウス国、通称『怠惰の国』。だがこの名が付いた理由はただ国民がだらけているわけでは無い。


「すっげぇ……まんまスチームパンクの世界みたいだ」


 俺は街中を歩く度に見える景色に柄にもなく興奮していた。


「ガイゼンは初めてみてぇだな……スロウスは元は魔術が使えない、だけど楽に生きたい奴らが全力で楽をする為に魔力を使わず発展した国だ……お陰で科学者技術者が噂を聞いて集まり最も科学が進んだ国になった―――――まぁ、まだ大抵の転生者達の時代には追い着いてねぇがな……」


「それでも凄いっすよこれ、街中を蒸気列車が走ってるし魔道具をあんまり見かけないし」


「今でこそ魔術を使える国民も増えてきたがそれでも半分近い奴らが魔術を使えねぇ……魔術によって生活水準は高い国はごまんとあるがここは魔術無しならトップクラスだ」


「へぇ……それで学術発表会ってなんすか?」


「スロウスでは突出して研究大好きな変人共が毎年集まって技術の共有をする……俺はそこの代表として毎年顔を出してんだ」


「それで俺が必要な理由は何なんすか?顔を出すだけなら助手なんていらないし」


「今年は色々あって俺も発表する事になってる……本来助手は年中暇なマスターにでも頼もうとしたが今日に限っていないんでな……」


 ギルドに入ってまだ半年も経ってないが、むしろマスターは酒場にいる事は少なかったような……


「着いたぞ……ここだ」


 そこは、決して大きくは無い一軒家だった。


 エジアは躊躇いなく扉を潜り、中に入るとそこは集会場の様だった。


「あ!エジアさんやっと来たんですか!もう皆揃ってますよ!」


「時間通りだ……お前ら、こいつはガイゼン、今回の俺の助手だ」


「ガイゼンです、よろしくっす」


 俺は軽く頭を下げると同時に周りを見た、大体10人……いや、もう少し多いか?種族も服装もバラバラだが皆共通して胸に羊を模したであろうバッジを着けていた。


「じゃああなたがギルドあさかわのマスターさん?思ってたより若いのね!」


「あー、いや。俺はただのギルドメンバーっすよ。マスターは仕事が忙しくて俺が(半強制的に)代理になったっす」


「そうなのかい?なら君はギルドのマスターすら知らない僕達の作品を見る機会を得たって訳だ!さあさあ早速発表会の開始だ!」


 俺は学術発表会のメンバーに捕まり地下に連れていかれた、抵抗する間もなく飛び込んだ場所は広い研究所だった。


 エジアの研究室もかなり広い方であったがここは更に広く様々な道具が置かれ駆動音を鳴らしている。


「どうだい助手君!これは僕の作った作品の『蒸気式ミニ飛行船』だ!理論上は大型化すれば100人は乗れる遊覧船になる筈さ!」


「私の『超ヘアアイロン』なんてどう?これを使えば獣人達の毛繕いも一発よ!!」


 僕の、私の、と一度に色々と見せられ混乱してきた。俺が目を回しているのにエジアが隅で眺めていると突然扉が大きな音を立てて開かれた。


「エジアアアァァ!!!今年こそはお主をぎゃふんと言わせてやるのじゃぁ!!!」


 俺が声のした方を見ると狐の耳を持った子供の獣人が自身の2倍もの背丈はありそうな風呂敷を背負い明らかにエジアに強い視線を向けていた。


「あの子は誰っすか?」


 俺が周りに聞くと皆難しい顔をして説明してくれる。


「彼女はイエリって言って……エジアさんが連れて来た一番新しいメンバーなんだ、情熱は僕達も認めるけど……その……」


「そこ!ワシの悪口を言っておるな!!お主らもワシの傑作を見ればそんな口叩けなく……んん?そいつは誰じゃ?」


「そいつは今日の俺の助手だ」


 エジアがこちらに歩いてくるとますますイエリは憎い目でエジアを睨んでいた。


「お前が勝負したいって言うから連れて来たんだ……それで?今年は何を作ってきた?」


「ふん!ワシの傑作を見て後から泣いて謝っても遅いぞ!―――これがワシの傑作!『ゴーレム』じゃ!!」


 風呂敷を取ると底に現れたのは丸まる様に詰め込まれたロボットだった、目測だが立ち上がれば4,5メートルはあるだろう。


「ほう……大きさで勝負しようとしたか?製造目的は何だ?」


「用途は建設業での労働力じゃ!理論上こいつは1tまでの建材を運搬し鋼くらいなら容易く破壊する!そしてこいつの真価は24時間の連続駆動にオイルスライム10㎏で済むという圧倒的コスパじゃああぁぁ!!!」


 息を切らす程の力説に周りのメンバーも本気で感心していた、俺は科学に詳しくは無いがこれは凄いという事は何となくわかった。


「なぁ、機械なんて全然詳しくないから聞くんだがいいか?」


「なんじゃエジア助手!なんでも聞くが良いのじゃ!」


「これって幾らかかるんだ?建設現場用ってのはわかったけどあんまり高いと誰も使えないだろうし」


 その言葉にイエリは石化したかのように動かなくなってしまった。


「確かに、見た所どう頑張っても安く済ませられないよな……」


「うーん、動力部にも随分と高価な鋼を使ってるわね……それに下手に材質を変えたら自重を支えられないんじゃないかしら……量産化するにしても難しそうね」


「な、なんじゃなんじゃ!!お主ら急に掌を返しおって!!エジア!お主の作品も早く見せるのじゃ!」


「……あぁ、いいだろう」


 耳の先まで真っ赤になったイエリが叫ぶとエジアはコートの内側から筒の様な物を取り出した。


 そしてエジアは地面に設置すると筒の先からアンカーが飛び出し地面に突き刺さった。


「ガイゼン、俺に攻撃系の魔術を放て。中級程度で良い」


「ええ?良いっすけど……『業火球』」


 加減はしたがそれなりの威力を持った魔術は筒の中から飛び出した何かに阻まれ魔術はその効力を失った。


「うわっ!?」


「「おおっ!!」」


「名付けて……そうだな、『魔術撃墜装置(仮)』だ。一定の速度を持った魔力を感知して魔力の効力を失わせる弾を発射させる……弾は少しコストが嵩むが矢なんかに対してはただの石でもいい、弾を安く済ますことが出来る」


「すっげぇ、こんな小さい筒からよくこんなものが出来るな……」


 俺が関心していると周りのメンバーも集まり、気づけばメンバーの殆どが装置に夢中になりエジアがイエリを見下す様な形で対峙していた。


「お前のゴーレムも十分な出来だ……コストの高さは課題になるが、注目を集めるのが勝敗を決めるなら俺の後に出すのが正解だったな」


 プルプルと、頬を膨らませたイエリはゴーレムを風呂敷に包むと背負い部屋から出ていこうとする。


「お、お主のそんなちっちゃい筒よりワシの方が凄いんじゃーー!!!」


 捨て台詞を吐いたイエリは凄まじい速度で集会場を出て行ってしまった。


「はぁ……ガイゼン、悪いがあいつを追いかけろ。いつも通りなら裏路地にいる筈だ」


「りょ、了解っす」


 俺はエジアに促されイエリを追いかける事になった。


 ・

 ・

 ・

 スロウス国 裏路地


 俺は言われた通り裏路地に行くとイエリがゴーレムの上に座り込んでいた。


「!誰じゃ……あぁ、エジアの助手か……」


「隣良いか?」


「……うむ」


 俺は隣に座るとイエリを見上げる、彼女は暗い顔で俯いていた。


「イエリは、エジアさんと何かあったのか?」


「なんじゃ、助手なのに知らんのか……?」


「まあ助手って言っても臨時だし……」


「そうじゃったのか……ワシは、魔術師の家系だったんじゃ」


「へぇ、魔術師ってだけで重宝される小国もあるくらいだ、いいとこのお嬢さんだったのか?」


「落ちこぼれの……じゃがな。ワシは獣人とのハーフなんじゃ、父が獣人の母と結婚してワシが生まれたんじゃ」


「あー……成程な、獣人は魔術への適性が悪いから……獣人の血が強かったのか」


 イエリは何も言わなかったがその顔を見えない位置に隠してしまった。


「父は家系としては異端で、間もなく追い出された。冒険者として変わろうとしてたが気が付けば消息が途絶えたんじゃ。ワシたちはそのまま消えるのを待つだけだったけど、そこにあいつが現れてワシの才能を買ってくれたんじゃ」


「それで発明家になったって事か?」


「うむ、あいつは約束したんじゃ!ワシがエジアを驚かせるような発明をしたらギルドに入れてくれるとな!」


「なんだって?」


「む?ギルドに入れてくれるんじゃ、今でも作ったものを売ったりして食べ物には困らんがギルドに入れば母も無理して働く必要が無くなるんじゃ!……なんでそんな顔してるんじゃ?」


「いや……なんでも」


 少なくともあさかわギルドでは成人してない子供は労働目的での雇用は禁止されている筈だ、獣人の寿命は人間とそう大差ないからこの子はエルフの様な見た目詐欺でもない……まさか大人になるまで負ける気は無いと豪語しているのだろうか。


「ところで、お主は魔術師なのか?」


「ん?あぁ、そうだよ」


「お主は……魔術師の家系なのか?」


「あぁ……いいや、俺はこの世界では一般的な家庭に生まれたよ。()()()()()()()()()はあまり無かった」


 ただし魔法を使える……という事は伏せておいた。


「でも……さっきのは中級の中でも難しいやつじゃったろ?あれが出来る魔術師はそう多くないはずじゃ」


「決してお前を煽るつもりは無いんだが、俺は恵まれてた。かなりな」


「そうか……」


「でも俺はイエリの発明は凄いと思うぞ、こんなデカイゴーレム錬金術や召喚魔術でも難しいのに、科学だけで作るんだから」


「そ、そうか?そうじゃろ?」


 えへへと頬を赤らめるイエリに俺は顔を緩めると、突然背筋に悪寒が走った。


「(……!?)」


 そして俺は反射的にゴーレムを見ると、一秒も無かったが確かに()()がゴーレムに入り込んだのを察知した。


「えへへ……ん?助手どうしたの……じゃっ!?」


 俺がイエリをゴーレムから降ろし飛び退くと、ゴーレムはその身体を鈍そうに起こし全身から蒸気を出しながら赤い目を光らせた。


「な、なんで……ワシは起動などしておらんぞ……!?」


「イエリ、悪いが少し壊すぞ。『苦悶の衝撃』!!」


 少しと言いつつ本気で破壊する気でいた俺の魔術は、確実にゴーレムに衝撃を与えた筈だがどういう訳かゴーレムは傷一つ付いていなかった。


「おいおい……ミスリルすらヒビが入る一撃だぞ……!?」


 ゴーレムはこちらの番と言わんばかりに右腕を振り回すと、破壊音と共に近くの壁が粉々になった。


「ワ……ワシのゴーレムが……そ、そんなつもりで作ったんじゃ……」


「逃げるぞ!こんな狭い路地じゃ被害も増える!!」


 砕ける音、俺はイエリを抱え路地から飛び出た瞬間、路地の何もかもを壊しながらゴーレムは飛び出してきた。


「『獄炎』!『壊雷』!!『氷山』!!!」


 火を、雷を、普段慣れない氷すら放つがゴーレムにはまともな傷がつかない。


 そして次の魔術を放とうとした瞬間俺は膝を着いた。


「はぁっ……!!はぁっ……!!?魔力が……」


「魔術を使いすぎじゃ!!それ以上使えば後遺症が出かねんぞ!!」


「訓練してるから……大丈夫だ……くそっ、魔術は効いてないのか……?」


 俺もイエリも、僅かだが目を離したのがいけなかった。


「あ゛?」


 薙ぎ払う腕が俺に当たると身体中から鳴ってはいけない音が鳴り響いた、そして気づけば視界は裏返り地面が赤く色づいていた。


「ぁ……あぁ……じょしゅ……」


 ゴーレムは土煙に紛れた俺を見失うとイエリに目をつけ、ゆっくりと近づいていった。


 にげろ。口を動かすが顎が外れて喋れない、手を前に動かすが肘から先が無かった。


 意識があるのは幸運か不運か、せめて注意を引こうと魔力を込める。


「『────火』「止めておけ、後は俺がやっておこう」……」


 視界が黒に染まる直前、最後に見たのは黒いベストを身につけた男だった。


 ・

 ・

 ・

 スロウス国 城下街 商業エリア


 イエリは迫るゴーレムを見つめる事しか出来なかった、頭ではわかっていても体が鎖で縛られたかのように動くことが出来ない。


 ゴーレムは血の付いた拳で自らを生んだ主を仕留めんと振り下ろす。


 イエリはせめてその瞬間だけは見たくないと目を瞑るがいつまで経ってもその衝撃は訪れない、そして僅かな間の後金属が弾かれるような音が聞こえ、恐る恐る目を開けると灰色のコートを着こなしたエジアがゴーレムを吹き飛ばした瞬間が映し出された。


「エ……エジア……」


「助手は生きてる……安心しろ」


 エジアは全身から機械の駆動音を鳴らし眼鏡を直すとイエリに向けて言った。


「迷惑かけた罰として……お前のゴーレムは処分する、いいな?」


「……うん」


 イエリの返事を聞き届けたエジアは復帰したゴーレムの接近に対し何もしなかった。


 ただゆっくりと、コートの片側を広げると巨大な杭が飛び出しゴーレムを再度弾き飛ばした。


「……街は壊す、人は傷付ける、主人と違って相当やんちゃな様だな?」


 更にコートから大砲を取り出したエジアは片手で持ちながらゴーレムに連射する。


「教えといてやる……俺は魔術はおろか魔力すら無いが科学なら現代人にすら負けねぇ」


 魔力を伴わない物理的な破壊力はゴーレムに傷を付け膝をつかせるまでに至った。


「……可笑しいな、イエリ……お前が言っていた材質に対して頑丈すぎる。ガイゼンも魔術を撃たずにやられたとは考えられないし魔術耐性も上がっているな?」


「わ……わからんのじゃ、ワシは建築用途しか考えてなかったからここまでの耐久性なんて想定していない……」


「……介入した悪意があるな、誰かが知らない間に改造でもしたか。それは壊してから考えるか……」


 再度復帰したゴーレムは地面を叩きつけると砕けた地面を投げ飛ばす、無数の質量がエジアに襲い掛かるがエジアはその飄々とした態度を崩す事は無かった。


「被害を増やす事にシフトしたか……後一手で終わらせるぞ」


 エジアは両手の指を揃え花の様に広げると指先からワイヤーが飛び出し砕けた地面に突き刺さり、エジア含め地面に雷光が走ると砕けた地面は一つの球体に纏まった。


「即席ハンマーだ、耐える必要は無い」


 ゴーレムは空から降る小さな隕石を砕かんと拳を振るう、しかし悲しいかな。一匹の蟻が象に勝てない様に、余りにも力には差があった。


 そうしてゴーレムだった残骸は、1時間という僅かな時間しか動く事は出来なかった。


 ・

 ・

 ・

 ギルドあさかわ 医務室


 体が軽い。


 例えるなら肺一杯に空気を吸い込んで海の上に浮かんでいるようだ。


 このまま波に乗ってどこまでも流れる事が出来そうな気がする。


 何だか眠くなってきた……幸い危険な訳でもないみたいだしこのまま寝てしまおうk「早く起きろ」うわっ!?サイボーグが海の上に立ってる!?


「ハッ!?……夢?」


 目が覚めたら病院のベッドの上に居た……いや、この世界にここまで設備の整った病院がある訳ないのでどうせあさかわの中だろう。


 上半身だけ起き上がり横を見るとイエリとエジアが座っていた。


「ここはどこだかわかるな?あのゴーレムは壊した、危険だったんでな」


「助手……じゃなくてガイゼン……ワシがあんなもの作らなければお主が怪我する事も無かったんじゃ、本当にお主には……「ストップ」え?」


「いや……まぁ、イエリがそう思うのもわかるし謝らないと辛いのもわかるんだ……だけどごめん、先に言わせて欲しい。エジアさん、あのゴーレムなんすけど……」


 俺は起動していないゴーレムに()()が入り込み、暴走させたことを伝えた。


「やっぱりか……もしかしてお前の魔術も殆どが無効化されなかったか……?」


「あ、そうっす」


「あのゴーレム、イエリが話した材質に対して明らかに頑丈だった。お前の言う何かが本当ならそれは魔術的な介入の可能性が高い」


「……一体誰がこんな事を」


「実行できる存在は幾つか知っている……が、そいつらは理由なくするような奴でもない。少なくとも今考えてもしょうがない事だ」


 この話は終わりだとでもいう様に切り上げたエジアを見て俺はため息をつきつつ立ち上がると、今更腕がある事に気づいた。


「あれ……そういえば俺の腕って吹き飛んでなかったっすか?」


「あぁ、両腕無かったし瀕死だったが……あさかわの医者は優秀だからな。後で礼を言っておけ」


「了解っす」


 ・

 ・

 ・

 一週間後 ギルドあさかわ 酒場


「退院も早かったな……」


「あ、ガイゼン!待ってたのじゃ!」


 俺が医務室から出ると、酒場にはイエリが待っていた。


「……って、えぇ!?どうしたんだ一体……」


「エジアがマスターに進言してワシをメンバーに入れてくれたんじゃ!」


 俺がエジアを探すとエジアはマスターと話していた。


「マスター、エジアさん、ちょっといいすか?」


「ん?おおガイゼンか!話は聞いてるぞ、大変だったな」


「ええおかげさまで……それよりイエリなんですけど、大丈夫なんすか?」


「あぁ……本来なら成人していないイエリはウチのルールでギルドメンバーにはできない、出入りは自由だが―――だがあのゴーレムの事もあって目の届く範囲に置いておくべきだったからな。で、昔使ったシステムを復活させることにした」


「システム?」


「バディシステムって名前を付けててな、最低一人常に同伴者を着ける事を条件に未成年でもあさかわの冒険者になる事を許可するんだ」


「それってつまり……保護者同伴って事すか?」


「ま、平たく言えばそうだ。それでそのバディだが本人たっての希望でお前が推薦されてるんだ、どうだ?」


 俺?とイエリを見ると彼女は強く頷いていた。


「エジアさんの方が付き合い長いんじゃないすか?どうして俺が……」


「俺は冒険者としては余り活動してない……それにお前はいざとなったら体を張ってくれるしな」


「あぁ、わかりましたっす。それで……手続きとかはいらないんすか?」


「まあいらんだろ!昔のシステムだから資料とかどっかいったしな!」


 変なとこズボラだなこの組織。


「そういう訳で、改めてワシはイエリ!魔術はからっきしじゃが技術は大人にも負けん!よろしく頼むのじゃ、ガイゼン!」


「ああ、よろしくな」


 半ば強制の様な気もしたが、幼い相棒の笑顔に俺は笑顔で返す事にした。

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