表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/21

お嬢様

お読み頂きありがとうございます。

間をあけてしまってすみません(汗)

仕事やら出張やらが忙しく不定期投稿となってしまいそうです。

優しくお付き合いいただけると幸いです!

ふぅ、と1人の部屋の中、リリネルトは抑えきれない溜め息を溢した。


「お嬢様・・・」


 リリネルトは生来、他と比べても器量が良い方だ。 纏められているのが惜しまれるような夜色の髪。 非常に珍しい銀色の瞳は月のようで、冷涼な面立ちと相まって冬の夜空を思わせる容姿である。 下世話な話をすれば胸と臀部は平均を大きく越すサイズだが、手足と腰はすらりとしている。 元気で健康な子供を多く産めそうで、かつ女性的な魅力にあふれた理想的とも言える体型だ。

 そんなリリネルトが標準装備の無表情を崩し、悩ましげな吐息を零せば、どうだろう。

 この密室の中、他に人間、特に男性がいなかった事に胸を撫で下ろしたくなる様相の完成だ。


 それが例え、


「元気でお過ごしでしょうか・・・」


 恋慕でも、ましてや情欲でもなく、敬愛する主人を案じるものであったとしても。


   ※ ※


「・・・という事なのですが、いかがでしょう」

「・・・」

「カロナル嬢?」

「! 申し訳ありません、少し惚けておりました」

「・・・珍しいですね、お疲れですか? 昨日のように30人分をおひとりで用意するのは大変でしょう」

「お気遣いありがとうございます。 少し・・・何と言いますか、ホームシックで」

「それは・・・」

「仕えるべき主の傍に居られないと言うのは、こんなにも喪失感があるものなのですね」


 リリネルトとファルネルトは、この1ヶ月半でかなり仲良くなっていた。 日に何度か紅茶を淹れに行くアルベルトの他にまともな会話をしているのはファルネルトだけなので当然と言えば当然だが、貴族らしい駆け引きを交えず素直に会話できるのはなかなかどうして楽しかった。 リリネルトはその喜びに任せて自国の事やセシリアの行動にまつわる事を喋ってしまうほど愚かではないが、完全にプライベートな部分での趣味がとても合っているのだ。 教養深い彼との会話は勉強にもなるし、楽しくて仕方ない。 お陰で軽口も叩けるような仲になった。 互いが互いに賢しいので、うっかり機密を知ってしまうなどのリスクを負わなくて済むのも良かった。


「私には・・・分かりません」

「それはそうでしょう、リーフ伯。 貴方様は側近で、私は侍女です。 立場も、仕え方も全く異なるのですから」

「・・・そうですね。 私は王という存在である方を公務でお支えし、貴女は1人の人間としての生活をお支えするのですから、心持ちも違ってくるでしょう」

「そうですね。 ですが立場が異なっているからこそ、リーフ伯のお話は大変興味深いです」

「光栄です。 カロナル嬢のお話も、大変聡明なことが伺えるので非常に心地よいです」

「まあ、お上手ですね」


 薄く笑みを交わし合った時、リリネルトはふと思い出して表情を改めた。 歩みは止めないままファルネルトに問う。


「そう言えばまだお聞きしていませんでしたが、今回はどのようなお客様でしょうか。 性別や年齢等を教えて頂けると幸いです」

「あぁそれは・・・」

「それは?」


 この1ヶ月半で初めての歯切れの悪い返答だ。 ファルネルトはいつだって必要な情報を完璧に用意していたと言うのに。

 思わず訝しんで足を止める。 首を傾げて聞き返すと、リリネルトを置いて数歩進んだファルネルトは無表情で、しかし確かに眉尻に微かな困惑を滲ませて振り返り、言った。


「それが・・・私もよく分からないのです」

「・・・分からない・・・?」


 リリネルト達は、もう執務室に着いていた。


連投します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ