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全ての始まり

 処女作となります。

 緊張で震える手でタイプしておりますが、どうか温かい目で見守ってください・・・(汗)

全てのことの発端は三年前。 ユーデリア皇国の貴族院に、フェルート王国の王太子が留学してきたことから始まる。


※ ※


「隣国の王太子殿下のお話相手、ですか・・・」

「そうだ」


様々な色の薔薇が咲き誇る庭を持つ、豪華絢爛かつ広大な屋敷の中。 奥まった場所にある執務室で、一人の男性とあどけない少女が向かい合ってお茶を飲んでいた。


「それはまた・・・ 随分と急なお話ではありませんこと、お父様?」

「・・・フェルートは、ユーデリアの高い学力に目を付けているんだよ、セシリア。 フェルートは魔力が多い国民性と武力の適正な活用で大陸の覇権を握っているが、ユーデリアは国民全体の高い学力と文明水準の高さ、数々の有用な魔術具の創造により、別の意味で大陸を掌握していると言える。 そのユーデリアと交流を持つことで、そろそろ軍備だけでなく国全体を富ませる方向で栄えたいのだろうな」

「・・・なるほど。 人材目当ての拐わしに晒されている我が国としても、軍備増強のノウハウは得たいところ。 お互いがお互いの利点を押さえているということですか」

「私の娘は賢しく美人で素晴らしいな!」

「お父様ったら、やめてくださいまし」


重厚な執務机に座る美丈夫は、日暮れの前を思わせる紫がかった空色の髪と同色の瞳が美しいロマンスグレーのイケオジなのだが、デレデレ顔なのでなんか色々台無しだ。

愛娘に窘められて正気に戻ったのか咳払いをすると、イケオジ、もといユーデリア皇国筆頭公爵、アレン・ユーデルは説明を再開する。


「そこで、王太子と年齢も近く学院でも一二を争う才媛たるお前に、是非とも話し相手になって欲しいというのが陛下の言だ」

「言、と仰っても・・・」

「ああ。 勅命だな」

「・・・畏まりました。 陛下のご期待に必ずやお応えしましょう。 ユーデルの名に懸けて」

「頼むよ。 私の可愛いセシリア」


  失敗など微塵も想定していない様子で、”ユーデリアの懐剣”は、美しい愛娘に微笑みかけた。

 春空色の髪を揺らし、瑠璃色の瞳を柔らかに細めながら行うのは完璧なカーテシー。 “ユーデリアの花”と名高い可憐な少女は、己の運命の転換期が訪れることを、まだ知らない。


「というわけで、しばらく王城に参上することも増えるだろう。 よろしく頼んだよ、リリネルト」

「承りました、旦那様」


と、ここで、今まで一言も発していなかった少女も美しい礼を披露していた。 漆黒のワンピースに刺しゅう入りの真っ白なエプロン。 夜の帳色の髪をリボンで几帳面にお団子にした年若い少女だ。 実はこの侍女、春空色の髪の少女 ――― “ユーデリアの花”ことセシリア・ユーデル ――― の専属侍女だったりする。


「茶会の開催やら客人やらも増えるだろうな。 カルマンとも相談して、茶菓子と茶葉の購入を検討しなさい。 ・・・君の淹れる紅茶は評判がいい。 それを楽しみにしているお客人も多いんだよ?」

「ありがたきお言葉、光栄に存じます」


銀月を思わせる瞳を伏せて一礼する姿は、若いながらも侍女の鑑と言われるだけの気品と貫禄を漂わせている。 紅茶を淹れる技能に関しては右に出る者はいないと言われており、国王夫妻からの覚えもめでたく何度か引き抜きに会っているという大変名誉な実績もあったりする。 そのたびに、セシリアに仕える身であるからと固辞するという忠義に篤い人物であるという点も、高く評価されている。


「さあ、もう行っていいよ。 せっかくお茶を飲んでいたというのに悪かったね」

「いいえ、お父様。 お仕事中なのにお会いできて嬉しゅうございました。 くれぐれもご無理だけはなさらないでくださいね。 では、失礼させていただきます」

「失礼いたします」


にっこりと微笑むセシリアと、無音でさがるリリネルトを見つめるアレンの眼差しは、ただひたすらに優しい。 ユーデリアの未来を担うと名高い少女たちを尻目に、アレンは再び大量の書類たちに向き直った。


※ ※


「しばらくは忙しくなりそうね」


アレンから呼び出されるまでしていたように中庭の東屋まで戻ると、セシリアは疲れた様子でそう呟いた。 どことなく気だるい雰囲気でさえ、可憐なセシリアの容貌を際立たせる要因でしかない。 咲き誇る薔薇に囲まれていることもあって花の妖精に見えるほどに。


「さようでございますね。 本日のお勉強のお時間は、フェルートの歴史と郷土に関するものに変更いたしましょう」


隙のない立ち姿で傍に控えるリリネルトも、普段通りの無表情の中にも心配そうな気配を滲ませていた。


「そうね。 後で書庫からフェルートに関する書物もいくつか見繕ってきて頂戴。 あとは・・・そうね。 ねえリリネルト、あなたフェルートのお茶やお茶菓子にも詳しいの?」

「はい。 隣国ですので調べやすいですし、手に入れることも容易ですから。 いつでもお出しできるように用意しておきます。 それと、他の使用人たちにフェルート王国独自の文化がないか調べさせます」


大陸中のお茶、というか飲み物を知り尽くした、好きこそものの上手なれを極めているリリネルトの返答に驚くほど、セシリアとリリネルトの付き合いは浅くない。 愚問であったと苦笑を浮かべたセシリアは、3つ年上の侍女に同意を返す。


「それがいいわね。 ・・・お茶の時間が随分と慌ただしくなったものね」

「もう一杯でしたら、ご用意できるかと」


思わず零したセシリアの言葉に、すぐさま返答するリリネルト。 主の予定を管理することも立派な務めである侍女として、それでも最大限の譲歩と気遣いを見せてくれるリリネルトだから、セシリアはリリネルトを信頼しているのだ。

しかし、そうすることで自分の仕事が慌ただしくなってしまうと知っていながら、身を削るようにセシリアに尽くそうとするのはいただけない。 大事な家族としても見過ごせない一言だ。


「ありがとうリリ姉さま。 でも大丈夫。 フェルートの事について知ることが出来るのは楽しみなんだから!」

「それならいいけれど・・・ あまり無理をしてはダメよ?」

「無理をしたら姉さまが止めてくれるでしょう?」

「任せて頂戴。 大得意よ」

「知ってるわ」


今のこの光景を見た者がいたのなら、社交界中が噂するほどの大騒ぎになるに違いない。 なにせこの二人は、生まれた瞬間から生涯仕えることを決意し16年も奉仕し続ける健気な侍女と、その忠義に応えようと誰もが認める立派な淑女になり生まれてからずっと側にいる侍女に全幅の信頼を置いているという美談である意味有名人なのだから。

だからそう。 理想の主従を体現したかのような二人が、仲のいい姉妹のように年頃の娘らしく軽口を叩きあい、クスクスと微笑みあっているなんて天変地異にも等しい衝撃になるだろう。

しかし忘れてはいけない。  この二人、3つしか年が離れていない上に、片や誕生の瞬間から知っている可愛い年下で、片や生まれた時から寄り添って思って助けてくれる年上だということには変わりがないということを。 加えるなら、ユーデル公爵家とリリネルトの生家であるカロナル子爵家はどちらも身内に甘い一族であるということを。 だめ押しに、両家ともユーデリア皇国でも一二を争う歴史ある家柄であり、王家の裏で暗躍してきた一族であるということを。


 つまり、公私の区別が怖いほどはっきりしているだけの、知る人ぞ知る仲のいい姉妹のような関係である。


 まだまだ何もかも始まりです。

 説明臭くてごめんなさい・・・

 しばらくこんな感じですが少々お付き合いください。

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