喜怒哀楽のない転校生
夏の終わり、今日はやけに太陽の光が眩しかった。
少し冷たい風と共に新しい出会いの気配近づく…。
キーンコーンカーンコーン
「ねぇねぇ!みんな今日から転校生くるって」
高校1年生の夏休み明けのクラスの視線を集めたのは光莉だ。
「知ってる!男子みたいだけど、どんなやつかな?。」「イケメンかな?」
「えー絶対にないない」
クラスの女子達の予想合戦が続いた。
「高校入って半年で転校だろ?なんか絶対訳ありだろ?」
海斗が盛り上がりに釘を刺す。
有澤海斗は2年前に母を無くして以来、妹の為必死に勉強に励んでいる。父とは疎遠となっており、クラスのお調子者だ。
「私はどんな子が来ても大歓迎だな〜」
「水瀬光莉、お前っていつも前向きだな」
「フルネームで呼ぶの辞めてくれない?うざい。」
「ふん。」
海斗は不機嫌な顔しながら机に腰掛ける。
光莉は別に前向きに生きてきてる訳じゃない。
海斗同様、生まれて間もない時くも膜下出血で父を亡くしている。それから母が一人で育ててくれた。
ガラガラガラッ
教室のドアが開く。
「おはよー!久しぶりだな!よしお前ら、席着け」
陽気な挨拶と共に担任の関口先生が教室に入って来た。
「関口先生、今日転校生来るんでしょ?」
「早く!もう待ちきれない!」
クラスの歓迎ムードは最高潮だ。
「落ち着け!物事には順番があるから!」
「まずは、今日の放課後に文化祭に向けての説明会があるから水瀬、有澤お前ら二人で参加してくれ」
海斗が副委員長で光莉が学級委員長だからしたかない口調で「わかりました」と二人は承諾した。
その後、関口先生からの連絡事項は幾つか続いた。
「じゃ、そろそろお待ちかねの転校生を紹介するぞ、佐々木くん入って!」
それまで、お祭り騒ぎだった教室が一瞬にして静まりかえる。
ガラガラガラッ
高身長で細身、顔は生気がなく今にも倒れそうな雰囲気だ。
光莉と海斗含め、クラス全員がこの男子生徒が訳ありで転校生してきたと言葉を交わさずに感じた。
しかし、光莉だけは少し違う考えがを持っていた。
どこかで見覚えのある顔に、カバンにはオーロラガラスで作られた光莉と色違いのキーホルダーが付けられていた。光莉自身もどこでこのキーホルダーを貰ったのか、それとも買ったのか覚えがなかったが、不思議と懐かしい気持ちになった。
「はじめまして、、佐々木、、み、光華、、、です。よろしく、、、お願いし、、ます。」
まるで人間不信、何かに怯えているな様な話し方だ。
「佐々木くんの席は水瀬と有澤の間の席ね。後ろから2番目の空いてる席座って!」
関口先生に誘導され、光華は歩き出した。
明らかにおかしいと。近づいてくる光華を見ながら、モヤモヤした気持ちを抱きながら後で席先生に問いただそうと光莉は思った。
「これで、今日のホームルームは終了だ。各自1限目の授業の準備しとけよ!。」
いつも通りの授業、いつも通りのクラスの賑わい、いつも通りの日々が始まると思った。ただ、一つの事を除いては。