イジメの現場
ーバリバリッ!ー
「くうっ!」
ドアノブを懸命に回して扉を開けようとしていたフィーナの右腕に電撃が走った。
「うあああっ!」
反射的に手を離そうとするが筋肉が硬直してしまったのか電撃が流されるままの時間が過ぎた。
「くう……はあっ……はあっ……」
電撃を受けたフィーナが膝をついて大きく肩で息をしていると
「良いザマね、たっぷりと可愛がってあげるわよ!」
ーガシッ!ー
「きゃっ!」
扉の中から出てきたタチアナの取り巻きによってフィーナは更衣室の中に連れ込まれていったのだった。
更衣室の中は明かりが消されており窓にはカーテンが掛けられている。
周囲から見えない様に閉鎖された環境が整えられた場所に連れ込まれたフィーナは、電撃を受けた影響で身体が思うように動かせずに居た。
「あぎゃ……ぁ……」
肩の上のサラマンダーに視線を移すと彼も電撃の影響でフィーナの肩にしがみついているのでやっとという感じだった。
「ほら、立ちなさいよ!」
ーガシィッ!ー
床にへばっていたフィーナは力任せに立ち上がらせられた。
ードンッ!ー
「うっ!」
更衣室のロッカーに押し付けられたフィーナは
「チェーンバインド!」
ーガシィン! ガシィン!ー
タチアナの取り巻きにより発せられた拘束魔法により、フィーナの両手首は赤紫色に光るリングの様なモノに拘束されてしまい
ージャラジャラー
「うあっ!」
両腕を天井から吊り下げる様な姿勢で持ち上げられてしまった。
「良いザマじゃない! 成り上がりの亜人の分際でお高くとまっちゃって!」
ーバシィッ! ピシャアッ!ー
「うあっ!」
タチアナはフィーナの頬を遠慮無く叩いてきた。電撃の影響で身体が痺れて動かせないフィーナはされるがままだ。
「う……うぅ……」
フィーナはふとピンク髪の少女がどうなったか気になり彼女の姿を目で探す。
(良かった……)
彼女は更衣室の一角で震えて蹲ったままであり、特に被害らしい被害は受けていない様だ。
しかし、フィーナがそんな現実に安堵する間も無く
ードスッ! ボスッ!ー
「かはっ!」
タチアナに続いてフィーナの腹を殴りつけてきたのは取り巻きの一人、重量級のアマンダだった。
「このっ! なんでアンタなんかが王子様なんかとぉ! 生意気なのよっ!」
ードズッ! ボフッ!ー
「うぐっ!」
逆恨みの籠もったアマンダの拳がフィーナを襲う。しかし、幸いだったのはアマンダのパンチは腰が入っておらず質量エネルギーしか打撃の役に立っていない事だった。
「はぁ……はぁ……」
また、持久力にも欠けているアマンダはフィーナを苛め抜くより先に自らの体力が尽きてしまっていた。その時
ーガチャー
(だ、誰……?)
扉の開く音が聞こえた。誰かが来てくれたのかと希望を持って顔を上げたフィーナが見たのは
「なんだよ。お前等、亜人も捕まえてたのかよ」
バーキン達三人組だった。ここは女子更衣室なのにどうやって入ってきたのかフィーナには分からなかった。
「アハハハッ! あいつらがここに居るのがそんなにおかしい? 鍵を開けとけば運動場から来るのなんて余裕なのよ!」
フィーナが驚いているのが余程傑作だったのかタチアナがフィーナの顔をむりやり掴んでバーキン達の方に向けさせる。
「アンタも皆で可愛がってあげるわよ! 大人しく待ってなさい!」
ーバシィッ!ー
「うっ!」
タチアナの平手打ちがフィーナの頰を襲う。今まで散々殴られながらも耐えてきたフィーナの目にも涙が滲み始めていた。しかし
「いやあああっ! 止めて! 止めて下さい!」
バーキン達三人は床に蹲っていたピンク髪の少女を襲い始めた。
「こんなトコ誰も来やしねぇよ!」
「へっへっへっ、あの男でも呼んだらどうだ?」
「来れるもんなら来てみやがれってんだ!」
バーキン達は三人がかりで少女を抑えていく。ヌックとモディバルの二人で少女の四肢を抑えて身動きを封じてバーキンが辱めていく役回りだ。
「いやあっ! エル君、助けてぇ! 止めてぇ!」
ーブチブチッ!ー
少女のブレザーもろともブラウスを力任せに引き裂いたバーキン達の前には少女の小さくない乳房が無防備に広げられた。そんな光景を前にフィーナは
「止めなさい!」
ーブォン!ー
鋭い蹴りを空に放った。当然、フィーナとバーキン達の間には距離がありいくら蹴っても届く事は無い。しかし
ーガツッ!ー
「うがぁっ!」
フィーナの上履きはバーキンの後頭部にクリーンヒットしていた。
「てめぇ、何しやがる!」
頭を押さえながら立ち上がるバーキンと他二人。彼等の目標は明確にフィーナに向けられる事となった。
両腕が吊り上げられているフィーナには抵抗する術は無いかに見えた。ここにはバーキン達だけでは無くタチアナと取り巻き達も居る。
人数だけならエルフの少女一人など難なく組み伏せて好き放題に出来ると思われた。
「こうなったのもてめぇの自業自得だ! たっぷり弄んでやる!」
バーキンがフィーナに襲い掛かろうとしたその時だった。




