表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第八章 貴族令嬢編
689/821

ゴブリン襲撃

 フィーナ達が夜間警備に就いて三時間程が過ぎた。何も起こらない夜に安心したのか警戒に当たっていた村人の数も徐々に減り始めていた。

「今日は来ないか? なら、明日にでも話に合った砦でも偵察に行ってみるか」

「そうだな。ギルドに報告を上げれば報奨金が貰えるかもしれないな」

 アッシュとバベルの二人は既に明日の予定について話し始めている。見回りくらいしか無い仕事内容に飽きてしまった様だ。

「二人共、今は仕事に集中して! いきなり敵が来たらどうするのよ!」

 そんな二人をよそにユリィが弓矢を構えながら村の外の牧草地を注視している。


ーガサガサガサー


 その時、牧草地の方が草同士が擦れる様な音が聞こえてきた。風はあまり強くないが無風でも無い為草の音が聞こえてきても不思議は無い。

「え〜と……」

 ユリィがいくら遠くに目を凝らしてみてもどこまでも続く様な暗闇しか広がっていない。その時


ーザッザッザッザッ!ー


 何かの足音が多数近付いてくる音が聞こえてきた。しかし、ゴブリンにしてはかなり速く不気味な息づかいと共にどんどん大きくなってくる。

「バウッ! バウッ!」

 暗闇から現れたのは多数のウェアウルフ、そしてその背に乗り粗末な石槍を構えているゴブリン達だった。

 騎兵の様に突撃してきたゴブリン達に対し警戒に当たっていた村人達は全く対応出来ず

「うわあっ!」

「ご、ゴブリンだぁーっ!」

 ゴブリンの姿を見た村人は逃げ惑い始めた。

「えいっ!」

 一直線に突撃してくるウェアウルフに狙いを定めるのにそう苦労は無い。ユリィは距離のあるゴブリン騎兵に矢を放った。


ードスッ!ー


「ギャッ!」

矢はゴブリンの肩に当たった様だがゴブリンを射落とすには至らずウェアウルフごと突撃を続けてくる。

「ユリィ下がれ! おらあっ!」

 松明を投げ捨てたアッシュが向かってくるゴブリン騎兵に立ち塞がる。しかし、向かってくる多数のゴブリン騎兵の圧に

「うわあっ!」

 剣を我武者羅に振り回しながらゴブリン騎兵を避けるのが精一杯だった。

「おりゃあっ!」

対するバベルは同じく槍を振り回すがこちらは


ードガッ!ー


「ギャアッ!」

 ゴブリン騎兵の一騎に槍をぶち当て一匹のゴブリンを落狼させた。


ードドドドドッ!ー


 ゴブリン騎兵達はアッシュ達を相手にせずそのまま村の中を駆け抜けていく。ゴブリン騎兵の向かう先は



「ゴブリンだぁ〜!」

「助けてくれ〜!」

 焚き火を囲んで待機していたシュレイザ達のところにも村人達の叫びが届いてきていた。

「なんだ?」

 声は聞こえるが敵の姿が見えていないシュレイザ達が叫び声のした方向を警戒していると


ードドドドドッ!ー


 何者かが地面を蹴る音が多数迫ってきているのが分かった。

「アリアとパトリシアは物陰に身を隠せ! 急げ!」

 接近してくる何者かの速度が速い事を察したシュレイザは女の子二人を退避させる。

 シュレイザからは敵の姿がまだ見えていないが、接近してくる何者かかは焚き火が丸見えのはず。

 そんな相手に姿が見えてから魔法の詠唱など間に合うはずが無い。

「渦巻く炎よ、我を護れ……」

 シュレイザが接近してくる何者かを牽制するために炎の壁の魔法を詠唱し、いざ発動させようと暗闇に目を凝らしたその時

「はぁ……はぁ、た、助けてくれ!」

 走り過ぎて息を切らせている村人達の姿が飛び込んできた。

 咄嗟にシュレイザは炎の壁の発動を止めるが


ードドドドドッ!ー


 村人達の背後から襲い掛かるウェアウルフに騎乗したゴブリン達の姿が見えた。

「炎の槍よ、敵を貫け……ファイアランス!」


ーゴオッ!ー


 火魔法に秀でたシュレイザは迫る敵に慌てる事無く、炎の槍を視認できた全てのゴブリン騎兵に向けて放つ。

「ウギャッ!」

「ギャッ!」

「ギャアーッ!」

 シュレイザが放った炎の槍はいずれもゴブリン騎兵を正確に捉えており


ードサッ! ドササッ!ー


 炎の槍の熱と衝撃を受け止められずに落狼していく。


ードドドドドッ!ー


「「「ギャアーッ!」」」

 地面に落とされたゴブリン達を轢きながら後続のゴブリン騎兵達がシュレイザ達の横を通り過ぎていく。

 奴らの向かう先は葉野菜畑で警戒に当たるアルフレッド王子達のグループが居る地点だ。

「フィーナぁ! そっちにウェアウルフのゴブリンが行ってるよぉー! 気を付けてー!」

 反射的にアリアが大声でフィーナ達に警告を叫んだ。



「今の声は……!」

 フィーナの長い耳には近付いてくる多数の足音を捉えており、アリアからの警告も加味して接近してくる集団がウェアウルフに騎乗したゴブリン騎兵である事は把握出来ていた。

「フィーナは手近な建物の陰に隠れるんだ。奴らは僕が迎え討とう!」

「あぎゃ!」

 アルフレッド王子とサラマンダーが我先にゴブリン騎兵達を迎え討とうとする。しかし、

「待ってデイヴ。相手が騎兵なら……私に考えがあります。私の松明を持って後ろに下がっていて頂けますか?」

 フィーナには何か考えがあるらしく、自分の松明を王子に渡しフィーナとゴブリン騎兵達から見た後方……村の外への移動を王子に要請する。

「何をするつもりだ? 君を危険に……」

 フィーナの言葉に異を唱えようとするアルフレッド王子だったが

「これは一度しか通じません! 早く行って下さい!」

 ゴブリン騎兵の姿は見えなくとも高速で迫っているのは察知できているフィーナはアルフレッド王子に大きな声で叫んだ。

「わ、分かった。無理はするなよ?」

 フィーナの大声に驚きつつも言われるがままに走り出したアルフレッド王子を確認したフィーナは

「慈愛の女神様……」

 神聖な光魔法の祈りと詠唱を始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ