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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第八章 貴族令嬢編
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跳梁跋扈

「あの、私はダンスした事ありませんからデイヴのご迷惑に……」

 王子に誘われたフィーナはダンス経験が無い事に躊躇いがあるのか、王子からの誘いを丁重に断ろうとする。しかし

「大丈夫さ。僕に合わせてくれれば良い」

 王子はやや強引にフィーナを引っ張ってダンスを始めようとする。

 いつもならこの辺りでサラマンダーが王子を阻止するのだが今は大人しいままだ。

 それを見た王子はややほっとした顔をしながら

「ほら、手はこう……ステップは落ち着いて。今の曲はゆっくりだからあわてずにいこう」

 サラマンダーに焼かれる惨劇を気にしなくて良い原状に安堵しつつ、アルフレッド王子はフィーナとステップを刻み続ける。

(なに……?)

 当のフィーナ自身も初めてのダンスであるはずなのになぜか身体が覚えている不思議な感覚に戸惑いを感じていた。

「その調子だ。本当に初めてなのかい?」

 フィーナの手を取る王子も不思議そうな顔をしている。初めてと言う割にはすんなりダンスをこなし動きに迷いが無いフィーナに感心している様だ。

「きゃ〜、王子様〜! 次は私を選んで下さいませ〜!」

「なによ! アンタ、抜け駆けは許さなくてよ!」

「あなた知らないの? 王子様の好みは私みたいなふくよかな淑女だって」

「そんな訳ないでしょ。王子様には私みたいな大人の女の魅力が一番なんだから」

 注目を集めるアルフレッド王子とフィーナだが、やはり周りの女性達は好き勝手な事を大きな声で話している。

 その声は王子にも聞こえているはずだが、曲に合わせて踊る目の前の彼はまるで意に介する素振りも無い。

(デイヴは……気にならないんでしょうか?)

 フィーナが周りからの視線と会話を気にしていると王子はフィーナの腰に手を回して自分に引き寄せてきた。

「え? あの……!」

 いつもの王子より積極的な行動にダンスの一環と理解しつつもフィーナは驚きの声を上げる。そんな彼女の耳元で

「一々気にしていたらキリが無い。好きに言わせておけば良いさ」

 囁くようにアルフレッド王子が話し掛けてきた。普通の声量で話す訳にはいかないとは言え、今の王子はかなりグイグイ来ている。

 並の女の子であれば完全に陥落しているはずだ。実際のところ、アルフレッド王子としてはフィーナとの婚約を既成事実にしてしまいたいという目的がある。

 本当に好きな相手と結婚が出来れば良いのだろうが、そこは一国の第一王子という立場上、結婚相手を好きに選ぶという自由が必ずしも約束されている訳では無い。

 様々な貴族達が王家との繋がりを求めている。また、深めたいと虎視眈々と機会を伺っているのが現実なのだ。自分の娘を王子の妃に出来れば晴れて王家の仲間入りとなる。

 つまり、今の王子は隙あらば誰かから縁談を持ちかけられてもおかしくない立場に置かれているのである。

 今はフィーナの両親の尽力もあり、彼女が王子の婚約者として内定している。

 だが、政治の世界は複雑怪奇であり国益を優先し他の何者かとの縁談が組まれ、フィーナとの婚約を解消されてしまう可能性が無いとは限らないのだ。

 実際、そうなって困るのはアルフレッド王子自身であり、何が何でもフィーナと結婚したい彼は既成事実を喉から手が出るほど渇望していたのだ。

「フィーナ、僕は君に辛い思いはさせない。どうか信じて欲しい」

 アルフレッド王子はフィーナの眼前まで顔を近づけて思いを語る。そんな初めてのはずの光景にフィーナは以前にも同じ様な出来事があったような気がしていた。

(この光景、前にどこかで……?)

 フィーナの脳裏をよぎった男性とのダンスの既視感は女神時代の記憶の断片な為、今のフィーナが思い出せるはずも無い。

 記憶なのか夢で見た幻なのか、そんな朧気な感覚にフィーナは戸惑いを感じていた。



 フィーナとアルフレッド王子のただならぬ雰囲気に心中穏やかではない人間が会場に少なからず居た。

(兄貴のヤツ、今日ここで婚約宣言するつもるか……! そんな事させてたまるか! あれは俺のモノだ!)

 第二王子のアレスは内心焦りを感じていた。彼もタチアナとの婚約が内定している身である。

 だが、実際のところ

彼女との縁談はタチアナの父親が有力貴族という立場で強引にねじ込んできた話であり、当のアレスにとっては他人事という思いが強かった。

 しかも、兄の婚約者の成り上がり貴族の息女より由緒あるタチアナの家の方が兄より優位に立てるという打算があった。

 だからタチアナとの婚約も彼にとってはあまり関心の無い事だった。魔法学院でフィーナを見掛けるまでは……。

(後二年あれば彼女を必ず俺に振り向かせてみせる! 兄貴にばかり欲しいものを手に入れさせてたまるか!)

 何かを決意した表情を見せたアレスは列席者達の人波の中に紛れていくのだった。



「あの成り上がりエルフ! 見せつけてくれちゃって!」

 パーティー会場から席を外してお手洗いに来ているタチアナは自分の取り巻き達に当たり散らす様に感情を爆発させていた。

 彼女にとってもアレス王子との婚約はただの安全牌であり滑り止めに過ぎず、隙あらばアルフレッド王子の正妻の座を掴みたいと考えていた。

 そうすればどんな貴族相手であろうとマウントを取る事が出来る。

 それは自分の家柄と容姿を持ってすれば十分に勝機があると見積もっていたのだが、学生生活も一年が経とうとしているのにアルフレッド王子とは満足に接点すら構築出来ていない。

 ましてや、地方貴族のパトリシアにも後れを取っている様な屈辱にタチアナは大変お冠であった。

「アンタら! 何か良い方法無い? あいつらをギャフンと言わせられそうな方法を!」

 タチアナはいつもの取り巻き達に何かいいアイディアが無いかと話を振った。

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