表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第八章 貴族令嬢編
662/821

貴族の常識

 薄暗い会場で列席者達がざわつく中、会場を見下ろす位置にあるベランダの様な場所にある扉が開いていく。


ーギギィィィー


 両開きの扉が軋む音が会場内に響くと一人の壮年の男性と彼に続いて二人のイケメンがベランダ上に現れた。

「キャ~! アルフレッド王子様よ〜!」

「王子様〜こっち向いて〜!」

「キャ~王子様〜!」

 列席者の年頃の女の子達からは黄色い歓声が上がる。一方、弟である銀髪のアレス第二王子への歓声は異様に起きていなかった。

 なぜなら会場の一角から睨みを利かせている集団とその首領の姿があったからである。

 黒いドレスを着たツインテールのその首領の眼光のせいか近くの女の子達は蛇に睨まれた蛙のように縮こまっている。

王家主催の生誕祭に招待されていたのはフィーナ達だけでは無く、第二王子アレスの婚約者であるタチアナとその取り巻き達も出席していたのである。

「くぅ〜、本当なら私も壇上に上がれていたはずなのにぃ〜」

 タチアナは国王以下王家の面々が会場を見下ろす位置のベランダに集まっているのを見て歯痒く思っていた。第二王子の婚約者という立場を盾にバルコニーに上がろうとしたところ、当の第二王子から

「まだ、婚約な段階だしそういうのは正式に結婚してからにしようか」

 丁重に拒絶されてしまって現在に至るのである。普通に考えればこの会場に出席出来るだけでも特権なのだがそこはカーストに拘るタチアナである。有象無象と同じ立ち位置は私のプライドが許さないと言わんばかりに歯軋りしながら爪を噛む勢いで悔しがっている。

「あ、あいつら……なんでここに?」

 そんなタチアナがフィーナ達の存在に気が付���てしまったのたから、彼女の苛立ちは最早有頂天である。

「ちょっと、あいつら下級貴族と平民よ! なんでつまみ出さないのよ!」

 直ちに近くの給仕係を呼び止めて彼に無理難題を申し付ける。

「あちらの方々はアインホルン家のお連れ様と伺っております。理由なく退去要請は出来かねます」

 それだけ言うと給仕係は足早に立ち去ってしまった。どうやらタチアナを面倒な客認定してしまったのだろう。

「あ! ちょっと待ちなさいよ!」

 給仕係に相手にされなかったタチアナは地団駄踏みそうな勢いで苛立っていた。そうこうしている間に会場では酒類をメインとした飲食が始められ様としていた。

多数の給仕係がスパークリングワインや希望するワイン等個人の希望を優先した注文の酒を提供していく。

「あ、この子達にお酒はちょっと早いかしらね。果実飲料とかあるかしら?」

 フィーナ達にワインを提供しようとした給仕係にアルコール以外の飲み物をレアは注文する。

 恐らく初めてであろうワインのおあずけを余儀なくさせられてしまったアリアが

「ええ〜、せっかくお酒飲めると思ったのにぃ〜」

明らかに肩を落としているアリアだが、そんな彼女にレアが

「こういう場で慣れないお酒は避けておいた方が良いわ。悪い狼に拐かされたりしたら危ないでしょ?」

 そんなレアの言葉がピンとこないのかアリアのみならずフィーナもパトリシアもポカンとしている。

 会場で飲み物が行き渡る頃合いに立食パーティーの準備が進められていく。

 料理を載せたテーブルが続々運び込まれる会場で人々はそれぞれ見知った顔同士、世間話を始めている。そんな混雑しかけた会場でレアとフィーナ達三人は邪魔にならない様にと壁の花となっていた。その時

「ごきげんようレア様。そして愛しの姫君、フィーナ姫」

 いつの間にかアルフレッド王子が挨拶回りに会場に降りてきていた様だ。王子はレアに恭しく頭を下げて一礼する。

 こうしてみるとレアは大貴族の夫人として丁重に扱われる存在と認識されているのがよく分かる。

 この異世界の歴史に無理やり干渉した形となっている訳だがレアやフレイア、ノルン達の長年の苦労が実を結んでいる証でもあった。

「実は貴女方のお席をこちらでご用意させて頂きました。どうぞこちらへ」

 王子の話の通り彼が指し示した方向には王族が集う為のテーブルが用意されている光景があった。

 王子はレアの手を取ると彼女を先頭にフィーナ達も先導し始めた。最後尾は殿を務め異常無しを確認しているノルンである。

 王子の性格からするとフィーナの手を取って連れて行くはずが今日に限っては母親のレアをエスコートしている。その理由はすぐにアルフレッド王子の口から明かされるのだった。

「レア様、本日は王家主催の生誕祭にご足労頂き感謝致します。貴女にご了承頂きたいお話がございまして……」

 人波をかき分けるように会場を歩く王子は言葉を続ける。そんなアルフレッド王子に対し

「そんなに畏まらなくて大丈夫よ〜。デッちゃんとは小さい頃からのお付き合いじゃない」

 いつも通りの砕けた態度で王子に対応している。ちなみに彼女の言うデッちゃんとは王子のミドルネームであるデイヴィッドの愛称である。フィーナがアルフレッド王子をミドルネームで呼ぶのも母親を真似ているという経緯がある。王子はレアの言葉を受けると真面目な顔つきになり

「私とフィーナの婚約について、この生誕祭において皆に宣言させて頂きたい」

 内に秘めていた胸の内を打ち明けてきた。魔法学院ではフィーナとアルフレッド王子の婚約は公然の秘密となっているが、それは第二王子のアレスからタチアナ経由で広まった話であり、公には知られている話では無くその辺りの公表はレアやフレイアが難色を示していたという経緯がある。

 第一王子の婚約者と広く知れ渡ればフィーナは今以上に好奇の視線に晒される事になってしまうだろう。

 フィーナの身の安全を考えるなら、彼女が分別をきちんと身に着けた大人になるまでは一般に広く流布するのはリスクが大き過ぎた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ