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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第八章 貴族令嬢編
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テスト開始

 フィーナ達がトラキュア子爵の扱いにてんやわんやしている間に普通にファイアーボールの試験が始められていた。

「よし! ゴブ太、ゴブ夫、ゴブ吉、ゴブ蔵、ゴブ美、目標はあの生徒だ! ゴブリンアタック開始!」

 試験場ではオネット先生がノリノリで人形を動かし始めた。

「ふ、ファイアーボール!」

 一番手の生徒は最初だけに試験の要領が掴みきれていない。彼女のファイアーボールは人形達に打撃を加えるどころか、彼らが通過した地点に着弾させる有様だった。

「あ〜、惜しい!」

「もう少し右よ! 狙いが逸れてるんだから!」

「違うわ、左よ左。 先を読まないと」

 ギャラリー達は一番手の苦労を他所にそれぞれ好き勝手な事を言っている。そんな騒々しい試験会場で実力テストは無情にも進められていく。そして生徒の前に引かれた白いラインを人形達が超えたところで

「試験そこまで! グレータ・トンベリ、0点!」

 全ての人形に白線を越えられてしまったからか、ファイアーボールが至近弾にすらならなかったからか、トップバッターの彼女の得点はゼロとの判定が下された。

「まぁ、0点でも気にするな。このテストで点数を取れるだけ上位と考えて良い。これまで満点を取った生徒は……」

 担任教師が落ち込む女生徒を見かねたのか実力テストについて語り始めた。回避に全振りの相手を全員仕留められる生徒など居ないように思えるが

「ダブりのシュレイザは確か満点だった。あいつ一発で満点叩き出してこれぐらい普通だろ? みたいな態度してたからな。クソほどどつかれてたっけな」

 炎の魔法は得意だと言われているだけの事はある万年留年組の先輩である。

「さて、次に試験を受ける者は居るか? 0点は当たり前だ、さぁお前達のやる気を見せてみろ!」

 担任教師の発破に触発されたのか生徒達が一人また一人と試験に臨み始めた。一番手の生徒が0点だったのが他の生徒達に余計な気負いを与えずに済んだのかもしれない。そして、チラホラではあるが生徒の中には人形達に至近弾や直撃弾を当てる者も出始めた。

(何よ、こんなのまぐれ当たり狙いのタダのギャンブルじゃない!)

 徐々に自分の番が回ってくるタチアナは内心非常に焦っていた。日頃から自身の有能さを周囲に吹聴し無意味にハードルを上げていた手前、この期に及んで0点なんて叩き出したら赤っ恥どころでは無い。そんな折

「次、フィーナ・アインホルン!」

 フィーナの順番が回ってきた。タチアナと違い、下手に見栄を張る事の無い彼女は自然体でテストに臨む事が出来た。

「それでは始め!」

 担任教師の号令とともにオネット先生の駆る人形達がフィーナ目掛け前進を開始した。

「ゴブ太、ゴブ夫、ゴブ吉は前進して敵の動きを探れ。後方の二人はゆっくり前進だ」

 オネット先生は生徒に合わせて戦術を変えていた。人によっては開幕単縦陣で突っ込ませて虚を突いたりもしているがフィーナ相手には警戒している様だ。ある程度散開させながら人形達をフィーナに近寄らせていく。

(まだ……まだ……)

 人形達はとっくにファイアーボールの射程内に入って入るのだが、フィーナはファイアーボールを撃たない。他の生徒達ならプレッシャーに負けて命中が見込めなくとも魔法を撃ち始めた距離である。

(なぜ撃たない? 人形達はとっくに見えているハズだ)

 オネット先生はこれまでの生徒と違うフィーナの動きに少し戸惑っていた。大抵の生徒は距離が遠い内に何発か撃ち込んでくるものなのだ。

 相対距離が長ければそれだけ攻撃を外した際のリカバリー時間が確保しやすい。特にファイアーボールは咄嗟の速射には向いていない魔法な為、近距離での攻撃を避けられた場合はそれがそのまま命取りにもなりかねない。

「先生? 二年の先輩はどうやって満点取ってたんですか?」

 フィーナの試験の最中ギャラリーと化していた担任教師とクラスメイト達は動きのあまり無い光景に飽きたのか雑談に興じていた。

「シュレイザのやり方か。あいつは当たる様に撃てば当たるんだから簡単だみたいな天才肌な事を言ってたがバカだからアテにならんぞ?」

 担任教師は昔を思い出しながら語っていた。ダブりの先輩と言っても炎属性魔法の扱いには長けていたらしい。

「まぁ、無誘導魔法を当てるには味方と協力して敵を誘導するか、数撃つしかないからな。点を取りたいなら数を撃て」

 担任教師の助言は下手な鉄砲も数打ちゃ当たるだった。魔術師が単独でゴブリン達と相対している時点で致命的な失敗を犯している。今回のテストは敢えて不利な状況を想定した上での精神的な冷静さを測る意味合いが大きい。そういった意味では生徒達の個性や傾向が分かる実力を測定するのにはベターな試験である。

(動きが無いな。ここは突撃させるか)

 オネット先生の操る人形達はフィーナの前の白線まで十メートル程の距離まで近付いていた。全力疾走させれば小さい人形達と言えど簡単に到達できる距離であり、この時点でフィーナの0点は確定した様なモノだった。

「よし、行け! 全員で突っ込め、突撃だ!」

 五体の人形達は十メートルの距離をゴブリンを模した動きでそれぞれ距離を詰め始めた。単純に相対距離が近くなれば命中率は上がる。

 しかし、実戦はそれだけでは無い。武器を持った相手が自分に殺意を向けて向かってくる事による心理的な圧迫。これに負けずに敵に狙いを正確に付けなければならない。

「ファイアーボール!」

 人形達との距離が十メートルを切った時にフィーナは向かってくり、人形達に向けて火球を放った。

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