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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第七章 人型機動兵器パイロット編
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スクールカースト

 竜巻は巨大になりF3〜F4はあろうかという規模まで勢力を増していた。離れた位置で見ているフィーナ達の元にも風のうねりが届く程。

 標的のタコは強風で吹き飛ばされどこにいってしまったか分からない。その後、魔力のビークを迎えた竜巻は徐々に力を失っていきいつしか跡形もなく消えてしまっていた。

「ありがとうございました。バルフェット一等兵、後でお話をさせて下さい」

魔弾を撃ち込む事で任意の場所に竜巻を発生させる事が出来るレナ・バルフェット一等兵の力にフィーナは手応えを感じていた。そんなレナの次に標的の的当てに臨んだのは

「アイネ・バッケスホーフ一等兵です。氷属性をとくいとしています。よろしく」

 物静かな口調の紺色の綺麗な…長髪が特徴の女生徒だった。

フィーナが光の矢を放ち標的をピックアップして射撃を促すと


ータァーン!ー


バッケスホーフ一等兵の撃った魔弾は標的への接触前に氷の玉を生成し


ードゴォッ!ー


ライフルから撃ち出された運動エネルギーを守ったまま大きな質量となって標的に激突した。

「バッケスホーフ一等兵にも後で確認したい事があります。お疲れ様でした」

 氷の質量弾は中々有望そうに見えた。後は彼女がどの程度冷気を強められて雹の硬度を上げられるのかという事になる。

「それでは次の方、どうぞ」

 フィーナが次の的当ての為に学徒兵達に試験への参加を促すと、一機のセイズコナが悠然と前に進んできた。そこはかとなく感じるイキり臭にフィーナがやや身構えていると

「やっと出番かぁ。もう待ちくたびれちまったぜ〜」

 案の定である。どうやら転生者疑惑のあるディルク・ブルクハルトだった。うんざりしたフィーナが事務的に試験をさっさと終わらせようと口を開こうとしたその時

(フィーナさ〜ん、お待たせ〜! 分かりましたよ〜それの経歴♪)

 天界のノルンから連絡が入った。彼女の話によるとディルク・ブルクハルトは元転生者の二回目の転生の結果であり、元々は門脇凪という男子高校生であったというのだ。

 そして一度目の転生でこの異世界にライト・ローライトとして転生して来たらしい。魔力大回復という特性を与えられたライトは他者より強力な魔法を習得して、それはそれは楽しい転生ライフをイキておられた様だ。

 しかし、彼が転生した時代は羽虫勇者大石奏が魔王を倒し、科学に世界が傾き始めた異世界であった。

 その為、魔法を使って戦う相手も存在しないライトが成功する人生を歩む事は敵わず、平凡な人生のままで終わってしまったそうなのだ。

 特に世界に貢献も混乱も齎さなかったライトは再び平凡な人生ディルク・ブルクハルトとしてこの世界に生を受けたのだった。

 現世から異世界転生した魂が記憶を保持し続けるのは稀であり、異物は大抵異世界の運命めいた力により大きな影響を及ぼさない小動物や虫などになっていくのだが、ディルクは奇跡的にも二度目の人生をイキている様だ。

 それはある意味彼がこの世界に何の影響も齎さないただの有象無象のイキりモブである事の証左でしかない。

(……という人みたいなんで、今のうちに世界を引っ掻き回さない様に釘を差しておいた方が良いんじゃないですかね?)

 これがディルクの前世を調べてきた女神ノルンからの提案だった。

「少尉どの〜? もう撃っちゃって良いんすかぁ〜?」

 ノルンの話に耳を傾けていたフィーナはディルクを完全に放ったらかしにしていた。そんなフィーナに対しディルクはセイズコナからの通信に加えてスピーカーを使ってフィーナを急かしてきた。

フィーナは例によって光の矢で標的のタコに当たりをつけ、それを空中に浮かせると

「え? あんなただ浮かんでるヤツに当てるだけで良いんすかぁ? レベル低っ!」

 あまりにも不遜なディルクの態度にフィーナが若干イライラすると


ーホワンホワンホワンー


「それではこちらでどうでしょう?」

 標的のタコを実際の多脚兵器に準拠した動きをさせ始めた。

五百メートル先をフラフラとランダム軌道で飛び回り始めた標的を狙うディルクだったが

「くそっ! ちょこまかと……」

 動き回る標的を中々捉えられない様だった。煽ってきておいてノープランかとフィーナがため息をつきつつ呆れていると

「あんな細かい奴狙ってられるかぁ! 舐めやがってぇ!」


ータァーン!ー


 イライラしたディルクが発射した魔弾はかすりもせずに標的を通り過ぎていくと


ーカッ!ー


 突然魔弾から閃光が放たれるとフィーナはその光景に危険を察知し


ーパアアアァァァ!ー


 瞬間的に自分や学徒兵達を防御する為、前面に光の壁を展開。


ードオオォォォン!ー


 と、同時に魔弾が大爆発を起こした。ディルクの魔弾は他の学徒兵の使っていた燃焼系の爆発では無く核融合に近い爆発を起こし、キノコ雲と衝撃波を発生させた平地には爆風が吹き荒れた。

 周囲を襲った爆風が収まり巻き上げられた土埃が落ち着くと学徒兵達からざわつく声が聞こえ始めた。

「おい、ディルクのヤツ口ばっかりじゃなかったのかよ」

「なんだよ、あんな爆発見た事ねーぞ」

「あれじゃエドワード先輩と一緒じゃねぇか」

 フィーナのインカムには学徒兵達がディルクの魔法を初めて見た様な声で溢れかえっていた。

「あれぇ? 俺何かやっちゃいましたぁ? 少尉どの〜?」

 あからさまなすっとぼけにフィーナのイライラは着実に蓄積されていく。あまりの手加減無しに思わず声を荒げようとした次の瞬間

「ディルク一等兵! き〜さ〜ま〜! 何を考えている!」


ービリビリビリビリー


 ドラコ軍曹が操るベルセルクがセイズコナのコクピットのある胸部を鷲掴みにすると、直接電撃を流し始めた。

「ぐわあ〜っ!」

ディルクはたまらず悲鳴を上げ始める。一通り電撃を流し込んだ所で

「少尉殿が防がなかったらお前含めて全員熱風と衝撃波でやられていたのかもしれんのだぞ! 何かやっちゃいました? とか、自覚なしか! バカモンが!」

ドラコ軍曹はそう言うとディルクのセイズコナを引きずりながら平地の向こうへと去っていった。

「少尉殿、ディルクは私が性根を叩き直しますのでどうか彼を預からせて下さい」

 ドラコ軍曹からの上申をフィーナは快く快諾するのであった。

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