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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第七章 人型機動兵器パイロット編
538/821

膠着状態

 ラムシュタイン基地で安室祐一に襲われたフィーナが目覚めた時、彼女には新たな任務が命じられた。


【未だ占領下にあるアースガルド国内にある各基地に陽動を掛けろ】


 というものであった。ラムシュタイン基地を取り返したとは言え、H・A・Wの絶対数が足りないアースガルド側は攻勢に出る余力は無かった。

 しかし、敵が惑星改造を進めているのでは放置も出来ない。敵の目的が達成されてしまえば、酸素濃度が薄くなったアースガルドは戦わずして敗れてしまう事になるのだ。

 そこで白羽の矢が立ったのはフィーナ達の外人部隊であり、各基地へ揺動と偵察を兼ねた出撃を繰り返させていたのである。

「少尉殿、お身体はもうよろしいのですか?」

 輸送機から降り臨時の宿舎へ帰る途中、ドラコ軍曹がフィーナに尋ねてきた。

「すみません。その説はご心配お掛けしました。もう、大丈夫です」

 安室祐一に襲われた事実を表に出さない位には彼女は元の元気を取り戻しつつあった。そんな彼女達が原隊である外人部隊の拠点に復帰する事無く、ラムシュタイン基地に留まっているのにも理由がある。

 ラムシュタイン基地を奪還したとは言っても戦力的に不十分なアースガルド軍ではフィーナが居なければ敵の再襲撃を防げないと判断しているのだろう。

 結果、フィーナをお守り代わりに基地に常駐させる結果となっている訳だが……人間が殆どを占める環境ではフィーナ達、外人部隊は差別と好奇の目の対象にはなる。

「少尉殿? レギンレイヴ凄いですね〜。まるで少尉殿がそのまま話してるみたいな感じでビックリしましたよ〜? 良いな〜、私のもあんなふうにして欲しいなぁ」

 クリムローぜが今日のフィーナのレギンレイヴについての感想を述べてきた。戦局に何らかの寄与があるかは分からないがレギンレイヴには絶えず技術者達の尽力によりバージョンアップが繰り返されていた。

 そして先日ようやく、リップシンクと表情と視線の追従機能が実用化されたのだ。やはり声は聞こえるのに口の動きに違和感があるのは手抜きと感じたのか、技術者としてのプライドが許さなかったのだろう。

 今のレギンレイヴの頭部は自然なフィーナの動きをすっかり再現出来るまでになっていた。眼球を模したカメラ部分も彼女の視線に追従しており、より自然な動きが出来る様に進化を果たしていた。

「は、ははは……」

 これにはフィーナも苦笑いで返す以外には無い。フィーナが白い甲冑を着た姿そのままのレギンレイヴの全身像は、エドワードの金ピカ機体であるオーディンやヴォルフの黒い機体のスルトを簡単に上回っていた。

 派手さで王子の機体を凌ぐ状況はフィーナには不本意過ぎた。しかし、各基地への救援は基地奪回のために現地に展開している現場の将兵達には好評であり、女神だ戦乙女だと士気は上昇していた。

 後はH・A・Wの第二世代量産機であるセイズコナが行き渡れば大規模な奪回作戦にも移れるのだろうが……。

 アースガルド側が戦力の回復の為に攻勢に出られずに居た頃、宇宙においても現状を変えられない事に苛立ちを隠さない者達が存在していた。




 アースガルド星の大気圏を越えた先にある低軌道上に多数のアダムスキー型円盤を多数従えた一際大きな円盤の姿があった。

 プリンス・オブ・マーズと名付けられたその円盤は直径一キロメートルに及ぶ巨大な構造物であり、周囲を固める二百メートル級の巡洋艦クラスの円盤や百メートルにも満たない駆逐艦クラスとは比較にならない位の威容であった。

 その巨大なプリンス・オブ・マーズの艦内にて、まるでコロシアムの様なすり鉢状のスペースがあり、そこで多数のマーズスフィア人に見下される様に中央に立つローグ・シュタイナーこと安室祐一の姿があった。

「それでは、報告を聞こう」

「だが、その前に彼自身の不手際について問い質すべきでは?」

「乗機を失ったばかりか、原住民如きに手傷を負わされるとは……シュタイナー家の名も飾りでしか無いか」

 頭上から聞こえてくる自身を糾弾する声に包帯が巻かれた頭のローグ・シュタイナーは悔しさに顔を歪ませていた。

(くそっ、あと一息のところで……)

 確かにこの手に女神を捕まえたのに邪魔に入られたせいで全てがパァになってしまった。おまけにヘルメットを破壊されたせいで重い酸素中毒にもなってしまった。

 回収された彼を献身的に看病してくれたのはジェシカだったのだ。彼がマーズスフィアに転生して以来、ループ前も含めるとかなり長い人生を送っている安室祐一である。

 しかし、それでも周りがタコだらけのこの異世界を受け入れる気にはなれなかった。

 カッコいいロボットに乗り女の子達にキャーキャー言われる満たされた人生を送るはずが……自分をこんな人生に落とした女神に対し完全な他責思考を抱いていた。


ーダンッ!ー


「聞いておるのかね! ローグ・シュタイナー中尉!」

 安室祐一を見下ろしている責任者の男が机を叩きながら彼を怒鳴りつけた。

「我々は君の能力については高く評価している。君には次なる一手となる部隊の隊長を任せたい。資材を搭載した輸送船がじきに到着する手筈になっている」

 別の高官が安室祐一に新たな任務の概要を説明し始めた。次の目的地はアースガルド王国から離れたかつて魔族達の勢力が拠点としていた現在は荒野となっている見捨てられた土地である。

 マーズスフィア軍はアースガルド星の住民を原始人と侮る姿勢を改め、本格的な侵攻を開始しようとしていたのだった。

「ローグ・シュタイナー中尉。君は部隊を率いて待機処理装置を設置しつつ橋頭堡を築きたまえ。敵からの妨害があれば確実に対応する様に」

 彼に委ねられたのは輸送船五隻と護衛の多脚兵器が百機余りという大部隊であった。多脚兵器は大気圏内での運用を前提に再設計された機種であり、これまでの現地での間に合わせ改修機とは違いアースガルドの環境に合わせられた最新鋭の機体である。

 これらはアースガルド星地上での運用を前提としている為か脚部の推進剤は大きく減らされ単独での第一宇宙速度突破能力は失われているが、反面地上での運動性や機動性、追加武装の装備など戦闘力は大きく向上していた。

「わかりました。必ずや任務を完遂してご覧に入れましょう」

 安室祐一は素敵な笑みを浮かべると高官達に命じられるまま、降下部隊を載せた輸送船へと赴くのであった。

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