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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第七章 人型機動兵器パイロット編
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輸送機の旅

「スヤァ……」

 自室にてフィーナはぐっすりと眠っていた。と、言うよりは泥の様に眠る羽目になったと言った方が正解か。

 昨日は軍曹からの鬼の様なシゴキの被害に遭い、今日は王都へ向かうというのに疲労を積み重ねる結果となっていた。

 フィーナは自身にヒールを掛けるという初歩的な発想も忘れて普通にこの星の住人みたいな感じで生活してしまっていた。

 周囲が魔法を使っていれば思い出すのは容易だが、疲れ果てているフィーナには神力を思い出すまで心理的な余裕が確保出来ていなかったのである。


ーコンコンー


 特に何の夢も見ていないフィーナが幸せそうに寝息を立てているところに何者かがノックをしてきた。

「アインホルン伍長〜? 時間ですワン」

 続けてやや控えめに声を掛けてきている。語尾から察するにいつもの軍曹では無い様だ。しかし

「スヤァ……」

 返事が無い。ただの寝坊助の様だ。 クタクタに疲れ切っていたフィーナの疲労は一晩の就寝では回復していないらしい。

「こるぁ! 基地司令がお待ちなんだぞ! 遠慮せずに叩き起こせ!」

 畳み掛ける様に遠くから声量の大きい声が飛んできた。


ーバアァン!ー


 時間を置かずにフィーナの部屋の扉が勢いよく開けられそして

「アインホルン伍長! 気をぉー付けぇー!」

 桁違いの声量で怒鳴ってきた。そのあまりの五月蠅さに

「はぇ! ……あ……え?」

 たまらず飛び起きたフィーナはベッドの上で上体を起こし辺りを見回している。

「アインホルン伍長! 早く起きんか!」

 軍曹がズカズカと室内に入ってきた。最初に来たと思われる犬耳の整備兵らしい亜人も遠慮がちに後に続いている。

「あ、はい! 起きます! 起きます!」

 突然の来訪者にフィーナはワタワタと慌てながら身支度を整える。壁に掛けられた拳銃用のホルスターを慣れない手付きで取り付けている。

「そんなものはいい! それよりいくぞ! バカモンが!」


ーガシィッ!ー


 軍曹は無造作にフィーナの首根っこを掴むと無造作に引きずり始めた。

「あああああぁ〜っ!」

 抵抗する事も出来ないフィーナは彼に引っ張られるまま基地司令の待つ場所まで連れ去られていくのであった。



 軍曹に引き摺られたままのフィーナは後ろを向いているので何処に向かっているのか分からないまま、基地内にある格納庫のある企画を進んでいた。

 基地内は広く異世界に降りて数日しか経過していないフィーナには目に映るものが初めてのものばかりである。

 基地を行き交う人々も猫耳、犬耳、うさ耳、狐耳、狸耳、エルフにドワーフにホビット、果ては青白い肌の魔族らしき人種やリザードマンに至るまで、異世界の行き着いた世界の一つの形を見せられている様だった。

「ほら、あそこだ。後は自分で歩け!」

 軍曹から開放され進行方向に向かされたフィーナが見たのは

広大な滑走路と巨大な高翼の輸送機だった。そんな輸送機の側にはフューゲル大佐とモニクの姿が見える。輸送機に近付いてくるフィーナ達を見つけたらしいフューゲル大佐がこちらを見ている。

「基地司令! 遅れてしまい申し訳ございませんでした!」

 敬礼と共にフィーナに頭を下げさせる軍曹に対し

「気にするな。まだ荷物を積み込んでいる最中だ」

「ですが、今後は遅れないようにして下さいね」

 フューゲル大佐に続いてモニクに釘を刺されてしまった。

「も、申し訳ございません! ほら! お前も頭を下げんか!」

 すでに下げさせられている頭をさらに下げさせられフィーナは髪が地面に付く勢いで頭を押さえつけられてしまった。

「す、すみませんでした……」

 遅れの原因となったフィーナは輸送機の貨物室へと乗せられそのまま王都へ向かう事となったのであった。



ーゴオオオオオー


 輸送機の格納庫に乗せられたフィーナは軍曹と犬耳の青年と並んで簡易的なベンチに座らされていた。

「王都には二時間余りで着く。到着の三十分前になったら着替えが渡されるから、手早く着替えて基地司令達の居る、客室に上がれ」

 隣の軍曹からフィーナの今日の行動の指示が伝えられた。着替えの事など何も聞いていなかったフィーナは驚きの声を上げたが、彼女が寝坊したから事前の説明の時間が無くなってしまった事を詰められる結果になってしまった。

「あの、私はどなたかが迎えに来てくれると聞いていたんですけど……」

 なんとなく腑に落ちないフィーナが反論を試みるが

「だからと言ってギリギリまで寝ているヤツが居るか!」


ーガシッ!


 軍曹はフィーナの頭を掴むとそのまま力を加え始めた。アイアンクローを掛けてきた軍曹に対しフィーナは

「痛い痛い痛い! 申し訳ありません! 全面的に私が間違っておりましたーっ!」

 軍曹の手を何とか外そうとするフィーナだが、彼女の細腕では軍曹の手はビクともしない。足をジタバタと動かしながら悶え続けるフィーナに対し

「分かれば良い。次からは気を付ける様にな」

 軍曹は意外とすんなり開放してくれた。

「あの〜、アインホルン伍長?」

 軍曹とのやり取りが一段落したフィーナに反対側に座っていた犬耳の青年が話し掛けてきた。

「あの、僕は機付長のマイク・ゴーマン兵長です。よろしくお願いしますワン」

 遠慮がちに話し掛けてきたマイクは少しオドオドしている様だった。その空間には彼より階級が高い者しか居ないので緊張するのも無理は無い。

(…………)

 普段から周りに先輩や上司ばかりで気を使っていて、何となく彼に親近感を感じてしまったフィーナは

「あの、そんなに緊張なさらないで下さい。私の方が後輩なんですから……」

 慌ててマイクのフォローに入る。それを横目で見ていた軍曹が

「人との接し方は人それぞれだが、部下に侮られん様には気をつけろよ?」

 一言助言をしてきた。命のやり取りがメインの軍隊では優しさだけでは人付き合いは成り立たない。上に立つ者はいつか本人にも不本意な命令を下さなければならない非情な現実に直面する事もあるのだ。

「は、はい」

 フィーナは軍曹の言葉に素直に返事した。彼の言う事は分かるがいきなり性格を矯正するのはフィーナにも難しい話ではある。

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