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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第六章 悪の女幹部残業編
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時間稼ぎ

 フィーナが空中で魔王の居場所を探してウロウロしていると

「アギャー」

 地上に放置していたサラマンダーが手持ち無沙汰になったのか、フィーナの元にやってきた。魔王を探し疲れたフィーナが

「サラマンダーさん、魔王さんの居る場所分かります?」

 サラマンダーに尋ねてみると彼は首を縦に振って応えてみせた。フィーナはサラマンダーの頭に乗ると

「すみません、案内して貰えますか? 中々見つからなくて……」

 サラマンダーに魔王の元へ連れていってもらえる様にお願いするとサラマンダーはすぐに地上のある一点に向けて高度を下げ始めた。


ーズシン!ー


 程なくしてサラマンダーは無事着地。魔王の野営地に到着したのだった。

「リリスか、随分久しぶりだな」

サラマンダーの頭に乗っているフィーナを見上げる様に、玉座に座った魔王が声を掛けてきた。


ースタッー


フィーナほ地上に飛び降りると、流れる様に片膝を付いて頭を下げる。

「魔王様、王城よりルリア姫を拐って参りました。これで勇者が目の色を変えてこちらにやってくるはずです」

 魔王には事後報告になってしまったが、 これでフィーナの役目は十割終わったも同然である。後は魔王と勇者が戦えば全てが終わる……。

「……で?」

「え?」

 予想外の魔王の反応にフィーナは意味が分からなかった。普通、宿敵が向かってくると聞いたら『よし、迎え討つぞ!』みたいな反応が返ってくると思っていただけにこれ以上何を話せば良いのか見当がつかなかったのである。

「勇者が来るのは分かった。それでどう迎え討つのかを聞いておるのだ」

 魔王の口調は心無しか厳しくなっている様に思える。フィーナが答えに詰まっているのを見た魔王は

「リリス、よもや貴様……我に勇者と戦えと言うつもりではあるまいな?」

 なにやら魔王が詰問口調になってさている気がする。魔王と勇者が戦うのは太陽が東から昇り西へ沈む事と同じ位に当たり前の事だと考えていたフィーナは

「そ、そうですけど……?」

 それがさも当然という口調で答えるしかなかった。彼女にはなんで自分が詰問されているのかさっぱり分からなかったのだ。

「姫を拐ったのは貴様だ。勇者は貴様が始末して見せよ」

(え? え? ……え?)

 魔王から発せられた予想外の言葉にフィーナはパニックになってしまっていた。

 しかし、種を撒いたのはフィーナ自身であり、魔王が命じたわけでもないのに独断でルリア姫を誘拐し勇者を焚き付ける真似をしたのは他ならぬ彼女である。

 魔王からしてみれば部下が勝手に動いた挙げ句、手に負えなくなったからと丸投げされている様なモノなのだ。

「そもそも、貴様は労力の割に戦果が少ないのだ! ガーゴイル達の使い方は荒い! 人間共も殆ど取り逃す有り様ではないか!」

 なにやら、過去の話までほじくり返して叱責され始めた。魔王の立場としては、本当に必要最低限な目標しか果たさないフィーナの仕事ぶりには思うところがあったのかもしれない。

「シトリーの妹だと言うから取り立ててみれば……。よいか、我はこの様な戦果を得る為に貴様に軍を預けたのではない。結果を出せ」

「も、申し訳ございません」

 フィーナは立ち上がると、サラマンダーを伴って再び上空へと逃げる様に飛び上がっていった。

(う〜ん……)

 上空から眼下の魔王軍を眺めながらフィーナは頭を抱える羽目になってしまった。どう考えても勇者と魔王がぶつかる前に自分が勇者と戦わなければならなくなってしまった。

 仮に自分が勇者と戦ったとして、一騎打ちなら簡単に勝てるだろうが四対一では……特に勇者パーティーの聖職者は油断出来る相手では無い。悪魔の身体な今のフィーナには天敵とも言える相手であった。

(違う違う! そうじゃなくて……!)

 ついつい自分が勇者達に勝つ方法を考えてしまったが、フィーナが勇者相手に勝ってしまったら魔王を止める者が居なくなり、本末転倒になってしまう。しかし、あの勇者ユートに負けるのは……

(…………)

 誠に遺憾であるし非常に不本意で気が進まないのが本音だが、天界が望む歴史の為には負けるしか無い。しかし、何の準備も無しに負ける訳にはいかない。

 今のフィーナも死ねば天界の転生課のコンベアに直行なのだ。もし、転生課でピックアップして貰えなければコンベアさんの気分次第となり、どこの転生先に送られてしまうか分かったものでは無いのである。

 異世界の様な下界での死は天界の者にとって無能の証の様なモノであり可能であれば避けたい位には恥ずかしい事ではある。

(レアさん、聞こえますか? レアさん?)

 フィーナは頼みの綱である天界のレアとの交信を試みる。 下界での死も身内で内々に片付けてしまえば大した問題にはならない。

精々報告書程度の些事となる。

(あら、フィーナちゃん? どーしたの〜? 今、そっち見てるわよ〜)

 フィーナの祈りは天に届いたらしくレアから念話が返ってきた。それもリアルタイムで確認してくれているらしい。フィーナが早速、自分が勇者と戦わなければならなくなった事実を伝えると

(分かったわ。安心して負けてちょうだい! あなたの魂はきちんと受け止める様に転生課に伝えておくから)

 とりあえずひと安心、半分ガッカリなレアからの返事が返ってきた。出来れば、自分と勇者の戦いすら回避出来る方策をレアが考えてくれないかと密かに期待していたのだが……現実は非情である。

(は、はい。ありがとうございます……)

 レアの念話に返事をするフィーナの声はどこかガッカリした様な気落ちした弱々しい声となった。

(後は……)

 残る心配事はルリア姫とセシル達の、自分が死んだ後の身の振りである。レアに伝えて仕事を引き継ぐにしても最低限の道筋は付けなければ本当に無能になってしまう。

しかし、自分亡き後頼れる者となると……

「アギャ?」

一緒に空を飛んでいるサラマンダーと目が合った。 シトリーやグリンブルスティ、死神は無理かもしれないが彼なら大丈夫かもしれない。

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