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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第四章 シャーロット編
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奴隷オークション

 オークションの日取りを聞かされていたフィーナだったが、件のオークションが開かれたのは話通りとはいかずフィーナが異世界に降りてから二週間後となった。

 当日フィーナは手枷足枷を付けられたまま鉄球もそのままでオークション会場の控室へと移動させられていた。鉄球の下には台車が設置されなんとか自力で移動する事は出来るのだが歩き辛い事この上なく、とてもじゃないが脱出出来そうな感じでは無い。

 控室にはフィーナの他にも何人かの女の子がおり、どう見てもオークションに出品させられる商品であった。

 控室は奴隷商の男達が目を光らせていて仮にフィーナが鉄球をどうにか出来たとしても、建物の外まで逃げられる様な気はしなかった。

 この状況からシャーロット・マールブルグの行く先の貴族の農奴になるというミラクルを決めなければならないのだ。

 フレイアからの連絡は全く無く、こちらから念話をしようにも神力がゼロなのでフィーナからは打つ手無しといった状況だった。

(これ……研修じゃなくてパワハラですよね)

 問答無用で殺されないだけまだ有情ではあるが、 見ず知らずの異世界に放り出されて行動の自由も取り上げられた状態で正解を見つけろなんて言うのはクソゲーも良いところである。コマンド総当たりのアドベンチャーゲームより性質が悪い。

(……とりあえず周りの話し声聞いてみますか)

 とりあえず、出来る事はなんでもしておかなければならない。フィーナは数少ない物音の中から有益な情報が無いか探ってみる事にした。

(…………)

 控室の中は静かなもので見張りの男達の雑談程度しか聞こえてこない。一方、隣のオークション会場は段々と人が集まってきたらしくガヤガヤと雑談らしい声が聞こえてきた。

「今日のオークションにはいい娘が揃っているといいですなぁ。私は断然胸が大きな娘狙いですぞ」

「ほう、それはそれは……。私は大いに甘えさせてくれる様な大人の色気と言いますか。家庭教師の様な娘が居れば……と」

 ちょっと聞き耳を立てただけでこれである。

 オークション会場は貴族達の性癖自爆合戦の様相を呈してきていた。場所によってはぽっちゃり派とデブ専の骨肉の争いが発生していたり、一方では脚線美について熱く語るグループがあったりと、この国の行く末が心配になってくる地獄絵図であった。

(うわぁ……)

 悪い意味での貴族の社交場を目の当たりにしたフィーナが頭を抱えながら聞き耳を止めようとしたその時

「ナッサウ公、マールブルグ家の後始末は大丈夫なのでしょうな?」

「ご心配には及びません。一人娘も私が保護の名目で引き取る事になっております。再興の芽などありますまい」

 唐突に聞こえてきた転生者の家名にフィーナは心臓が止まる思いがした。確か転生者であるシャーロットの家名はマールブルグであり、権謀術数を駆使して王子に近付いていたはずである。

 だが元々の歴史では事情は知らないが無能な部下に腹を立てて憤死。転生者である半魚人大川成美が関わってから歴史が早まったはずである。

 フィーナの研修目的はシャーロットに信仰心を芽生えさせる事なのだから、とりあえずは彼女に接触しなければならない。 普通ならこんな偶然百に一つも無いだろうが、これは仮にもフレイアが設定した正規の研修である。最初から詰んでいるクソゲーの様な研修であるはずが無い……と信じたい。

(…………)

 とりあえずナッサウという貴族に落札されれば良し。もし違ったとしても隙を見て逃げ出せばなんとかなりそうではある。当座の目標が明確になったフィーナはようやく気が軽くなっていた。

「会場にお集まりの皆様、それではこれよりオークションを開始致します! 本日も厳選した一級品を御用意させて頂きました! 商品のラインナップは以下の様に……」

 会場から軽快なトークと観衆からの歓声が聞こえてきた。その声量からすると会場の広さもお客の数もかなり多いのかもしれない。

 フィーナは自身の経験から当てはめてこの人身売買行為が非合法なもなかと考えていたが、もしかしたら合法な組織であり法律的に裏打ちされたオークションであるのかもしれない。

(う〜ん……)

 辺りを見てみるが同室の女の子達の表情は暗い。種族も人間だけでは無く亜人種の姿もちらほらと散見される。

(神力があれば彼女達に幸運が付与出来るんですけどね……)

 フィーナは今更ながら、どうしょうもない事を考えていた。神力が全く無い彼女にはどうする事も……


ーブン!ブン!ブン!ー


 フィーナは唐突に天井に向けて両手を振り始め心の中で念じ始めた。

(フレイアさん! レアさん! どうか気付いて下さい! 彼女達にどうか幸運を与えてあげて下さい!)

 念話は相手には通じていないはずだが、相手が万が一にでも回線を繋げていればワンチャン聞こえている可能性がある。

フィーナは天界の二人が気付く様にかなり大振りに両手を振り続けた。傍から見たら絶望のあまりおかしくなっちゃったエルフでしかない。

「お……おい、お前ガチャガチャうるさいぞ! ジッとしてろ!」

 無言で一心不乱に両手を振り続けるフィーナの姿に恐怖を感じたのだろう。見張りの男が声を掛けてきた。しかし、必死なフィーナは男の声に注意を向けていない。一縷の望みに縋って天に祈る気持ちで腕を振り続ける。

「お前、大人しくしろ!」


ーグイッ!ー


「わっ!」

 フィーナは手枷に繋げられている鎖を男に掴まれ、それを天井から伸びる鎖に繋げられてしまい両腕を吊り上げられてしまった。

「もう騒ぐなよ? 大事な商品なんだ。怪我なんかされちゃ困る」

 男はそう言うと定位置へと戻っていった。両腕を吊り上げられたフィーナは改めて周囲の視線に気が付いた。

部屋中の女の子達の全員が奇っ怪なモノを観る目でフィーナの事を見ている。口には出さないものの全員が『うわぁ……』といった感じのドン引きな目で見ていた。部屋中の冷たい視線に耐えられなくなった彼女は

「あ、あはは、あの……神様にお祈りしてたら熱が入っちゃいまして……」

 この状況で神頼みを宣言するのは部屋の雰囲気からして少々タイミングが良くなかった。

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