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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第三章 小田信永編
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誘拐阻止の方策

 玉座の間からディアナの自室に場所を移したフィーナ、シルフ、ジーの三人は部屋に着いて早々に意見の対立が始まっていた。

「だ〜か〜ら! ど〜して分かってくれないの? 私はこの目で見てこの耳で聞いてきたんだから〜! 被害が出てからじゃ遅いでしょ!」

 すぐに地の部族の集落に乗り込んで誘拐未遂の罪で族長達をしょっぴこうというのがシルフの意見だ。

 実際に密会の現場も目撃している為か彼女の鼻息は荒い。

 今すぐにでも敵陣にのり込み、全員風魔法で輪切りにしてきそうな勢いである。

「しかし、一部族の族長がそんな事をするもんかのぅ……? ユニコーンの件も含めて内偵をしてからの方が良いのではありませんかな?」

 対するジーは今すぐに動くのは時期尚早という考え方だ。誘拐に外国人が絡み、それらの手引もしていると明るみになれば、地の部族は他部族からは村八分の様な状態となる。

 こちらが何もしなくてもいずれは自滅していくだろう。

 また、ユニコーンの密猟の件も含めてきちんと証拠固めをしていくべきという、いわゆる慎重な考え方をしている。そして肝心要のフィーナの考えは

「……今夜から村の護衛に向かいます。民の誘拐など許されません」

 猪突猛進に近い超現場主義であった。自ら現場に居合わせ誘拐現場を押さえる。

 その足で黒幕まで一網打尽……とか考えているのたろう。しかし

「いやいやいや! 護衛ってどの集落に行く気? 集落なんて地の部族以外に五つもあるのよ?」

 シルフの言う通り、部族は火・水・風・地・光・闇・森の七つが存在する。城に住んでいる光の部族であるディアナ達はまず大丈夫としても、他に無防備な部族が五つある事になる。

 村の護衛と言ってもフィーナはどこに行くつもりなのだろうか……?

「なりませぬ! なりませぬぞ! ディアナ様!」

 ジーはフィーナの考えに大変お冠である。最早どこの村に行く以前の話となってしまった。

 彼からすればさっきの説教を全く聞いていないも同然となるフィーナの主張だからである。

「ですが……」

「いけません! なりません! ディアナ様は御自身の立場を軽くお考えなのです! ハイエルフというのは現人神であって精霊神様が遣わした……」

 食い下がるフィーナにはジーからのお説教に加え、エルフ達にとっての宗教とも言える精霊達の神話についての話へと移っていくのであった。

(…………)

 人間の世界で信じられている神と違えど、この異世界の神は結局は女神レアなのだ。

 身近に神様が居るフィーナに神話などの話を聞かされても……と言うよりフィーナ自身も一応女神の端くれである。

 女神に神話の話など釈迦に説法と言えなくもないだろう。

 もしかしたらフィーナとディアナやエルフィーネの外見が似ているのはレアが何かしらしているのかもしれない。が、今考えた所で詮無い事でしか無い。

(今はそれどころじゃ……)

 考えが明後日の方向に逸れてしまったフィーナは慌てて喫緊の課題に心を定める。

「ドライアードさん、いらっしゃいますか?」

 フィーナは頼れる森の精霊、ドライアードを呼び出す事にした。

 森の中を常に監視出来るドライアードであれば誘拐目的の不審な一団は察知できるはず。


ーパアアァァァー


 光とともに形作られていく森の精霊はフィーナにとって絶対の安心感があった。

「……お話は一部始終聞かせて頂きました。地の部族の族長の監視、並びに不逞外国人への警戒ですね?」

フィーナが何かを伝えるより早くドライアードは分かってくれていた。

 身近な風の精霊にも見習って欲しい所である。そんなフィーナの心情を察したらしいシルフが

「なんか腹立つ!」


ーギューッ!ー


「いたたたたた!」

 フィーナの長い耳を徐ろに引っ張ってきた。

「シルフさんごめんなさい! 私が間違ってました! だから放して下さーい!」

 一国の王女がこれほど痛がっているというのに、こういう時に限ってジーは何もしてこない。

 むしろ孫達のじゃれ合いを見守る祖父の様な笑顔でフィーナ達のやり取りを眺めている。

  こうしてフィーナの意向は通らずこの日の夜はドライアードによる監視と警戒という対処だけで終わるのであった。



 一方、その頃のディアナ達はと言えば北方のヘンリック魔導国への旅路の最中であった。

 女の子が多いパーティーだけに街道を進むに当たって一つの問題が顕著に現れ始めていた。それは

「お姉ちゃん達〜、俺達とパーティー組まないか〜い?」

 道行く冒険者達から掛けられる勧誘の嵐である。特に人気なのが意識せずお姫様然としているディアナであった。

「わ、私は駄目です。あなた方とは行けません」

 現時点でザックに心を寄せているディアナが行きずりの冒険者に靡く事など万に一つも無いのだ。

 しかし、物腰柔らかく断る彼女の仕草は男達を引き寄せてしまうらしい。

「フィーナはうちの要なんだ。スカウトならこいつ連れてっても良いぜ?」

 冒険者に言い寄られているディアナを助けるザックの姿もすっかり日常になってしまっていた。

 ディアナの他にも人当たりの良い猫族のレイチェルなんかも声を掛けられる事が多く、魔術師という職業も手伝ってかイレーネもハーフエルフのアリッサも勧誘され通しだった。

 そんな事が続いたせいか彼女達は言い寄ってくる男達が冒険者なのか盗賊なのか追い剥ぎなのか強盗なのか、逐一確認する事に気が回らなくなってしまっていた。そんなある日

「きゃあぁぁぁ!」

 いつもの勧誘かと思って対応していたディアナがあっという間に男達に抱え上げられてしまっていた。

 パーティーの後ろを歩いていたディアナの異変にザックが気付いたのは彼女の悲鳴を聞いて初めてだった。

 普段のフィーナなら多少の相手などに遅れは取らないと思っていたのが裏目になってしまった格好だった。

「こんな珍しいエルフなら高く売れるぜ〜!」

「さっさと逃げるぞ!」

 しかし、男達が逃げ出すより早くイレーネはすでに魔法を完成させていた。

「マジックミサイル!」

 彼女が放った魔力の飛翔体とサラマンダーの自発的な攻撃により、 男達は逃げる間も無く無力化されてしまっていた。


ードゴオッ!ー


 ディアナを抱えていた男にもマジックミサイルが命中し

「うぎゃっ!」


ーガシッ!ー


「あ、あぶねぇ。大丈夫か? フィーナ?」

 男が取り落としたディアナはザックによってスライディングキャッチがなされた。

「は、はい……。ありがとうございます。ザック様……」

 これによってディアナは益々ザックへの想いを募らせていってしまうのだった。

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