表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第三章 小田信永編
312/821

終わらない勘違い

 ジーの説教が終わり改めて玉座に着いたフィーナはドライアードからユニコーンの密猟者に関するレクチャーを受けた。

 密猟者の素性は恐らくではあるが、不法入国してくる他国の冒険者達であるらしい。ドライアードの主観ではあるが彼らは再犯している者が多い様だ。

 ユニコーンは獰猛で逃げ足も早く捕まえるのは困難なはずなのだが密猟者達は簡単にユニコーンを捕まえて角を切り落とし国外脱出してしまうらしい。

 密猟者のせいでユニコーンが天寿を全うする事が少なくなり、ユニコーンの亡骸から回収した角での生計を立てていたエルフ達の生活も圧迫されている様だ。

 ユニコーンの角はグリンウッド国にとっての貴重な外貨獲得の手段であり、コレ以上の放置は黙認できない所まで来ている……というのが、ドライアードからの説明を聞いたフィーナの結論だった。

 しかし、不思議な事に密猟者に対する策は何も取られておらず、ほぼ黙認されている状態でしか無い。毎朝開かれている朝食会でもそんな話はまるで聞いた記憶が無い。

(私が口を出しても大丈夫でしょうか……?)

 可能ならユニコーン達を密猟者達から守りたい。ディアナ王女もユニコーンに懐かれていたと聞いた事があるから、彼らが危機に瀕していると知っていれば見て見ぬふりはしない様に思う。

 であるなら、ディアナ王女の代わりにドライアードを通じて森の声を聞く事が出来る様になった自分の責務と見て良いだろう。

(明日の朝食会で族長の皆さんの反応を見てみましょうか)

 フィーナは玉座に座り、一人考えに耽っていた。 自分の目的は小田が歪ませる未来の歴史の修正である。

 それがエルフの国の問題解決にまで及ぶとは思ってもみなかった。せめて、この変化が世界の歴史がより良い方向に進む事を祈るばかりである。

(そう言えば……)

 ディアナ王女は無事に過ごせているたろうか?可能であれば今すぐにでも帰ってきて欲しいのだが……。

 少しの間シルフと過ごして解ったが、このシルフを放流してもディアナが帰ってくる気がしない。

 なんかシルフも一緒になって外国での生活をバカンス気分で楽しんできそうな気さえする。

 ディアナ王女の様子を天界から確認してもらえたらフィーナも安心出来るのだが、何でかは分からないが連絡したところでフレイアに怒られる予感しかしない。

 今はアドレスをブロックしてあるから静かだがいつ何時フレイアにどやされるか分かったものでは無い。

「はぁ……」

 思わず溜め息を漏らしてしまった。先行きは不安だが一つ一つ問題を解決していく以外には無い。

「でも不思議よね〜、あなたがユニコーンに懐かれるなんて」

 フィーナの近くを飛び回るシルフが本当に不思議そうにフィーナを眺めながら感想を述べていた。

 ドライアードからの情報だが、普段は気性の荒いユニコーンも、唯一生娘には心を許すのだという。

 それを踏まえるとシルフがフィーナの事をどう見ていたかが自ずと見えてくる訳だが……その事を怒るべきか誇るべきか照れるべきか、フィーナはさっぱり分からないでいた。

 だがよくよく考えてみると尻軽と見られていたのであればやはり怒るべきなのかもしれない。

「シルフさん! どういう意味ですか! 私はまだそういう事は……」

「いやいやいや、普通好きな人くらい出来んでしょ? そういう人も居なかった訳?」

 シルフに好きな人と言われたフィーナは思わずアルフレッドの姿を意図せず思い出してしまった。

(ななな、なんで? どうして? わ、私は何を考えて……!)

 フィーナは真っ先に思い浮べたアルフレッドの事を思い出した自分に真っ赤になってしまった。

 自分で自分の思考が解らずに一人でアワアワと焦ってしまっている。そんなフィーナが面白いのかシルフは追撃の手を緩める事は無かった。

「でも、あなた運が良かったわよ。生娘じゃなかったらユニコーンに蹴られてたどころじゃなかったんだから〜♪ 良かったわね、いくどこまでいってなくて」

 シルフは狼狽えるフィーナが楽しいのか話題を変えようとはしない。

「あ、あの……その人にとっての私は保護者みたいなものなんですから、前提が間違ってるんです! 最後までいく訳無いじゃないですか!」

 フィーナは恥ずかしがって下を向いているが顔は真っ赤なままだ。

 シルフはディアナ以上に面白い玩具を見つけたのが嬉しかったのか、世話係のジーか戻ってきてもフィーナを弄り倒すのを止める事は無かった。




 一方その頃、ザック達と行動を共にしていたディアナは当初の予定通りガイゼル王国の北方に位置するヘンリック魔導国への旅路に着いていた。

 ディアナは斥候役でもあった為、ビリーと一緒に最前列を任されていた。

しかし、道中こちらに気付いていないゴブリンを気付かせてしまう失態を犯してしまいビ、リーと一緒に隊列の中心に居る様ザックに指示されてしまっていた。

 街道での遭遇戦となった戦いだったがザック達が大人数な事、前衛役となる人員が揃っていた事もあって危なげなくゴブリン達を退ける事が出来た。

 結局隊列は鋭敏な感覚を持つ猫族のレイチェルが務める事とし旅が再開される事となったのだが……

「フィーナ、お前……本当に大丈夫か? なんだか顔も赤いし、調子悪いならローズに診てもらえよ」

 ディアナは最後尾に付いているリーダーのザックから心配される有り様となっていた。また

「ビリー、お前も斥候なんだからフィーナにおんぶに抱っこじゃなく自発的に判断しろ」

 あんまり成長の色が見られないビリーも一緒に苦言を呈されていた。



 そんな状況を天界から見ていたフレイアは苛立ちを覚えていた。

 ゴブリン程度に遅れを取り、現地民にダメ出しされるディアナに対してである。当然

「こらぁ〜! フィーナ三等兵! 貴様何やっとるかぁ〜!」

 気分の赴くままにフィーナを叱りつけるのだが、声が届く相手は

「ひっ!」

 普通に本当のフィーナである。アルフレッドの事で思考がテンパっている状況でシルフから弄られの真っ最中に新手を捌ける冷静さなどフィーナに期待するだけ無駄である。

「な、なんですかいきなり! こっちは取り込み中なんですから後にして下さい!」

 現地ではシルフに弄られ頭の中では天界からのフレイアの叱責が響き、フィーナにとっては修羅場となっていた。

 おおよそ上司に対する言葉使いとは思えないフィーナに対しフレイアは

「男に現を抜かしている場合か馬鹿者がぁ! 今の自分の役割を自覚しろ!」

 天界からフレイアが見ているディアナはイレーネに寄り添われて顔を赤くしながら歩いている。

 ゴブリン達との一戦でディアナがザックに助太刀される一幕もあり、フレイアの目から見てもディアナはザックに心を奪われている様に見えていた。

 そんな光景を見せられているフレイアには思春期の若者達の色恋話を見せられている感覚に近く非常に歯痒かった。

「なんですかフレイアさんまで! わ、私は彼の保護者なんです! そんな事考えるはずないじゃないですか! ふ……不潔ですよ不潔!」

 冷静さを取り戻す機会の無いフィーナはフレイアへの返事をさっきから口に出してしまっている。

 フィーナの傍でフィーナを見ていたジーは

「ディアナ樣……お気持ちをお鎮め下され。シルフ、お前はまたディアナ様をからかわれたのか?」

 シルフに対してお説教モードに入りつつあった。対するシルフも

「私は王女様にユニコーンに慕われていた事を褒めただけですー。王女様がこんな事になっている理由なんかわかりませーん」

 全力で丸投げの体制に入っていた。一方で天界にてフレイアの頭の上からディアナの様子を見ながらフィーナからの返答を聞いているミレットは違和感を覚えていた。

(なんか話が微妙に噛み合ってない様な……ニャ)

 ここでミレットがフレイアに自身の考えを伝えれば良かったのだが天界の仕事に疎い彼女は口を挟む事を遠慮してしまったのだ。

 こうして彼らの誤解は解ける事なく、フィーナにとっての地獄の時間は続いていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ