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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第三章 小田信永編
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生活改善計画

 樹の椅子に座らされる事半日、ようやく玉座から開放されたフィーナは自室のベッドで疲れた腰とお尻を癒していた。

 ドレスのままうつ伏せになり枕に頭を埋めてベッドと枕の柔らかさを全身で堪能していた。

 女神の身体だけにお尻に持病を誘発してしまう可能性は全く無いが、これではディアナの将来も心配になってきてしまう。

(なんとか、クッションの導入を認めさせないと……)

 フィーナはジーやシャーロッテへの説得を心に強く願う。ベッドやソファーが自室に普通に置かれている以上、そういった物を毛嫌いする文化では無いはずである。

 どちらかと言うと、フィーナからしてみればエルフとしての伝統や威厳、要は見てくれを気にしている様に思えるのだ。

 確かに玉座に置かれている樹の椅子にクッションはどう見てもミスマッチかもしれない。

 しかし、ディアナ王女のお尻の尊厳が掛かっていると言えば、ジーもシャーロッテも分かってくれる……と、信じたい。

 妙齢なエルフの王女様が腰の痛みに悶える姿を顕にする事こそエルフの国の沽券に関わるのではないかと強く思う。

「くぉらぁ〜! 王女様がなんてだらしない格好してんのよ〜! 弛んでるわよ! 弛んでる!」

 ベッドに寝そべるフィーナを目ざとく見つけたシルフがここぞとばかりに注意をしてきた。

 確かにあのディアナ王女であるなら、常日頃から自分を律しきちんとしているかもしれないが、自分には常に王女様モードでいられる自身は無い。

「私にはずっと王女様でいっぱなしなんて無理ですよ〜、少しくらいだらけても……」


ーギューッ!ー


「いたたたたた!」

フィーナがシルフの方も見ずにボヤいた時にはシルフによってフィーナの耳が全力で引っ張られていた。

「あなたは王女様の代わりなの! ちゃんとしてなきゃバレちゃうでしょーが!」

 シルフが言うにはフィーナには王女としての自覚が足りていないらしい。

 そんな事では今にバレてしまい、ディアナをどこへやったと詰められても仕方がなくなってしまう。

 王女に成りすました罪により森中引き回しの上、打ち首獄門されるだろうと脅してきた。

「それなら、王女様の耳を引っ張ってるシルフさんも重罪ですよね? 不敬罪不敬罪」

 フィーナがそんな正論を言ってみたところでシルフに通用するはずもなく

「うるっさいわね〜! あなたはディアナ樣じゃないんだからいーの!」


ーぼかっ! どかっ! ばきっ!ー


「あたっ! いたっ!」

 フィーナは頭にシルフからの殴る蹴るの理不尽な暴力を受ける亊になってしまうのだった。



 一方その頃、ガイゼル王国の冒険者ギルドにてザック達パーティーとフレデリカ達パーティーと知り合っていたディアナは

「フィーナさん、もしかして初めての場所では借りてきた猫みたいになる口ですかニャ?」

「そういう時はうちのリーダーを見習って下さい! 不安な時でも顔に出さずに一生懸命我慢してるんですから!」

 新人オーラを出しているのを猫族のレイチェルとハーフエルフのアリッサに見抜かれてしまい、ディアナは両サイドをガッチリ二人に固められてしまっていた。

「あ、あの〜……」

 苦笑いでやり過ごそうとするディアナに対し、右からレイチェルが

「ほらほら、このギルドの名物ですニャ!」

 肉の串焼きを薦められ、左のアリッサからは

「ほらほら、グイーッと!」

 ジョッキに入った葡萄の果実酒を薦められ小さくなっているディアナに無理やり摂取させるのだった。

 これらは特にディアナのハイエルフとしての在り方に何らかの問題となる訳では無い。

 しかし、彼女の肉食や飲酒がエルフの国の老人達に知れてしまったら……それも、強引に食べさせた事が知られでもしたらレイチェルとアリッサの命は無い。

「そーいうのは、上品に食べちゃ駄目ですニャ! ガブッ! グイーッ! ブチン! ですニャ!」

「飲み方はこうです! んぐっんぐっんぐっ……ぷは〜ぁっ! かぁ〜! これですよ!」

 エルフの王女に禁忌を犯させる大罪を犯してしまった訳だが、二人はそんな事実は知る由もない上に更に罪状を積み上げていく。

 そんな彼女達の悪ノリは、あまり広くは無いガイゼル王国の冒険者ギルドではかなり目立ってしまっていた。

 余所者に近いザック達が我が物顔で騒いでいるのをこの冒険者ギルドの主とも言える者が放っておくはずも無く……

「おう! おめーら! 随分楽しそうにしてんが見ねぇ顔だな。どこギルドだ?」

 戦士風の大男がザック達のテーブルにやってきた。スキンヘッドに顎髭を生やした二十代後半と見られるその大男は、ほぼ裸体の筋肉ムキムキの変態マッチョマンだ。

 ベルトに金属の胸当て程度しか無い動きやすさを最優先にしているであろう装備を身に着けた蛮族風な大男だった。

 お前らどこ中?みたいな事を言われても返答に困るのだが、一応のリーダーであるザックが返答をする前に


ーガシッ!ー


「ニャッ?」

「わぁっ!」

大男はレイチェルとアリッサの二人の首筋を掴むとそのまま持ち上げ席から立たせてしまった。

「ここにはここのしきたりってモンがある。そいつは教えてやらねぇとな」

 大男の迫力にディアナはもちろんザック達も下手に動けずにいた。

 なぜなら大男の冒険者証はオレンジだからであり、明らかにザック達より格上の存在である。

「ギルド内では争い事はご法度でしょ!」

 イレーネが正論で大男を牽制するも

「争い? 俺は何もしちゃいねぇぜ? 世間知らずのお嬢さん方にご指導ご鞭撻しているだけだ」

 確かに争いと呼べる段階まではまだ発展してはいない。現にギルドの職員達も見て見ぬふりをしている。

 遠く離れた彼らのみならずザックやイレーネも格上相手には下手に動けず、ビリーなんかは既にゴソゴソとギルド外に逃げ出していた。

 新人冒険者であるフレデリカパーティーは言うに及ばず、特に一番近くで大男と向かい合っているディアナなどは大男の迫力にすっかり怯えてしまっていた。

 そんな中彼らの様子を苛立ちを隠す事無く眺めている者達が他にも居たのだった。

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