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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第二章 ザック編
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水攻め

 フィーナ達は砦の様子を伺いながらイレーネの魔法の準備が完了するのを待っていた。そろそろ太陽が東の空から昇ってきてしまう。

 オーガ達が早起きする健康的な習性をしているかは分からないが、早朝の奇襲を仕掛けるならそろそろ丁度良い時間となる。

 夜間はある程度警戒する事はあっても明け方まで気張って警戒する者はそうは居ないものだ。その時


ーシュババババ……パンッ!ー


 イレーネ達が居る山の山頂付近から何かが煙を吹きながら空へ昇ったかと思った次の瞬間、花火の様に破裂したそれは明るく空を彩った。

(ウンディーネさん、お願いします!)

 フィーナは上空のウンディーネに集めた大量の水を砦に落とす様に要請した。

 彼女の指示の下ウンディーネは巨大な水の塊ごとゆっくりと降下を始めた。

 本当にこのまま落としてしまって大丈夫なのかと思案しつつも、遠距離から俯瞰して見ているイレーネが判断したのだから大丈夫だろう。

 フィーナはウンディーネに作業を進めさせる。そして


ーザバァァァン!ー


 ウンディーネの水の塊は直下の砦に向けて全て落とされた。直後に多数の足音と唸り声の様なモノが聞こえてきた。

「ウオオオオッ!」

「ナンダ、コノミズハ!」

 砦の中に潜んでいたオーガ達が何事かと外に出て来た様だ。

 その時フィーナ達の頭上を一本の稲妻が砦目掛けて飛んでいくのが見えた。


ードドオォォォン!ー


 直後に大きな音と地響きが周囲に響き渡った。

「グオオオオォォォ!」

「ガアアアアァァァ!」

「ガアアオォォォ!」

 同時に聞こえてくるオーガ達のものと思われる悲鳴が砦の外にまで聞こえてきた。

 しかしそれらも一時的で、ライトニングボルトが命中した直後以降は水をうった様に静まり返ってしまった。

 デビット達も砦の中の様子を覗っているが、何の物音も聞こえてこない。

 彼らは痺れを切らしたのか魔導士のジェームスに砦の扉に向けてファイアーボールを撃たせた。


ードーン!ー


 火球は砦の扉に当たると大きく爆発し、内側の水量に耐えられなくなったのか


ードガアッ!ー


 正面扉は亀裂が走ったと同時に砕け散り


ートドドドドォーッ!ー


 大量の水とともに山の下に向かって押し流されていった。焼けただれたオーガ達の死体も水と共に何体かが山肌を転がり落ちていく。

 ザック達は水の流れに巻き込まれない様に身をかわしながら流れ落ちていくオーガ達を呆然と眺めていた。

「……俺はイレーネとは絶対に喧嘩はしない」

 ザックが独り言の様に呟くとガイもビリーも彼の言葉に同意する様に頷いていた。

「よし、水が止まったぞ、突入する!」

「腕が鳴るぜ!」

 水の勢いはすぐに弱まりデビット達は砦の中に突入していく。

「俺達も続くぞ! 敵はオーガだ、気を抜くな!」

「おう!」

 ザック達も遅れずに彼らの後に続いて砦の中に足を踏み入れていく。

 デビット達は砦の敷地に横たわるオーガ達の死体を念入りにとどめを刺して回っている。

 ザック達も彼らを真似てオーガ達の喉元に致命傷を付けて回る事にした。

 イレーネの作戦の第二段階はノームに砦の建物を崩してもらう事だった。

 フィーナは既にウンディーネと入れ代わりでノームを呼び出し、ノームには建物の解体工事の準備に入って貰っていた。

 建物にも窓から水は流れ込んでいた様で、おそらく中にもライトニングボルトの電撃は伝わっていたはずである。

 建物自体は小さなお城と言った感じでそれほど大きくは無い。

 建物の中にオーガの生き残りが居るかは分からないが、この状況で静まり返っている以上一網打尽に出来たのではないかと思う。

 ノームから建物を崩す報告を受けたフィーナは

「建物が崩れます! 離れて下さい!」

 オーガ達のとどめを刺して回っている全員に注意喚起した。

 メンバー全員から了解の合図を確認したフィーナがノームに建物の倒壊を指示すると


ードドォォォン!ー


 石造りの建物は自重であっさりと倒壊してしまった。

 砂埃が辺りに舞い上がり何人かが咳き込んでしまう被害は出たが、砦内はあっという間に瓦礫の山となってしまった。

 敷地内には瓦礫と共にオーガ達の死体が転がっているだけとなった。

「おー! オーガ達仕留められてるじゃん! さっすが私♪」

 反対側の山に居たはずのイレーネ達が砦の中に入ってきた。

「おい、なんで来た! 危ないだろ!」

 彼女達を見たザックが開口一番イレーネ達に警告した。

「いつまでも初心者が別行動してる方が危なくない? 危険なのはオーガだけとは限らないんだしさ」

 と、イレーネは砦にやってきた自分達の正当性を主張した。確かにこの辺りで脅威となるのがオーガだけとは限らない。

 他に危険な魔物が潜んでいたとしても何も不思議は無い。イレーネ達が砦の敷地に入ってきたその時

「グオオオォォォ!」

 地面に倒れていたオーガの一匹が立ち上がり、フレデリカのパーティーメンバーの一人聖職者ローズに襲いかかる。


ーガシイッ!ー


「きゃあああっ!」

 彼女が抵抗するより早くオーガはローズの両腕ごと上半身を軽々と抱え上げてしまった。

「ああああっ!」

 砦の敷地の中にローズの悲鳴が響く。その声に全員が彼女の方を向いたその時

「ノームさん! 彼女に大地の鎧を!」

 フィーナはノームに土属性の防御魔法をローズに掛ける様に指示を出した。見る間にローズの全身が土で覆われていきその強度を増していった。

「う……、動クナ……! 動ケバコノ女ヲ……」

 オーガが片言で人質を取った事でフィーナ達を脅迫しようとしたが、オーガが手にしたローズはノームの魔法の力で完全に土に覆われてしまっていた。

 それはオーガが力を加えてもすぐに何とかなる硬さでは無かった。

「いくぞ!」

「だりゃあっ!」

 オーガの動揺を見逃さなかったデビットとアンドレがそれぞれの武器を構えてオーガに向かっていく。その判断は迅速なもので迷いは全く無かった。


ーズバッ!ー


「グオッ!」

 デビットの大剣がオーガの足を斬り裂いた。痛みにオーガが地面に膝を着いたところにアンドレがオーガの胸に向けて体重と突進の勢いをのせた槍の一撃を繰り出した。


ードズッ!ー


「ガアアッ!」

 アンドレの槍はオーガの胸を背中まで貫通させており、その途中にオーガの心臓があった。

 今度こそ確実に絶命したオーガはそのまま天を仰ぐ様に地面に倒れた。

「ローズ! 大丈夫か!」

 倒れたオーガが手にしているローズに全員が駆け寄り彼女の救助が始められた。

 オーガが倒れた時の衝撃はあったが、ノームが土の鎧を解除しその中から顔を覗かせたローズに怪我は無い様だった。

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