侵入者
昼食後、フィーナはいつも通り洗い場で洗濯物を取り込んでいた。
いつもと違う事があるとすれば、昨日やってきた子猫が兄弟を連れてきているという事。
アルフレッドが洗濯場に顔を出している事くらいである。
昼食の際、エルフィーネがアルフレッドに話をさせろと五月蝿かったのだが、フィーナが尽く却下した為彼女は客間で缶詰状態を余儀なくされている。
不満タラタラなエルフィーネだったがフィーナの迫力には敵わなかった様である。
まさか小さい子にまで男女の営みな話をするとは思わなかった。
アルフレッドはまだ五つにもならない幼児であるのにも関わらずにだ。
この世界のエルフの倫理観はどうなっているのかと不安になってくる。
フィーナは外見がエルフなだけでエルフの常識や考え方などさっぱり判らない。
エルフィーネが異端なのかエルフという種族そのものがあんななのかは判断が付かないのだ。
「はぁ……」
フィーナは洗濯物を取り込みながら深く溜め息をついた。
ふと、アルフレッドを見ると、彼はニ匹の子猫がじゃれあっているところに猫じゃらしをゆらゆらしたり隙を見てお腹を撫で撫でしたりと自由に遊んでいる。
そんな光景を微笑ましく見つつ、まだまだ大量に干されている洗濯物に視線を移したその時……
「うわっ!」
アルフレッドの突然の悲鳴が聞こえてきた。
「アルフレッド坊ちゃま! いかがなさいましたか!」
即座に反応し慌ててフィーナが彼の方を見ると、彼は右腕を左手で抑えているのが確認出来た。
急いで駆け寄り彼の右腕を見る。
「……フィーナさん、だいじょうぶです。子ネコにちょっと……」
彼の言う通り子猫にの気まぐれで少し引っ掻かれた様だ。右腕に爪痕が軽く残っている。
出血する程深くは無いので問題は無さそうだ。
「アルフレッド坊ちゃま、ネコさんは気まぐれですから十分お気を付け下さいね。お屋敷に戻られますか?」
フィーナの言葉に対しアルフレッドは首を横に振る。まだまだ遊び足りないらしい。
「それではお気を付けて。何がありましたら大きな声でお呼び下さい」
フィーナの言葉に大きく頷くと、アルフレッドは子猫達の所へと戻っていった。
彼が再び子猫達と戯れ始めるのを見てフィーナは洗濯物の取り込みを始める。
ーガチャー
誰かがやってきたのか屋敷の中へと続くドアが開く。そして…
「もしも〜し、お客様は大変時間を持て余しておりまーす」
客間に一人残されている事に耐えられなくなったのだろう、エルフィーネが洗い場にまでやってきた。
客間に居る様に釘を差したはずだが効果は無かったらしい。
「はぁ……」
自由奔放なエルフィーネにフィーナもすっかり呆れ顔だ。
「こちらに何の御用でしょう? お客様のお眼鏡に適うものは無いと思いますが」
彼女の言葉遣いこそ丁寧だが、言葉の端々から滲み出る棘が明確なのは感情の現れだろう。
「少年、子猫と遊んでいるのか。私が手本をみせてやろう」
と、フィーナが止める間もなくエルフィーネはズカズカとアルフレッド達に近付いていく。
そして、毛づくろいをしている子猫を撫でようとエルフィーネがおもむろに手を差し出した瞬間……
ーガブリー
見事に一噛みされてしまった。甘噛みとかではなくかなり本気の噛み付き。
「み、みたか。森の民である我々エルフにとっては……ど、動物と心を通わす事など容易いのだ。ハッハッハッ……」
有能な伝説のスカウトのキャラを崩さず、誇らしげに言うエルフィーネの顔はかなり痩せ我慢している様に見える。
「血、出てますよ……」
エルフィーネのあまりの痛々しさに、たまらずフィーナが声を掛ける。
噛み付いている子猫をフィーナが落ち着かせ、優しく指から離すと
「フィーナぁ~、手当てぇ」
涙目のエルフィーネが小声で懇願してきた。フィーナのヒールなら一瞬で治療出来るが、とてもそんな気にはなれない。
ーギュウウウッ!ー
彼女が取った行動は、どこからか取り出した包帯でキツく縛る事だった。
「いだだだだ!」
あまりの締め付けに悲鳴を上げるエルフィーネ。
そしてその様子をやや引き気味にアルフレッドが眺めているという格好だ。
「アルフレッド坊ちゃま、おかしなお姉さんは放っておいてあちらで遊びましょう。ヘンな事教えられたら困りますからね」
フィーナはアルフレッドの肩に手を置きエルフィーネから距離を取る様に促す。
「なによー、ヘンな事って〜。私は世の中の真理についてしっかりと……」
エルフィーネは腰に手を当てもっともらしい事を言うが、フィーナの目は冷やかだ。
「どうせ男女関係の事ばかりじゃないですか。こんな小さな子相手に何言ってるんですか。悪影響なので止めて下さい」
アルフレッドを庇う様にして立つフィーナにエルフィーネは不服そうだ。
「あのね、いずれは知らなきゃならない事なんだし興味も出てくるモンなんだから」
このエルフィーネは時々正論を突きつけてくるから質が悪い。
「ちゃんとした歳になったらアンタが教えんの? 手取り足取り優しくガッツリと」
「え? それは……その……」
いきなり自分に矛先を向けられフィーナは戸惑いを見せる。
エルフィーネに言われるまでそんな事を考えた事など無かった。あれこれ想像してしまったせいかフィーナの顔は真っ赤だ。
「そういう恥ずかしい役回りを肩代わりしてあげるって話じゃないの。ほらほら〜♪」
うまく返答出来ないフィーナを面白く感じたのかエルフィーネはここぞとばかりに彼女の事をからかい始めた。
「もっともらしい事を言ってもダメです! そういった教育には適正年齢がありますから!」
だだの問題の先送りとも言えるが、とりわけ急ぎの話というものでもない。
フィーナはやや強引に話を終わらせる事にした。不満そうなエルフィーネがまだ何が言おうとしたその時
ーピュン!ー
森へと続く草むらの陰から何が黒いモノが飛び出してきた。
ードスッ!ー
アルフレッド目掛けて飛んできた黒いモノに対しエルフィーネが護身用の短刀を投げ付けて撃ち落とす。
一方、アルフレッドの事を背にしていた為フィーナは黒いモノにまるで気付けなかった。
彼女が振り返った時にはエルフィーネが既に黒いモノを撃ち落とした後だった。
「エルフィーネさん? これは……?」
事態が飲み込めていないフィーナは思わずエルフィーネに尋ねる。
黒いモノを撃ち落としたはずの短刀の落ちている地面には既に短刀しかない。
黒いモノは既に霧散してしまっていた。
「いまのは多分暗黒魔法、……そこの森によくない奴がいるわ」
さっきまでのふざけた表情は消え、エルフィーネは一流の冒険者の顔に変化している。
その事に感心する間もなくフィーナは大事な事に気付く。
「アルフレッド坊ちゃま! お怪我はありませんか!」
慌てて彼に駆け寄るが、特に怪我らしき外傷は見当たらない。
子猫達もさっきから威嚇しているがそれは当然フィーナ達に対してでは無く森の中に居る何者かに対してである。
「アルフレッド坊ちゃま、私の後ろへ。離れてはいけませんよ?」
アルフレッドに背後に隠れる様に促し森の中に居る何者かに気を向ける。
子猫達を抱えたアルフレッドはフィーナの陰に隠れ不安そうな表情を浮かべている。
「貴女はその子をしっかり守ってなさい」
短刀を拾ったエルフィーネがフィーナの隣に並び森の方に注意を向ける。
また、フィーナも同じ様に収納空間から木剣を取り出し身構える。
上位の爵位を持つ貴族の屋敷ならいざ知らず、地方の男爵家には衛兵など常駐しておらず、またその必要も無い。
大抵比較的安全とされる場所に貴族の屋敷は建てられるので、敵の襲撃など全くの想定外である。
「あれ? 意外と出来るんだねぇ。防がれちゃったかぁ」
森の奥から草むらをこちらに近付いてくる足音と共に若い男の声が聞こえてきた。
森の奥から近付いてくるその者は黒いフード付きのマントに見を包んでおり、男の表情はまるで見えない。
フードの隙間からほんの少し見える黒髪が特徴と言える。
「止まりなさい! ここはオーウェン家の敷地です! それ以上近付けばあなたを不法侵入者と見なします!」
フィーナは出来るだけ大きな声で侵入者に警告する。
「へぇ〜、それなんか意味あるのかな? 怖い怖い」
男は警告など意に介さず平然と近付いてくる。確かに言葉だけの警告など、この世界においても何の意味も綯い。
「近寄るなってんでしょうが! この陰キャ! 不審者! 変質者!」
エルフィーネもフィーナと同じ様に男に対し警告する。その物言いの半分くらいは罵倒に近いが……
「……これだからエルフは嫌いなんだ。奥ゆかしさも女らしさも無い。」
男の声からさっきまでの余裕が無くなった様な気がする。エルフィーネの罵倒が気に障ったのか、思ったより怒りの沸点が低いのかもしれない。
「お前、消えろよ。邪魔なんだよ」
不快感を顕にする男に反応する様に、エルフィーネ達を囲む形で人の上半身を模した白っぽい煙の様なモノが現れた。
「真っ昼間にレイスを出すなんてデタラメすんな!」
エルフィーネが男に悪態を付く。
彼女の言う通りレイス等の幽霊の類のモノは活動する時間帯が主に夜間であり、通常は日の光と共に消えていくものである。
現れたレイスは二体、それぞれがフィーナとエルフィーネに襲いかかってきた。
「ウオオオオーッ!」
ーバシィッ!ー
薄白い手の様なモノを伸ばしてきたレイスに対しエルフィーネは短刀を横に払いレイスの攻撃を退ける。
「フィーナ! 貴女は攻撃を避けてて! その木剣じゃ倒せな……」
エルフィーネはレイスから繰り出される攻撃を凌ぎ続けながらフィーナに声を掛ける。
ーパアァァー
「はあっ!」
一方、フィーナは神力で木剣に聖属性を付与。ぼんやり光る木剣を振り下ろしレイスを真っ二つ、霧散させてしまっていた。
「ギョアアアア!」
続いて木剣を薙ぎ払う動作で、付与した聖属性をレイスに向けて飛ばす。
「えいっ!」
ービュン!ー
「ギャアアアッ!」
光弾となった聖属性を受けたレイスは胴体に風穴を空け同じ様に霧散していった。
「聖属性の……エンチャント……?」
エルフィーネが驚くのも無理は無い。聖属性を付与出来る神官など世界でも一握り。
ましてや付与した属性を直接攻撃に転用するなど、勇者パーティーに属していた時以来久しく見ていなかった。
そんなフィーナの戦い方に驚きを隠せなかったのはエルフィーネだけではなく
「アハハ! 面白いねぇ、君! 僕をもっと楽しませてよ!」
黒いローブの男も同様だった様だ。男はフィーナ達を取り囲む横にレイス達を呼び出した。
今度は二体どころではなく、十数体……二人の周りには幾重にもレイスにより包囲網が敷かれていた。
「ねぇ、貴女に半分任せて良い? 包囲をなんとか突破してあのイキリ陰キャしばいてくるから」
あまりのレイスの数にフィーナに提案するエルフィーネに対し、フィーナは既に目を閉じて何やら集中していた。
「ターンアンデット!」
ーパアァァァッ!ー
柔らかな光がフィーナを中心に全方位へ放たれた。光に触れたレイズ達は次から次へと成す術もなく消えていく。
光が収まり周りが確認出来る様になったエルフィーネが周囲を見回すと、あれだけいたレイスは全て消え去ってしまっていた。
大量に居たはずのレイスが消えてしまったその光景に彼女が驚いていると
「へあぁっ! 目が! 目があぁぁぁ!」
肝心の黒ローブの男が目を両手で抑え悶ている。
その不甲斐ない様子にさっきまで隙あらば斬りかかろうとしていたエルフィーネも躊躇してしまう。
「ああ…目が! 目が……」
黒ローブの男は両手を前に出しながら覚束ない足取りでフィーナの方に近付いていく。
さっきのターンアンデットは不死者以外には効果は無く、光の強さもそこまで強力では無かったはずなのだが……
今にも躓き転んでしまいそうな男のあまりの狼狽ぶりに、
「あの……大丈夫ですか?」
フィーナも心配になり思わず手を差し伸べてしまう。
少しやりすぎたかと彼女が男の事を申し訳なく思った瞬間
ーガシッ!ー
「うっ!」
よろめく男がフィーナの手を掴み不敵な笑みを浮かべると
「……なんちゃって」
と、フィーナの手を掴んだまま自身の元へ彼女を引き寄せそのまま後ろ手にきつく締め上げ始めた。
ーギリギリギリー
「うぁっ!」
腕の痛みにたまらず悲鳴を漏らすフィーナ。痛みのあまり手にしていた木剣も落としてしまった。
彼女は男から逃れようと身をよじるが掴まれた腕はビクともしない。
「とんだ甘ちゃんだねぇ。あんなのに騙さられるなんてさ。ハハッ!」
男は笑いながら勝ち誇る。レイスは全滅させたものの、フィーナが人質の様な構図になってしまい一気に不利な状況となった。
「よく見たら君、かわいいじゃん。僕の人形ちゃんにしてあげたいなぁ〜」
黒ローブの男が彼女の背後から耳元で囁く。彼の手には血の付いた古びたナイフも握られており、その刃先がフィーナの首元に当てられている。
これではフィーナ自身はおろか様子を伺っているエルフィーネも迂闊に動く事は出来ない。
「フィーナさんをはなせ!」
沈黙を破ったのはアルフレッドだった。彼はフィーナが落とした木剣を見様見真似で構えている。
また、彼の足元では子猫が黑ローブの男に威嚇を続けていた。
「いけません! 危険ですのでお下がり下さい!」
フィーナが強い口調で彼を制する。アルフレッドは今にも木剣で向かって来そうな勢いだ。
「なんかやる気なくなっちゃったなぁ〜。まぁいいや。やる事やったし」
黑ローブの男は魔法陣を呼び出すと、再びフィーナの耳元に顔を近付ける。そして
「またね。かわいいエルフさん」
ーブウウゥンー
そう囁くと男は何処かへと転移していった。
「アルフレッド坊ちゃま! お怪我はありませんか!」
男から開放されたフィーナが真っ先に心配したのはアルフレッドの事だった。
オロオロしながら彼の身体のあちこちを確認している。
念入りに確認した訳では無いが目立った外傷は無さそうだ。
「アルフレッド坊ちゃま! 先程の様な危険な事はくれぐれもお止め下さい! もしもの事があったら……」
フィーナの剣幕にアルフレッドはビックリした様子で涙目になってしまった。
「ボク……フィーナさんを助けたくて……」
絞り出す様に出した声はひどく弱々しく、隣で見ているエルフィーネすら可愛そうと感じる程だった。
「まぁまぁ、みんな無事だったんだから良いじゃない? フィーナもそんな怒らないで」
場を収めようとエルフィーネがフィーナを嗜める。彼女はそのままアルフレッドの前でしゃがむと
「大好きなフィーナお姉ちゃんを助けたかったんだもんね?」
大人のお姉さんと言った感じにエルフィーネはアルフレッドの頭をよしよしと撫でながら
「偉い偉い。でも、次からはちゃんと大人の人に任せなきゃダメだゾ?」
頭をしっかり撫でながらエルフィーネはしっかりとアルフレッドに言い含める。
永い時を生きているだけあって、小さい子の扱いは手慣れたものの様だ。
「ほら、あんたも謝んなさい。頭ごなしに叱らないでちゃんとこの子の気持ちも汲んであげなくちゃ」
自分と同じ様にしろと手招きしているエルフィーネに負け、彼女に促されるままフィーナもアルフレッドの前にしゃがむ。
「アルフレッド坊ちゃま、先程はありがとうございました。ですが危険な行為はくれぐれも謹んで下さい」
フィーナのそんな言葉にエルフィーネは不満を顕にする。
「違う違う! そうじゃない! 貴方をお慕い申しておりますとか、頬を赤らめてチューとか、素敵! 抱いて! とか色々あるでしょーが!」
このエルフはこんな時でも頭ピンクなのか……と、疲れがドッと出てきてしまったフィーナ。
「だからそうやって小さい子に話すのはどうかと……」
一応苦言を呈してはみるが、果たして効果はあるものなのか、はなはだ疑問ではある。
「小さい子って言うけどね! 私らエルフにとっちゃ十年二十年なんて誤差よ誤差!」
確かに長命なエルフから見ればそうななのかもしれない。
ファッションエルフと言われても否定できない見た目だけエルフなフィーナにとっては想像も出来ない、純粋なエルフとしての感覚なのかもしれないが……
「エルフの常識を幼いアルフレッド坊ちゃまに強制しないで下さい。教育上よくありません」
ひと騒ぎの後なのでフィーナもテンパり気味だったが、よくよく考えてみるとエルフィーネの意見は間違いだらけである。
「これから成長して大人になっていかれるんですから」
これ以上相手にしても意味は無いと、エルフィーネにピシャリと行ってのけたつもりのフィーナだったが
「良かったな、少年! 大人になったらフィーナお姉ちゃんが少年の筆下ろしを手取り足取り手伝ってくれるそうだぞ!」
このエルフはいきなり何を言い出すのか。
エルフィーネにポンポンと肩を叩かれているアルフレッドはキョトン顔である。
「な……な……な……」
一方、フィーナの顔は真っ赤だ。肩をプルプル震わせ
「なにを言ってるんですか! 不潔ですよ! 大の大人が小さい子に何を言ってるんですか!」
握った手を横でブンブン振りながらフィーナはエルフィーネに猛抗議する。
そんな彼女の反応が楽しいのかエルフィーネは悪戯っぽく笑うのみである。
フィーナがふとアルフレッドを見ると彼も顔を赤くしている。
「アルフレッド坊ちゃま、あのヘンなお姉さんの言う事を本気にしちゃダメですよ?あの人の頭の中は……!」
そこまで言いかけてフィーナはアルフレッドがフラフラとしているのに気付いた。
慌てて彼の両肩を掴んで身体を支える。
「う〜……ん……」
フィーナに身体を支えられて安心したのかガクンと力が抜けるアルフレッドの身体。
「ヒール! キュア! ディスペル!」
すぐさま思いつく限りのこの世界の治癒、常態異常回復の魔法を使用する。これで大抵は異常が無くなるはずなのだが……アルフレッドの様子は依然おかしいままだ。
彼の額に手を置いて確認すると
「ひどい熱……!」
明らかに異常な体温だ。しかも、さっきの魔法の効果はまるで見えてこない。
「エルフィーネさん、私は坊ちゃまをお部屋へお連れします。申し訳ありませんが使用人のどなたかにこの事をお伝え下さい」
そう言うとエルフィーネが返事をするよりも早くアルフレッドを抱きかかえフィーナは走り出した。
(まさか……もう記憶が?)
事前に得ていた情報との違いに戸惑いながらフィーナはアルフレッドの部屋へと急ぐのだった。




