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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第二章 ザック編
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作戦会議

 ルイゼ達を牢屋から助け出したヘルムートはとりあえず全員を城内にある安全な皇帝専用のプライベート区画へ移動させた。

 姿を消しているフィーナも場所の確認と今後どうするのかを知る為に不法侵入する事にした。

 ちなみにルイゼを助け出して以降、フィーナはヘルムートに話し掛ける事も話し掛けられる事もなかった。

 ヘルムートには絶えずルイゼが寄り添っており収まる所に収まったという雰囲気があった。

 また、完全に場違いな感じがしていたザック達だが、このまま城の外へ出ても危険だろうという事でそのままルイゼ達に同行という事になった。

 ルイゼの父であるシュトリーゾフ卿はルイゼとヘルムートの仲が進展している事にご満悦の様だが、バルトゥジアク卿は相変わらず難しい顔をしたままだった。

 フィーナも彼に姿を見せて無事を伝えても良かったのだが、どう考えても話がややこしくなりそうだったので彼の近くに腰を下ろすくらいで止めておくのだった。

 皇帝陛下のプライベート区画という事で家具も調度品も高価そうなものばかりだった。

 フカフカのソファーに全員腰を落ち着けて、これから情報交換といった感じになるのだろう。

(さすがに疲れましたね……)

 兵士達相手に大立ち回りを演じただけでも疲れたのに、考えてみたら今日は朝から晩までよく動いたとフィーナはソファーに腰を落ち着けすっかりリラックスしていた。

 今頃マリーは街で自分達の心配をしているのだろうが……無事を伝えるのは明日になるかな……と、一人蚊帳の外となっている彼女の事を思い出していた。

 フィーナがそうして一人リラックスしている間、ヘルムートはルイゼやシュトリーゾフ卿も含めて自分達の今後と宰相への対応について、多分大事な話をザック達も含めて話し合っていた。

「我が帝国を食い物とするばかりか、民を危険に晒そうとするなど……最早許してはおけぬ!」

 ヘルムートとしては宰相は許せない。討ち入りして裁いてくれる!という勢いが強く放っておいたら一人で殺陣でも始めてしまいそうな感じだ。

「ヘルムート様、お気持ちは解りますが……法律に則って正式に逮捕、裁判をなされた方が……」

 一方のルイゼは宰相を罪に問うなら証拠をしっかり集めてから法に則って対処すべきという主張をしている。

「あのデブ宰相は面白くねぇ。一泡吹かせてやりたいよなぁ?」

 ザック達は無実であるのに牢屋に入れられ命までどうなっていたか分からないという現実を前に、やはり宰相の事は面白く思っていない様だ。

「あのハゲ豚、絶対ぶった切ってやる!」

 ガイなんかが熱く怒っているが、イレーネも特に怒りを顕にしていた。

「あの豚ダルマ! 今度会ったら絶対に焼き豚にしてやるわよ! ねー? サラちゃん?」

 などと物騒な事を言いながら膝の上に乗って寛いでいるサラマンダーに話し掛けている。

「証拠が必要なのは分かっている。だが、時間を置いてはヤツに策を弄させる隙を与えてしまう」

 ヘルムートは時間を掛ける事の危険性を危惧している様だ。

「もしかしたら、ルイゼ達を助け出した事、既に伝わっているかもしれん。それを知った奴がどんな事をしでかすか……」

 ヘルムートは自身の思いを語る。皇帝陛下に気付かれずに自分の野望を果たそうとしていた男がどれだけ危険な人物が分かってはいる様だ。

 しかも少なくない数の兵士達を私兵の様に味方に引き込んでまで居た。

「ですが討ち入りされたとして大義名分すら無いのは危険過ぎます」

 いくら皇子とは言え、独断専行では人心は中々ついてこない。物事の正当性が周りから見えにくいのでは尚更だ。

「ヘルムート様の大義を示す事が出来れば、宰相配下の兵士達にも動揺が出るのではないでしょうか?」

 さっさとカタをつけたいヘルムートと彼の身を案じるルイゼの意見は平行線だった。

 どちらも間違いでは無いだけにザック達も何とも言えない状況になっていた。

「そうだ! レティシア様にお聞きしよう!」

 ヘルムートはさも名案だとでも言わんばかりに思い付いた事を声に出した。

「レティシア様はルイゼ達が捕まっている事も地下牢への案内も手助けもして下さったんだ。彼女ならきっと正しい道を教えてくれる!」

 ヘルムートのその言葉に驚いたのは当のフィーナ本人だった。もう自分の役目は終わったとリラックスしていたくらいである。仕方なくフィーナは席を立ちヘルムートが座るソファーの後ろまでやってくると

「証拠集めと討ち入り同時は如何でしょう? 賄賂の帳簿はお城の執務室にありますし、賄賂の現物は屋敷に運び込んでいるはずですから」

 昼間見ていた情報を参考にフィーナはヘルムートに助言の体で伝え囁いた。やる事をやったフィーナは急いで自分が座っていたソファーへと戻る。

「フィーナさんが正しい道を……ねぇ……」

 イレーネがフィーナの動きをジト目で追いながら一人呟く。

 ソファーに腰を下ろしたフィーナはその時初めてイレーネからの視線に気が付いた。

(き、気のせいですよね。気のせい気のせい……)

 たが、自分は姿を透明化しているからバレていない。という自信からかフィーナは自分が見られている様に感じるのは勘違いだと思う事にした。

 だがイレーネはフィーナが座っているソファーを注視している事までは気付いていなかった。

 いくらフィーナが姿を消していると言っても物理的に消えている訳ではないので当然質量はある。

 フカフカのソファーに座れば当然沈むしその変化は見れば誰にでも分かる程度の事である。

「では、ルイゼは宰相の部屋で証拠を探してくれ。バルトゥジアク卿も……お願い致します。ザック達は私と共に来て欲しい。これから宰相の屋敷に討ち入りをかける!」

 ヘルムートの方針は決まった。誰も反対意見を述べなかったがそれを肯定と判断したヘルムートはすぐに行動に移すのだった。



 宰相の部屋での証拠探しはルイゼとシュトリーゾフ父娘、バルトゥジアク卿、ビリーの四人だけとなった。

 幸いな事に見張りすら居ない宰相の執務室に入るのは容易だった。後は時間が進めば証拠品の押収も問題なく済ませられるだろう。

 一方、残りのメンバーはと言えば、残りの全員で宰相の屋敷への討ち入りを決行する事になった。

 宰相の屋敷は帝都の中心から少し離れた高級住宅街にあり非常に大きな屋敷で、まるで迎賓館の様な華やかさまであった。

 四人乗りの馬車でやってきたヘルムート達四人に対しフィーナは一人で転移の繰り返しで付いて来ざるを得なかった。一日中働き詰めなフィーナは

(凄く疲れました……)

 討ち入りの前から疲労困憊だが、疲れているからといってヘルムートやザック達だけで行かせる訳にはいかないと自らを奮い立たせ、彼らに続行するのであった。

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