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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第二章 ザック編

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骨肉の争い

 街に着いたザック達一向は迷う事無く冒険者ギルドに向かった。

 冒険者ギルドの受け付けに着くと受付嬢が山盛りの金貨をカウンターにのせ

「これが前回と今回のお仕事のザックさん達の報酬でーす!」

 これ見よがしに見せつけてきた。お披露目が済むと受付嬢はコンビニの釣り銭確認に使う様なコインカウンターを使って山盛りの金貨の数の確認を始めた。

 受付嬢は金貨が十枚になる度、積み上がった金貨をカウンターに並べていき、気がつけば金貨は五十枚を超えていた。

 その金貨の数にザック達メンバーはもちろん、周りで見ていた冒険者達も目を丸くして驚いている。

「こ、こんなに……ですか? 俺達こんなに働いてましたっけ?」

 見た事ないであろう金貨の数にザックも酷く狼狽えている。

「はい! ゴブリンからの護衛のお仕事の際のタイラントスパイダーが住み着いた洞窟の掃討と今回のオークの制圧仕事の追加の報酬です!」

 受付嬢の話をそのまま受け取るなら、以前のゴブリンからの護衛の仕事の際に見つけた洞窟捜索。

しかもタイラントスパイダーとの戦いに突入した上に最終的にギルドからの援軍が来るまで被害を零に抑えたばかりか見事制圧。

 洞窟から脅威を一層した件である。後は今回のオーク退治による報酬である。

 オークからの護衛の報酬はエリスが持参した三万円にも満たない価値の硬貨だったはずだが、村長は追加で報酬を上乗せすると言ってくれていたがその言葉の結果が目の前の金貨なのだろう。

「それじゃ、遠慮無く……」

 ザックは受付のカウンターにのせられた、金貨の詰められた袋を抱えるとギルドのいつもの席へと歩き出した。

 彼の後に続くメンバー達もいつになく気色だっていた。イレーネ、ガイ、ビリーみんなである。唯一マリーだけはいつも通りだったが……。

 そんなメンバーの雰囲気に気圧されながらフィーナも席に着く。

「それじゃ報酬を分けるぞ。最初はゴブリンの洞窟の件だがそっちは金貨三十枚を受け取った。それを公平に分けていく訳だが……」

 パーティーのリーダーとしてザックが仕切り始めた。

 毎回彼が仕切り誰も異論を述べない辺り全員納得しているやり方なのだろう。

「あの…報酬についてなんですけど……私は辞退しようかなって」

 遠慮がちに小さく手を上げフィーナが小さい声で報酬の辞退を申し出た。

「なんだよフィーナ。藪から棒に」

 理由を問うザックに彼女は長い耳を垂れ下げながら話し始める。

「……洞窟では敵に捕まってしまいましたし、オーク退治でも皆さんの足を引っ張ってしまいました。私には報酬を頂く資格はありません」

 フィーナの中ではどちらの仕事でもパーティーに迷惑をかけてしまったという認識であり、そんな自分には報酬を貰う資格は無いと考えていた。しかし

「確かにミスもあったみたいだが、それだけでもないだろ? 報酬は実際の働きに合わせて受け取るべきだ。人の評価は一か零かじゃない」

 ザックはフィーナの申し出を受け入れるつもりは無い様だ。そして彼は一人五枚の金貨をザック、ガイ、イレーネ、マリー、フィーナの前に配った。そして

「これは、洞窟に入って仕事した対価だ。タイラントスパイダーの潜む洞窟に入るなんて自殺行為だからな」

 そして、残り五枚の金貨の振り分けに各メンバーに意見を求めた。

「俺は掃討戦にも参加してたぞ」

「私も魔法で大分役に立ってたと思うわよ〜?」

 ガイとイレーネは自分の働きと貢献度を主張してきた。ザックは二人に金貨一枚ずつ上乗せした。

 そして彼は無言でマリー、フィーナ、そして自分に金貨一枚を割り振りゴブリン洞窟の報酬を配り終えた。その時

「あの、私がどうして貰えるんですか?」

 フィーナとマリーが同時に発言、完全にハモッてしまっていた。そんな二人にザックはやれやれといった態度で

「マリーは洞窟の入り口を塞ぐのに貢献してくれた。フィーナも同様だ、それに先に洞窟に入ってゴブリンを片付けてくれたしタイラントスパイダーの存在も知らせてくれたからな」

 と、二人に金貨を一枚追加で割り振った理由を説明した。そんな彼の話に、フィーナが自分は捕まっただけなのに……と、考えていると

「もしフィーナが捕まってなかったら、俺達は無防備に突き進むだけで奴らの糸に気付かず全滅していたかもしれねぇ。これは当然の報酬だ」

 ザックがしっかりと言い聞かせる様にフィーナに説明した。

 これで報酬の配分は一段落という空気がパーティー内に流れ始めたところで

「おい! 僕の取り分は?」

 ビリーから異議申し立てが成された。そんな彼にザックが冷たく言い放つ。

「お前、最初に洞窟についてこなかっただろ? 後から来ただけで報酬貰えるなんて認めてたら重役出勤ばかりになるだろ」

 と、ザックはビリーの異議申し立てに耳を貸すつもりは無いらしい。

「でも! 僕が助けを呼んできたからギルドから救援も来たし洞窟も制圧出来たんじゃないか!」

「それも考えた。だが救援要請は俺達でも出来た。洞窟の入り口を塞いだ後ならな」

 ビリーの異議申し立てはザックに完全に却下されてしまった。

 何も言えなくなったのかビリーはぐぬぬとなっている。

「次はオーク退治の報酬だ。金貨二十五枚。これも分けていくぞ」

 ザックは自分、ガイ、イレーネ、マリー、フィーナに五枚ずつ配り終えた後でポケットから金の包装紙が貼られたチョコレートを取り出すとビリーの前に十枚程出して自分の席に戻った。

「これで良いな。それじゃ解散!」

 ザックはこれで終わりと報酬についての話し合いをお開きにしようとした。

 目の前のチョコレートを見てビリーはプルプル震えている。

「異議あり! おかしいだろぉ! 僕の取り分今度はあるだろ!」

 机をドンと叩いてビリーは立ち上がった。指を差してザックに全力で反抗している。

「お前、最初に仕事放棄しただろ。さっきも言ったが特に理由が無い重役出勤は駄目だ。逆の立場ならお前だって許せないだろ?」

 何度も繰り返されるビリーからの異議申し立てに、ザックは面倒くさそうに冷めた目でビリーを見ながら返事をした。

「でも、フィーナの事だって助けたしオークだって何匹か倒したんだ。タダ働きはおかしいじゃないか!」

 ビリーの反論にザックはテーブルの上に置かれたチョコレートを指差した。

 ザックの中ではビリーの働きはそのチョコレートという評価らしい。

「バカにするな! こんなので喜ぶほど僕は子供じゃないぞ!」

 ビリーはチョコレートをポケットにきちんとしまいながらも憤りを隠さない。

 他のメンバーも報酬をしまいながら事の成り行きを見守るのだった。

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