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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第一章 アルフレッド編
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大団円

 フィーナ達はダインスレイフに乗り魔王サタナエルの城塞へと帰ってきた。

 行き道と違いフィーナが帰り道のダインスレイフでの飛行であまり取り乱さなかったのはアルフレッドの意識が戻らない事と関係がなくは無いだろう。

 フィーナはアルフレッドに治癒魔法を掛け続けておりそっちの方が気になりすぎていたからだ。

 城塞に戻ったフィーナだが、本当ならこれ以上は魔王に迷惑を掛けずに王都に戻りたいところだった。

 思えば女将さん達には無断で外出してしまっている為、心配を掛けているかもしれない。

 こちらに転移した瞬間はリーシャにも見られていたから外出は不可抗力だった事は伝わっているかもしれないが。

 城塞から王都までは歩いていったら一ヶ月近く掛かるらしく、当然の事ながら魔族領には整備された街道なども無いとの事だ。

 それならば転移で帰ろうかとも考えてみたのだがサタナエル曰く

「城塞周辺の地域には転移魔法を防ぐ処置が祖父によって施されていてな。魔王の城からは逃げられない。のが鉄版だからな……が口癖だった」

 との事らしい。折角攻めてきた外敵に転移魔法で行き来されては興が醒めるという事で、彼の祖父の手によって長らく転移魔法が使えない様にされているらしい。

 唯一例外なのはシトリーだが、フィーナも同じ例外枠に入れるのには一日必要なのだそうだ。

(…………)

 アルフレッドの意識も戻らないためサタナエルの厚意に甘え彼の城塞で一泊させてもらう事となった。

 案内されたのは石造りの豪華な客間だった。床には赤い絨毯、ダブルのベッドにテーブルやチェアー等、一通りのものは揃えられていた。

 もっとも、何かしら足りないものがあればフィーナの神力でいくらでも生み出せるのだが。

 人の目が無いせいか今のフィーナはそのあたりが無頓着になりつつあった。今の状態で王都に戻ったらボロを出してしまう事は想像に難くない。

 意識が戻らないアルフレッドだが、表情を見るにうなされていたりといった事は無い様だ。

 しかし、他の魂に乗り移られて好き放題に使い回された後である。何かしら後遺症があってもおかしくは無い。

 フィーナかベッドに眠るアルフレッドの手を握りながら彼に回復魔法を掛けていると


ーコンコンー


 何者かがドアをノックする音が聞こえてきた。フィーナが席を立ちドアを開けると

「!……は、えーと、……なんでしょうか?」

 扉の外には背の高い体格の良い牛頭の生き物が立っていた。

 その生き物は大きなお盆を手にしておりお盆の上には二人分のスープが載せられていた。

「これ……私達にですか?」

 フィーナが尋ねると牛頭はコクコクと頷いた。彼?彼女?はお盆をフィーナに渡すと石造りの廊下を戻っていった。フィーナがアルフレッドのところに戻ろううと振り返ると

「……フィーナ……さん? ここは……?」

 アルフレッドが上体を起こしてフィーナの方を見ていた。意識を取り戻したアルフレッドにフィーナは駆け寄り

「アル、大丈夫ですか? おかしなところはありませんか?」

 お盆をテーブルに置くや否やフィーナはアルフレッドの手を取り、彼の額に手を当てたり体調に異常は無いかを確認していった。

 体調確認の次に、彼がどのあたりまで物事を覚えているのかを聞いてみたところ、ここ数日間は悪夢を見ていた様であまりよくは覚えていない様だ。

 なんだかとんでもなく怖い夢を見ていたというアルフレッドを


ーギュッー


「すみません、嫌な事を思い出させてしまって」

 フィーナはそっと彼を抱き締めるのだった。身体を密着させると彼がまだ小さく震えているのが分かった。

 身体が乗っ取られていた恐怖によるものか、それともソーマが何か置いていったのか……それはフィーナには分からないが、全ては終わったはずだなのだ。

「悪夢からはもう目覚めたんですから忘れましょう。ね?」

 フィーナはアルフレッドを落ち着かせる為に彼の背中をポンボンと叩き頭を撫でる。そんな事を続けているうちにアルフレッドの震えはいつしか止まっていた。

「アル? 少し前にあなたに質問された事ですが……」

 フィーナがアルフレッドの耳元で囁く様に呟くと彼の身体がビクッと跳ねたのが分かった。フィーナが言う質問とはアルフレッドと一緒に魔族領に転移する前の夜中に聞かれた事である。アルフレッドからの結婚の申し出……

「アルが大人になって私と一緒になりたい気持ちがそのままでしたら、その時にもう一度言って頂けますか?」

 フィーナは抱き締めていたアルフレッドを身体から離すと彼の両肩に手を置き、キョトンとしているアルフレッドの目を見て言葉を続ける。

「その時は……お受けします」

 そう言うと、フィーナはアルフレッドの前髪を上げると彼の額にそっと唇を付けた。

 あまりに突然の事にアルフレッドが戸惑っていると

「それではお食事にしましょう。」

 と、フィーナはいつもの彼女に戻り、先程受け取ったスープをアルフレッドに手渡した。

「フ……フィーナさん? さっきのは……?」

 顔を真っ赤にしながらアルフレッドはフィーナに今の行動の真意を聞いた。しかし

「どうされました? 温かいうちに頂きましょう」

 フィーナははぐらかすばかりでアルフレッドの質問には答えようとしない。まるで大人としての余裕からくる行動の様にも思えるが

(あ、あ……あんまり突っ込まないで下さい!)

 フィーナ自身も内心パニクっていた。自分の気持ちに嘘偽りなく行動してみたものの、いざ結婚するとなれば問題は山積みである。

 年齢差や倫理的な問題はともかくとして、結婚するという事は相手家族とも繋がりが出来てしまう事を意味する。

 ジェシカ奥との嫁姑問題やアルフレッドの兄アルスをお義兄さん扱いしなければならないとか、考えなければならない事が洪水の様に押し寄せてくる。

 一応、天界での規則も参照してみたものの人々の信仰心についての扱いによる罰則等がある位で現地の住人と結婚してはならないとはどこにも記述は無い。

 異世界と天界とでは時間の概念も別物であるからこちらで数十年過ごしたところで天界の自分の仕事に悪影響は無い……。

 と、フィーナは頭がバンクしそうな情報の洪水から逃避する為に日常の何気ない行動に全力集中しているだけなのだ。

「明日はサタナエルさんにアルをご挨拶させないと……」

 フィーナの現実逃避は尚も続いていくのであった。

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