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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第一章 アルフレッド編
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地下での戦闘

 フィーナ達と植物の化け物の様なモノとの戦いは両者睨み合っている状態だった。

 フィーナ達からすれば人質の女の子達を救わなければならない。

 一方、植物の化け物からすれば触手での攻撃を退けてきた敵を相手取らねばならない。

 結果、両者とも行動を決めかねている状態が続いていたのだった。

「キシャアアアァッ!」

 その均衡を破ったのは植物の化け物の方だった。


ーブォン! ブォン!ー


 植物の化け物は幾つもの触手をムチの様にしならせ、フィーナ達目掛けて振り回してきた。


ーブォン! ブォン!ー


 触手達が風を切る音が不気味に響く。触手達の攻撃に対しフィーナは

「くっ! はっ!」

 回避に専念する事で凌ぎ

「ウニャア! 二ニャア!」

 ミレットは猫パンチで反撃する事で触手の攻撃を防いでいた。

 ミレットの猫パンチはともかく攻撃を避けるだけのフィーナは次第に追い込まれていく。

 攻撃されるだけでは劣勢に立たされるのは彼女自身分かっていた。そこで

「はぁっ!」


ーズバァッ!ー


 狙いを付けられる触手に対し光の矢で反撃していく事にした。

 無数に生えている触手相手では徒労でしか無いような気もするがやらないよりは良いはずだ。

 フィーナの光の矢とミレットの猫パンチにより触手の数は目に見えて減ってきているのが分かった。

 触手の数が減ってきたあたりから植物の化け物の戦い方が少し変わってきた。

 ミレットに対しては死角からの多用する様に、フィーナに対しては上下による揺さぶりと避けた後の着地後の一瞬の隙を狙うかの様な動きになっていった。

 ミレットは持ち前の反射神経と身体の靱やかさで対処していた。

 しかし、人並みの身体能力で剣術技能を付与しているだけのフィーナでは追い込まれてしまうのは時間の問題であった。

 振り下ろされる触手の攻撃に身体を逸らしつつ下段を払ってくる触手に対し、フィーナは飛び退きながら光の矢で反撃する。


ーズババッ!ー


 狙いがブレたためか光の矢は二本しか命中しなかったが彼女にとっては上出来だった。

「やった! 次は……」

 フィーナは地面に着地しつつ、次の相手を探す。その時


ーバシッ!ー


「わっ! うぐっ!」

 着地の瞬間を狙った触手の攻撃がフィーナの足を払った。成す術無く彼女は地面に尻もちを着かされてしまった。


ーシュルシュルシュル!ー


 動きの止まったフィーナに無数の触手が一斉に襲いかかる。

「くっ!」


ーピュピュピュピュン!ー


 咄嗟に光の矢を撃ったものの狙いを付けている時間がなかったせいか何本かの触手を抉り取っただけで残りの光の矢は命中せずに飛び去っていった。


ーブォンブォンブォン!ー


 その間にも多数の触手がフィーナに迫っていく。

「くっ!」

 彼女が思わず目を閉じてしまったその時

「フニャアッ!」

 ミレットの声が目の前から聞こえてきた。ほんの一瞬の間にミレットが駆け付けてきてくれた様だ。

 彼女は飛び掛かりながら触手に猫パンチを食らわせつつ、空中で姿勢をグルンと変えて後ろから迫ってきていた触手も叩き落とすという曲芸じみた体捌きをやってのけた。

「前衛スカウトを甘く見て貰ったら困るニャ」

 着地したミレットは大量にうねうねしている触手に向かって言い放つ。

 しかし、地下に降りてから動きっ放しでもある為、心做しか疲労の色が濃くなってきている様にも思える。

「ミレットさん! 大丈夫ですか?」

 フィーナはミレットに近付きつつヒールとキュアを両手で同時に掛ける。


ーパアアァァー


 外科的治療を行うヒールと内科的治療を行うキュアで疲労回復に効果があるかどうかは分からないがとりあえず掛けておく。

(…………)

 ミレットの足手まといになっている気がしてフィーナの自己肯定感はかなり低くなっていた。

 実際のところ決してそんな事は無いのだが、今日一日の一連の出来事によってフィーナのメンタルはボロボロになっていた。

 女神とはいえ弱気になったりテンションが低い事はあるのだ。

 ミレットの治療に気が向いたフィーナの隙を触手達は見逃さなかった。


ーブォン! ブォン! ブォン!ー


 あらゆる方向から繰り出される触手の攻撃にフィーナが気付いた時には回避出来ない状況になっていた。

 仮に防御に徹したところで楯も持っていないメイド服のフィーナでは防御効果もたかが知れている。

「く……!」

 それでも他に方法の無いフィーナには身を守る事しか出来なかった。確実に来る触手の攻撃にフィーナが身構えたその時

「先輩! 危ない!」

 

ードンッ!ー


 ミレットがフィーナをを突き飛ばし触手の攻撃から彼女を身を挺して救ったのだった。


ーバシン! バシン! バシン!ー


 しかし、フィーナを突き飛ばすのがやっとだったミレットには触手の攻撃に対処する余裕は無く、全ての攻撃をその身で受ける事となってしまった。

 ミレットに突き飛ばされたフィーナが次に見たのは触手に滅多打ちにされる彼女の姿だった。

 動かなくなってしまったミレットは触手に捕まり頂上にある花の様な部分に運ばれていく。

「ミレットさん!」

 ほんの一瞬の間に目まぐるしく状況が変わっていく光景にフィーナは全く対処出来ずに居た。

 今はミレットを助けなければならない……しかしどうやって?

(光の矢で触手を撃ち抜けば……?)

 しかし、フィーナが考えている間にも化け物の無数の触手が、ミレットとの間に壁を作ってしまい視界と攻撃手段を奪ってしまった。

 これでは威力のある光の矢は迂闊に撃てないし威力を落として撃った所で触手の壁を突破する事は出来ない。その時

「先輩! 植物相手には炎です! やっちゃって下さい!……ニャ」

 振り絞った様な大声が触手の向こうから聞こえてきた。

 ミレットはダメージを言いながらも意識を失わず、冒険者としての常識をフィーナに伝えてきた。

(でも……)

 ミレットの言葉にフィーナは逡巡する。植物の化け物の下部は水の中だ。火をつけたら水中に潜ってしまうかもしれない。

(火の魔法……?)

 しかしミレットの言葉にフィーナは何かを思い付いた様だ。触手の下部に向けて手を翳す。そして

「アイスストーム!」


ービュオォォォォォッ!ー


 フィーナの掛け声と共に植物の化け物の水面の部分で冷気の渦が発生し瞬く間に水面が凍りついていく。


ービキビキビキビキ……ー


「ギエェェェ……」

 うねうねしていた触手も動きが遅くなり……すぐに化け物の動きは止まってしまった。

「ふぅ……」

 神力を利用したこの世界の魔法の行使だったが、こういった戦い方はフィーナの頭の中にはまるで無かった。

 攻撃するなら光属性の神聖魔法という固定観念があったからだ。

 光属性にはほぼほぼ弱点は無く、わざわざ神力を変換してまで他の攻撃手段を取る必要など無いという考え方だ。

 こういった状況でフィーナは初めて、全ての属性の力を行使出来るという自身のアドバンテージに気付かされたのだった。

(…………)

 何でも出来る女神とは言っても戦いは本業では無いし、戦い方についても精通している訳では無い。女神も日々勉強なのだ。

「せんぱーい! 早く助けて下さいよ〜! クシャン!……ニャ」

 動かなくなった触手の壁の向こうからミレットの声が聞こえてきた。

 植物の化け物の下部を狙ったとは言え液状の水面を凍らせる程の冷気、流石に寒いのだろう。

 正直、少し離れているフィーナですら寒く感じる位だ。

「今、そっちに行きます!」

 フィーナはこの世界の火の魔法で、動かなくなった触手を焼き払いながらミレットの元へと進んでいくのだった。

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