王太子の愛妾side
所長曰く、私の体は老化が酷く遅いらしい。けれど「不老」とまではいかないらしく、されど「不死」に近いものまである。というのも、私は怪我の治りが異様に早く、ここ数年風邪一つ引かない健康体。だからといって殺したら普通に死んでしまう。生き返る事などできない。なんとも中途半端な成功体とされている。
『はっきり言って、君の体はこれ以上薬を投薬し続ければ間違いなく死亡する可能性が高いんだ。お偉方は君を貴重なサンプルとしてこのまま実験体として扱うつもりだ。そう命令がきたんだけどね、僕としては折角ここまできた成功体をむざむざ死なすのは惜しいんだよね。だってそうだろう?君みたいな成功例がこれから先でる保障なんて何処にもないからね。寧ろ、君自身が奇跡に近い。僕としては貴重なサンプルを酷使するんじゃなくて経過観察すべきだと考えているんだ。丁度、君の存在を嗅ぎつけて引き取りたいっていう奇特な御仁も居る事だしね。ああ、安心していい。表向き、君は薬によって死んだ事にするから。これは君にとっても良い提案だろう?苦い薬を飲まずにすむ上に外の世界で生きる事ができる。僕だってサンプルの観察を続けられる。危ない橋を渡ってまで君を欲する貴族様は君を手に入れられる。皆が幸せになれるってもんだ!』
この男は間違いなく人でなしの部類だろう。
そうして私は所長のいう「お貴族様」の囲われ者になった。
侯爵家に入り婿した男爵家の五男だった男。若い頃はそれは美男だったのが分かる顔立ち。男が言うには、夜会で一目惚れした私を忘れられずに探し続けていたらしい。男の妻は鬼籍に入っていて一人息子がいた。風邪を拗らせて亡くなった奥方。それが偶然と思うほどおめでたい頭はしていない。だって、奥方が亡くなったのは私が侯爵家に引き取られる一ヶ月前。風邪薬に何かを仕込んだのだろう。もしくは薬を提供したのは所長かもしれない。
数年、男の愛人をして暮らした。
男の死後はその息子を篭絡して愛人の座に収まった。
見た目が二十代の若いままの姿はこんな時に役に立つらしい。中身は皺くちゃのお婆さんだというのに。男とは何と愚かな生き物だと内心嘲笑った。
目の前にいる若い侯爵。
彼には感謝している。
私に復讐の機会をくれたのだから。




