表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/70

王太子の愛妾side


 私は死んだ人間。

 公式記録にはハミルトン侯爵家の者は処刑された事になっている。けれど、本当は違う。大半の者は深い森の奥にある研究施設に連れて行かれた。何でも、永遠の命を得る事を目的とした研究施設。ただし表向きは新薬の研究所。国が公認しているというのだから酷い話だと思ったし、権力者が最後に望むのは永遠の命なのかと別の意味で納得もした。


 

『あのさぁ、僕達をマッドサイエンティストみたいに言わないでくれる? 飽く迄も最終目的が“永遠に生きられる薬”ってだけだ。ここではありとあらゆる薬が試行錯誤されて作られてる。その中には感染症に効く特効薬だって開発されてきたんだ。ただね、薬を販売するには副作用がないか調べないといけないし、仮に副作用が出たとしてもどの程度なのかも把握しておかないといけないんだ。色んな動物で実権を繰り返してはいるけど、最後には僕達と同じ動物(人間)を使用して確認しないといけないだろう?』



 研究所の所長の言葉は誰が聞いてもマッドサイエンティストだった。表向き死んだことにされたハミルトン侯爵家の人間は研究所にとって打ってつけのモルモットで、彼らは容赦がなかった。暴言や暴力は一切ない代わりに人間扱いはされない。彼らの目がそれを物語っていた。一族が次々に命を落としていく中で何故か私は生き残った。



『う~~ん。君さ、物凄く運が良いのか悪いのか……分かんないね』


 所長は憐れむような言葉を吐くが目をキラキラさせていた。何でも、私に施した薬で死なないのは稀らしい。普通は死んでしまう劇薬。投薬した直後は苦しむのにその後は通常に戻る。私の体は薬に対応していると研究職員に考えられていると教えられた。


『ココだけの話、もしかしたら薬の副作用かもしれないんだよね。それか君の体内で薬が変化したか……本当に凄いよ』


 実験のマウスは全滅したのにサルは一部生き残ったらしい。


『まだ誰にも言ってないけど、この前ね、君に投薬した薬を間違って飼っている金魚に与えちゃったんだ。そしたらどうなったと思う?まるでピラニアのように変形したんだ!面白いよね!』

 

 この男に人の心はない。

 絶対にワザと金魚に与えたんだろう。ニコニコと笑う所長が一番のマッド野郎だった。

 

 数年が過ぎた。

 その頃には私以外の一族は全員死んでいた。



『君さ、ここを出る気ある?』


 人の心を持たない世紀のマッドサイエンティストが狂ったセリフを吐き出した。

 

 

 

 


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 俺もマッドの部類だから理解はできるけど納得できないんだよね、なんで死刑囚を使ってはいけないのか対価を理由に死期が近い人間から希望者を募ってはいけないのか分からないんだよ人権に何の意味があるの…
[良い点]  ここに繋がるのかい!  結局コトの元凶はこの施設かー。  なんとか潰して研究成果だけ抜き取れないものか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ