暴動1
本当に。困ったおじい様です。
あの様子ですとまた新しい悪だくみを企んでいらっしゃるのでしょう。大人しく隠居生活をするという考えは全くと言っていいほどありませんからね。
王都の友人からの報告によると今後は大規模な暴動が起こりかねないとあります。王都では貧困層が増え続けていますし仕方ありません。食料を求めて群れで商店を襲うケースも多発しているようです。
「第三者の立場でいたかったのですが……おじい様の様子では無理そうですね」
当事者にはなりたくありませんが、おじい様の事です。喜々として関わっていくのでしょう。外国に出ても悪い顔で交渉に当たっていたといいます。交渉相手の方々が気の毒でなりません。
悪い勘ほどよく当たるもの。
恐れていた事態が起きてしまいました。
きっかけは、一台の馬車が公爵領に駆け込んできたことから始まりました。
粗末な馬車でした。
ですが、乗っていたのは王都出身の若い貴族。同乗者は奥方一人。
『大変です!大変な事が王都で起こりました!今すぐスタンリー公爵にお目通りを!!』
公爵領に着くや否や悲鳴を上げるように訴えたのです。
質素な服装の上品な男女。男性は汗まみれで、女性は異常な程怯えていました。何かから逃げるかのように馬車を走らせたのでしょう。その異様な光景は王都で何かが起こった事が嫌でも理解できました。
「民衆が我々に牙を剥きました!」
やはり、思った通りでした。
恐れていた事が起こったのです。
「今までも小規模ながら暴動が起こってはいましたが……今回は違います。今までとは比べられない規模の集団が私達貴族に襲い掛かってきたんです! 子供のミルクを寄こせと、自分達の金を返せと叫んで。警察も手が回らない状態が続いて……近衛兵まで動員して秩序の回復を図ったようですが……。勿論、鎮圧できた処もあるのですが……民衆は凶暴化する一方で……。金目当てではなく……ただ貴族だというだけで撲殺される事件も起こっています」
そうでしょうね。
貴族などの特権階級よりも平民の方が数は多いのです。数の暴力の前に権力は役に立ちません。度重なる失政と貧困。民衆の貴族階級への憎悪は彼が思っている以上に深いものがありました。何時、民衆が爆発してもおかしくはなかったのです。
これから先、貴族の移住が増えるでしょう。




