表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/70

元宰相side


 やはり、自分の家の領地となると愛着はひとしおじゃ。退職金をせしめてきたのは間違いなかったのぉ。これほど役に立つとは思わんかった。これなら五年もせんうちに王都と同レベルの生活水準に持っていけるというものじゃ。

 元々、我が領の民間レベルは高い方じゃった。それでも王都には負ける。じゃが、上の者が本気で動けばあっという間に追いつくもの。最近では我が領地の著しい発展を目の当たりにした近隣の領主などは併合を申し込んできた。クックックッ。儂は国王ではないので併合は出来ん。そのような権利はないからのぉ。しかし、“抜け道”というものは存在しておる。


 領主が困窮のために領地を他の貴族に売り渡す――


 これは領民の生活を守るために設置された法でもある。

 そのため購入する側は高値で買わねばならず、金額も指定されている。売る側が不利にならないための措置じゃ。それも貴族が貴族に売る事しか許されない。裕福な庶民は金で爵位を買う。それは良い。ただ、成り上がりの中には質の悪い者もいる。そんな連中に詐欺同然で領地を奪われないための法でもあったが、まさか、自分自身がそれを利用する日がこようとは思わんかった。人生何が幸いするか分からん。



『本当に宜しいのですか? 我が領は湿地帯が多く土地がやせ細っています』


『毎年、川の氾濫が酷いのです。新しい事業の目途も立たない有り様で……』


『鹿や猪が田畑を荒らして……最近では領民の被害も相次いでおります』



 新たに手に入れた土地は領主達が言っていたように旨味がない土地じゃった。売りたくとも買い手が無かったのじゃろう。相場の倍の値段で購入すると伝えると逆に恐縮しておった。

 確かにデメリットばかりの土地じゃ。買い手もつかん。要は土地にあった開拓をしていけば良いだけの話。数年は赤字続きになるが長期戦で考えれば黒字になる。その結果が周りの地域にも良い影響を与えてくれるじゃろう。

 

 難しいのは土地ではない。

 領民の方がもっと厄介じゃ。食うに困って犯罪に手を染めた者達。家族を養うために山賊になった者までおる。兎に角、新しい土地の住民は荒くれ者が多い。まるで暴れ馬の如し……安心せい!儂は乗馬は得意中の得意じゃ!必ず飼いならしてくれようぞ!




 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ