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婚約の理由

 

 私、ヘスティア・スタンリーには、公爵家の一人娘として生まれたが故に婚約者候補は大勢いました。その中でヤルコポル伯爵家を選んだのは色々と都合が良かったのだと今では思っています。

 爵位自体が高くもなく低くもない。侯爵家以上に侮られる心配がない歴史ある家柄。伯爵領は王都からほど近く、これといって目を引く産業はないものの与えられた領地を可もなく不可もなく代々無難に治めている伯爵家。歴代当主は派閥争いを嫌うのか、ずっと中立を維持している処も好ましかったのかもしれません。


 けれど、最大の決め手は現ヤルコポル伯爵夫妻にあった事は間違いないでしょう。


 前公爵にして、宰相である祖父が目にかけていたヤルコポル伯爵。

 若くしてエリート街道を駆け抜けていく姿は、祖父の贔屓を抜きにしてもヤルコポル伯爵は優秀だったのです。「後継者」というのは少し違うかもしれませんが、祖父が目を掛けていた程の人物。ヤルコポル伯爵夫人もまた優秀な女官として、王妃殿下も信頼厚く王太子殿下の乳母に選ばれる程でした。


 優秀な御両親。


 彼らの子供なら問題は無い――


 誰も言いませんでしたが周囲はそういった空気がありました。


 ですが、皆が期待した婚約者は実に平凡な少年。

 また、同じ歳のヴィランは子供の私の目から見ても情緒不安定な少年でした。

 初めて会ったのは6歳の時。


 ヴィランは四人兄弟の三番目。5歳年上の双子の兄達は11歳で、お互いに勉学と剣術で才能を開花し始めた時。父親のヤルコポル伯爵が跡取りの双子に目がいくのは自然な事でした。同じ歳に王太子殿下がいらしたので、一層の期待を寄せたに違いありません。王太子殿下と乳兄弟の間柄である双子の兄弟は王太子殿下の側近候補にまで上がっていたからです。


 父親がダメでも母親が気に掛ければいい、と思うかもしれませんが、当時は無理だったのです。ヴィランの2歳下の弟君が病弱だったせいでヤルコポル伯爵夫人は主に弟君に付きっきりでした。



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― 新着の感想 ―
[一言] 例え幼少期であっても「情緒不安定」って説明があると、それだけでまともな人間にはならないだろうあなと思ってしまう。特に主人公の婚約者がそうだった場合は。
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