元伯爵side
まず最初に見たのは己の息子の分だ。
一際分厚く束ねられた物。
それだけ息子の罪を……自分達の罪深さが分かるというものだ。
ページを捲っていく。
紙が重く感じてしまう。
息子の調査書を読んでいくうちにおかしな事に気付いた。ヴィランには友人が一人もいない。いや、友人はいるにはいるが……どちらかというと知人に近いものばかりだ。
更に読んでいくとヴィランと他の貴族の子息達との間には大きな壁があるように感じた。
「それはそうでしょう」
謎を教えてくれたのは部下だった。部下といっても王家の影だ。彼らは私を監視するための「部下」として傍にいる。その事を知った時は笑ってしまった。いっその事、人知れず殺してしまった方が早い。実際、「部下」にも言った。
それに対する返答は――。
「あんたを生かしたい人が生きている限りは無理だね。どんな仕掛けをしているか分かったもんじゃない。全く。どうしてあんな優秀な人材が隠れていたのか、謎だよ」
生かしたい人?
仕掛け?
何かの隠語だろうか?
さっぱり理解出来なかった。
「一体どういう意味だ? 王家から恩赦に近い形で生かされているが……その事か?」
それ以外の関係者と言えば宰相閣下位だ。
だが、宰相閣下といえど私達家族を擁護はしないだろう。自分の家族に危害を加えようとした者の一人と思われているに違いない。
私の態度に「部下」は嘲笑った。
「あんたは本当に運が良い。俺もあやかりたいもんだよ」
褒めているのか嫌味なのか分からない言葉が返ってきた。「部下」は私の質問に答える気はないという事か。