表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/70

切り捨てる者

 

 スタンリー公爵家が相手でなければ、


「三男を教育したのはお前達だ。だからお前達に責任がある」


 と言えたでしょう。


 その場合、自分よりも上位者に対する侮辱的発言として「侮辱罪」に適用されかねません。弁護士は「伯爵側」として戦っている以上、「公爵側」に対してそんな事を言おうものなら不法行為とみなされても仕方ありません。法治国家でもありますが、階級社会で成り立っている国です。禁固刑に処されかねません。



 ヴィランがもっと愚かだったなら、


「常軌を逸脱した行動は()()()()だからです」


 と言い訳が出来たでしょう。


 ヴィランが王都の高級ホテルで愛人候補と逢引きしていなければ可能だったかもしれません。

 逢引き場所が王室御用達ホテルであり、貴族階級、特に高位貴族が好んで使用するホテルです。当然、宿泊客のチェックにも余念が有りません。何時何分にチェックインしたのか、チェックアウトは何時だったのかは「宿泊者名簿」に記載されているでしょう。何時誰がルームサービスを利用したのかという記録も取っているはずです。

 我がスタンリー公爵家も贔屓にしているホテルでもあります。

 しかもヴィランはVIP用の部屋に泊まったのです。言い逃れ出来る要素が全くありません。老舗高級ホテルのスタッフは皆さん、教育が行き届いてますから客の情報を喋る事はまずありません。ですが、証言をお願いするなら「公爵家」と「伯爵家」どちらの味方をするかは明らかというもの。


 愛人を我が家に連れ込む前日だったのも悪く作用しました。


 これが前日でさえなければ、弁護士は思った事でしょう。

 それとも、高級ホテルではなく下町の宿屋だったなら言い逃れが出来たかもしれません。


 執事長が訝しそうにしていました。


「裁判中の御三男は様子がおかしかったです。あの方の事ですから支離滅裂な理由を言うとばかり思っておりましたがそれもありませんでした。ですが、何やらしきりに口元を動かしておりました。身体の自由を奪う薬を飲まされたのではないでしょうか?」


 第一回目の裁判。

 その報告は最終判決が出る日までかわる事はありませんでした。

 ()()ヴィランが始終大人しく座り続けていたと言うのですから、そういう事なんでしょう。ヴィランに薬を盛ったのがヤルコポル伯爵家の誰であれ、弁護士は全て把握しているに違いありません。


 弁護士はヴィランを切り捨てたのです。

 彼を見捨てる代わりに()()()()()を守ろうとしたのでしょう。

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「伯爵家」がクライアントなら弁護士の行動は妥当だねぇ ヴィランを守っても今後家に貢献することは無いんだから負債を押し付けて損切り ヴィランに残った最後の価値
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ