いきなり記者会見
「おっと、電話だ」
間葉が振動するスマホを取り出した。
「おっ、陽子からだーーこんな時間にどうしたんだろう。今はあいつは外遊しているはずなんだけど……」
間葉はスマホを耳に押し当てようとしたが、すんでのところでやめた。
「おい陽子、なんで電話を映像つきにしてあるんだ」
間葉は画面に向かって軽く拳骨を突き出すポーズを取った。画面の向こうでは、若い女の人がこちらに手を振っている。世間知らずな私も顔くらいは知っている、彼女が天原王国の第一王女にして実質的権力者、天原陽子である。
「あ、そうそう間葉、今はあんまりふざけない方がいいわよーー実は、こっちは今から記者会見をするところなの。国民諸君に、紀斗奈ちゃんの生い立ちを説明しとかないといけないから」
そう言って陽子さんが手を伸ばすと、くるりと画面の中が回転し、部屋いっぱいに詰め込まれているギャラリーたちが映った。メモを持っている人や、カメラを回している人が多い。いわゆる記者たちがほとんどなのだろう。
「えー、皆さん、今日はお集まりいただきありがとうございます」
姿は見えないが陽子さんが話し出し、一斉にフラッシュが焚かれる。
「さて、今日は重大発表があるのですが……ん、何ですか、谷川放送の大橋さん?」
「いえ、私はここで、一つはっきりさせておきたいことがあるのです」
大橋さんと呼ばれた中年の男性が、勢いよく立ち上がった。
「どうしてそんなに重大発表が次々とあるのでしょう。昨日も同じ題目で記者会見をやりましたよね」
「ええ、やりましたね。でもあれは本当に重大発表だったではありませんか。消費税を上げるというね」
「だから言っているのです。国民は戦々恐々としているのですーー今日はどの税の増税が発表されるかってね。まずはそこをはっきりさせてください。今日は増税に関する話ではないという言質が欲しいのです」
「今日は増税の話ではありません」
「ではどのような話なのでしょうか」
「それを今から質問するのです。いいから座りなさい。私はあなたにマンツーマンのインタビューを受けているわけではないのですから」
「ああ、これは失礼しました」
大橋さんは着席した。
「それでは、今日の本題に入ります。まずは皆さん、こちらの映像をご覧ください」
陽子さんがリモコンを手に取り何やら操作すると、横のテレビの電源がついた。そこには若い男性が映っている。
「あれ、この人はどこかで見たことがあるような……」
私が思わずそうつぶやくと、横の間葉は少し引いたような目で私を見た。
「おいおい、キト、本当に大丈夫か? 彼がこの国の国王じゃないか」
「えーっ、国王さんってもうちょい年上じゃなかったですか?」
「いや、この国王はまだまだ若いけどなーーたぶんかなり前に撮ったものだと思う。それでもさすがにわかるだろ。なんつーか、キトが天原王国のことを全然知らないな。もしかして昨日あたり、転生者と入れ替わったんじゃないか?」
「やだなぁ、それはないですよ。本当にそういう政治的なことには興味がないんです。でも、昨日『ペルソナ・カール』が完結したことは知ってますよ」
「小説の話にしか興味がないのかよ。まあいいから、おとなしく映像を見ろ」




