5 魔法を見せつけられる俺·····
ザクリ··ザクリ····
宙に浮いた鍬が畑を耕す····ザクリ··ザクリ····
「レ~イ、真面目にやっとるか~?」
ギクリ
慌てて鍬を手で掴み休んでいる振りをする。
「ふぅー····。チラッ」
「よしよし真面目にやってるようじゃの···。」
玄関からこちらを見ていたじっちゃんの顔が引っ込むのを確認して再び鍬を浮かせる。
ザクリ····ザクリ····ザクリ····
畑に寝転び空を見る
のどかな空気に暖かな日差し
いやー、いい天気だ。
春って良いな·····眠い···。
時の流れは早いもので、遂に転生して半年が経った。
冬の間は俺が9歳になったり、母ちゃんのドロップキックでじっちゃんの腕の骨が折れたり、と余り大した事は無かった。
ちなみに折れたじっちゃんの右手は村の教会で直してもらった。
回復魔法スゲー!
ツンツン
ん?
なんだよ折角寝かけてたのに····。
頭をつつかれて目を開けると、薄桃色の髪をした少女がこちらを覗き込んでいた。
あぁ、ニーファか。
この半年で出来た友達だ。
石を持ち上げる修行をしていた所に声をかけられた。
その後も何故か定期的に魔法を見せに来る。
·····嫌味か?
「水魔法・ウォーターポンプ····」
伸ばしたニーファの手の先から大量の水が溢れ出る
魔法は何度見ても不思議だ。
·····ん?あれ?
なんか水多くない?
ちょ、畑が!
え?水止まんないの?
「·····ごめん」
え、えぇ!?
ちょ、ちょっと!
ザバァァ
うん。
畑ビシャビシャ·····。
「ごめん·····」
「うんうん····」
素直なのは良いんだけどね····。
あーあ、靴下まで濡れてるよ·····。
遠くまで流された鍬を念動力で手元に持ってくる。
うわっ、柄の部分がしっとりしてる····。
土もついてるし·····。
ジトーっとした目で無表情な少女を睨む
「·····ごめん。」
「まぁしょうがないか····」
相変わらず無表情だが、頭を下げられては何も言えない。
頭を下げるといっても頷く位の小さな動きだが····。
·····許してやるか、美少女だし·····。
その後は何事も無かった。
いつも通り俺は畑を耕して、ニーファは近くの木の下で魔法の本を読む。
ちなみに罰として隣の畑の水やりを手伝って貰った。
·····水魔法って凄いね。
·····とまぁこんな感じで、特に冒険とかする事も無く平和にすごしてます···。