21 咆哮は轟々と
「グァァァァァッッ!!」
木製の分厚い扉を破壊して入ってきた二足歩行の狼が、部屋の中央の重厚なテーブルを砕く。
「ガァァァアァァァァッッ!!」
黒狼師団長ヴォルグは、未だかつて無い程に不機嫌だった。
「クソがクソがクソがァァァッッ!」
ヴォルグが左腕をひと振りすると、少し離れた台に置かれた壺が割れ、硬い石で出来た壁に深い爪痕が残った。
「あぁ、あまり動くと左腕が取れるよ?まだくっついたばっかだからね·····」
「うるせェェ!!」
「うぉっと····」
真ん中で割れた丸い大きなテーブルの端に座っていたメガネの男が頭を下げてヴォルグの斬撃を避ける。
対象を見失った斬撃はそのまま直進して壁に深い傷を残した。
「まさかヴォルグが失敗するなんてねぇ〜·····ちょっと面白そうかも」
「アのガキと騎士団長は俺が殺す、手出しはさせねェ·····」
メガネの男の隣の席に座った派手な緑の巻き毛の少年が、おちょくる様な猫なで声で呟く。
「で?さっさと会議を始めたいんだけど」
反対方向の椅子に座った黒フードの女が声をかけた。
ここは魔王城の一角に作られた小さな部屋。
そしてこれから始まるのは─────
「座れ」
入ってきた黒フードの男の一声で、さっきまで怒りに身を燃やしていたヴォルグも大人しく口を閉じて席に着く。
「総勢5名····いつも通り〝第二席〟はサボりです」
「いい、始めろ」
黒フードの女が黒フードの男の言葉に頭を下げる。
「議会を始める、内容は─────」
黒フードの女が紙を捲って話し始める
「ヴォルグの今後と大魔導士の件だ」
議会が、始まった──────