2 何も見てない
いつまでも地べたに座り込んでいる訳にもいかないので、とりあえず家に戻る。
一応俺は村長の子供という事になってるし、村長を親として慕っているので家は一緒だ。
鍵を開けて家に入る。
流石に村長の家だけあって周りの建物よりは若干大きい。
木造の二階建てだ。
リビング···というより居間でお茶を飲んでる村長にただいまをして風呂に入る。
無事風呂を終え、2階に上がる。
向かって右側の扉を開いて自分の部屋に入る。
装飾の無いシンプルな机と椅子、そしてこれまたシンプルなベッド····それとちょっとした道具類。
これが俺の全財産だ。
ゴロリとベッドに横になって机の上を眺める。
机の上には製作途中になっている船の模型が小さなノミとトンカチと共に転がっていた。
『これは確か·····』
俺が作ったのか····。
作りかけでまだ帆の付いていないガレオン船を掴んで眺める。
あまり大きなものではないが、7歳の俺の手では両手を使わないといけなかった。
「ほえー。すげぇ····。」
自分で作っておいてなんだが素晴らしい出来だ。
いや作ったのはまだ記憶が戻っていない俺で、今の俺では無いが·····。
ふと窓の方を見ると、すでに外は暗くなっている。
時計の針は7時を指していた。
いつも使っている目覚まし時計なのに初めて見るとは····。
変な感じだ·····。
おっと·····いかんいかん。
夕飯の時間だ。
レイ・ロストの記憶がそう言っている。
まだ少し、混乱の収まらない頭を揉みながら俺は階段を下りた。
下のリビングではちょうど食事の準備の途中だった。
やはりレイ・ロストの記憶は正しかった様だ。
「レイ~、これ並べて」
おばさん····というよりもおばあさんに近いこの人は、村長の奥さんのクレアさんだ。
ちなみにおばあちゃんと呼ぶと怒る。
俺····というかレイの母親みたいなものだ。
母さんから皿を受け取り机に並べる。
どうやら今日の夜ご飯はシチューの様だ。
皿をテーブルに並べているとじっちゃんが風呂から出てきた。
「ほぉー美味そうじゃの」
腰にタオルを巻いたじっちゃんに母さんが怒鳴る。
「服を着ろと言ってるでしょう、が!」
メキィ 「グホォッ」
農作業で鍛えられたじっちゃんの腹筋がばっちゃん····じゃなくて母さんのボディーブローを受けて軋む。
やめてくれ····じっちゃんは60を越してるんだぞ·····。
てか、ばっちゃ···母さんも歳なんだからあんま無理は····。
·····まぁいいか···レイの記憶がこれがいつも通りだと言っている····。
最も、止めさせたい自分もいるが····。
転生による弊害だろうか?
悩んだ結果、俺は····。
「いただきます」
とりあえず夜ご飯を食べる事にした。
「うん。美味い」
·····こうしていつも通りの夕食を終えた俺はまだ喧嘩している二人を残してベッドで眠りについた。
ブクマ、高評価よろしくお願いします。(・ω・`)