18 帰路
「グルァァァッ!」
「クッ····」
巨大な狼と化したヴォルグが振り下ろした左腕を、シャムロックが弓で防ぐ
····が、さっきのヴォルグと明らかに違う腕力に押されて足が地面にめり込んでいる。
「アイリス!子供達を!」
シャムロックの叫びを聞いたアイリスが、子供達の前で剣を構える。
隙を見て子供を逃がそうとしている様だが、その度にヴォルグが鋭い睨みを向けるので、動くに動けない。
「グハハハハァ!!···グラァァァッ!!」
「がッ·····!!」
ヴォルグの全体重をかけられたシャムロックが、弾き飛ばされる
「シャムロック!!」
心配して叫ぶアイリスに、ヴォルグが口を開く
「グクク····安心しろ、俺は狙った敵しか殺さない。その小僧と小娘·····いや、小僧だけでいい、ソイツを渡せばもう誰も傷つけない···。」
狼が顎で示した先にいるのは青髪の少年·····つまり俺。
え?俺ここで死ぬの?
やだなぁ····。
憤ったアイリスがハッとして口を閉じる
アイリスの目線の先には、白いロングコートに付いた土をはらい落とすシャムロックがいた
「参ったよ、まさかこれ程とは····」
「フン?生きていたかァ····」
シャムロックの弓が光を放つ
「引かないと言うならしょうがない····国の為、騎士団の為、そして愛する我が子の為に!」
光が収まった弓は、大きく姿を変えていた
より大きく、より強く·····禍々しさすら感じさせる黄金の弓の矢が引かれる。
「ここで仕留める!《五月雨矢》!」
空に向かって、大量の光の矢が放たれた····
「ほざけェ!」
避けようとする巨大な狼の体に、矢が雨の様に突き刺さる
背中から血を流す狼を正面に、弓をつがえたシャムロックが呟く
「さぁ、狼狩りだ」