14 二ーファ①
「ガッァア···!!」
狼男が右腕を押さえる
肘から先が綺麗に切断されている右腕から血が吹き出る
「グッ···なァッ··!」
再び回転して戻ってきた自身の魔法を必死に避ける
·····が、放たれた魔法の矢は今や完全にレイ・ロストの支配下にあった。
「·····すごい·····」
驚きのあまり、口から言葉が飛び出す。
他人の魔法を操る·····。
そんな不可能に近い技を、その歳で、その相手で·····そしてなおかつ、自分の魔力を全く乱れさせずに行う。
人間じゃない·····。
◇◇◇
二ーファ・アテラスは天才だ。
自分でもそう思っていたし、周りもそう言った。
2歳の時、生まれて初めて魔法を使った。
初めて魔法を使う平均年齢は一般的に5歳なので、規格外と言ってもいい。
さらにそれだけでなく、使った魔法は炎系上位魔法の《火炎爆発》。
両親が元騎士団長で、優れた魔法の使い手だったからよかったものの、普通なら家ごと爆発に巻き込まれてもおかしくはない威力だった。
そして何より、二ーファには特別な力があった。
·····魔力が見える。
経験や勘で魔力の存在を感じる人はいても、魔力を見れるのは歴史上たった5人。
その5人は皆もれなく大魔導士····魔法使いの頂点である。
·····という話を理解するには二ーファはまだ幼すぎたが、何となく自分が特別だという事は分かった。
誇らしかった、そして嬉しかった。
魔法を学ぶのは楽しい。
だから沢山練習した。
天性の才能と努力の賜物を糧に、二ーファの実力はどんどん伸びていった。
そして5歳の時遂に···親を超えた。
普通なら初めて魔法を使う年齢でありながら二ーファは騎士団長の母に、父に、勝った。
·····といっても勝ったのは魔法だけであり、全体の実力では、今でも遠く及ばないだろうが。
父に勝った時、私は驕った。
微かに···それでも確かに驕った。
この世界で私に魔法で勝てる者はいない···そう思った。
勿論そんな筈がないのは分かっていた。
父や母が世界一強い訳でもないし、たとえ特別でも、ドラゴンに勝てる気はしない。
だが、頭では分かっていても、心は違う。
魔法を鍛え続けても、どこか心の底で慢心があった。
やがて魔法の練習時間は少しづつ減っていった。
嫌いになった訳ではない····する事が無くなったのだ。
家にある魔術本の全てを習得してしまうと、もうすることは何も無かった。
目標が欲しかった。
かつて両親を超えようとした時の様に明確な目標が·····。
そんな時、レイに出会った·····