常世の常
ふわり
ゆらりと
地上落ちる影
長く優美な尾を
空いっぱいに燻らせ
銀糸纏う肢体
もて余す宵闇
天を泳ぐ魚
月明かり散らした
無垢の一番星
舞う鱗で隠して
ぽたり
ぽたりと
滴り落ちる
綻び始めた花弁を
伝いなぞる夜露
頑な蕾の気配を滲ませ
匂いたつ姿を予感させる明夜
ただ見守る
花開くと信じて
宵の明星
祈るよう目伏せた
ここは庭園
整えられた箱庭
気紛れな魚の
一時の慰め
統べる銀河を下り
身を寄せる寝屋
地を躍る魚
踏み荒らした
立つ瀬に振るう
真珠色の尾
無造作に手折る
庭園の花
咲かずに折れた花
朝露が濡らした
膨らんだ蕾の期待を蹴散らせ
交錯する思惑 その身を掠めて
蓄えた夜露ごと 流す夙めて
知らず眼を見開く
祈りも忘れて
頭擡げる感情
駆け巡る激情
明けの明星
疾く昇る空
白んだ境界
やがて影を伸ばす
無情の朝陽が告げる
現世の始まり
うつしよ と かくりよ は、表裏一体