№5 尋問
サドそれはS。
ローリアンとララは灼熱鬼をロープでグルグルの簀巻きにして歩かせ、ディオラ国へたどり着いた。
巨体の鬼は中庭に通された。
そこで二人と囚われの鬼は、ディオラ王とエルフの女王兼王の秘書エスメラルダに謁見した。
第二王女エリザも王の傍らにいる。
英雄が平和をもたらしたことにより、ウエスト・サン・ガイアの国々は、今後ひとつの国へと統合される。
今はその過渡期、ディオラ国はウエスト・サン・ガイアにおいて中堅国に位置する。
弱小国であるエルフ国は、ディオラ国を頼りともに国難を耐えた同盟国である。
エルフの女王エスメラルダは、エルフ国を萌狩隊とアグラモア軍に託し、国の統一移行期間中はディオラ国とエルフ国の政務を、ディオラ王とともに行っている。
王の次女、エリザベートは2人のサポート役として補佐官を務める。頭脳明晰、大食漢、シスコン、自称悪役令嬢である。
初老の域に達して、なお筋骨隆々、健康そうなガン黒日焼け、輝く白い歯のディオラ王は、鬼を見て驚きの声をあげる。
「ほう・・・これが鬼」
白銀の髪に、鋭く尖った耳、ブルーサファイアの瞳に整った顔、真っ白な肌にスレンダーボディ、エルフのケルト風ドレスを優雅に着こなすエスメラルダは側近に尋ねる。
「ローリアン詳細を」
「御意っ!先日、我が隊の一人が失踪し、その現場を捜索、調査中にかの者と遭遇、仔細を問うたところ答えぬばかりか、交戦を仕掛けてきたので捕縛、確保しました」
栗色の髪のくせっ毛、伸ばすのが面倒くさいのか、放棄したのか肩にかかる手前で揃えている。大きな緑瞳、感情豊かな愛嬌のある丸顔、ぽっちゃり系のやや二頭身、真っ赤なドレスがダボついて見えるが、姉のものらしい。
「ふうん・・・で」
エリザの瞳が大きく問い詰めるように開く。
「エリザ様・・・隊長のお考えでは、この件をお任せしたいと」
「ふうん、ララ、分ったわ。ようは失踪事件と関りがあるか吐かせろと」
「御意」
ローリアンは平伏する。
「んで、目的も聞けと」
「はい」
ララは頷いた。
「ふうん」
「邪悪の恐れ大いにある者です。私の一存では量りかねます」
ローリアンは伝える。
「分かりました」
エスメラルダは灼熱鬼の前へ進み出る。
隊長とララは素早く、女王を囲み護衛する。
「結構」
エルフの女王は毅然と言った。
「しかし」
「鬼の者よ」
エスメラルダは灼熱鬼に語りかける。
「何だあ」
血走った目で、女王を睨みつける鬼。
「私たちの同朋をさらったのは、あなたですか」
「知らないなあ」
鬼は首を鳴らした。
「では、あなたの目的は」
「さあ」
しらばっくれる灼熱鬼。
「生ぬるいっ!」
エリザが叫んだ。
「そうね」
エスメラルダは冷たく微笑んだ。
「では、もう一度聞きます。あなたはさらいましたか、目的は?」
「知らん!」
「そう」
エスメラルダは、頭に手をやりカチューシャに付着していた霊木の種を掴み、握りしめると、途端に蔓が生え伸び棘付きの鞭となる。
「ひえっ」
ディオラ王が恐怖と喜びともつかぬ声をあげる。
「お仕置きが必要ね」
「あわわわっ・・・」
王はブルブルと震えだす。
(お仕置きされたな)
ローリアンは遠い目を見せた。
(・・・なんだかなあ)
ララは大人の事情ってヤツをおぼろげに感じた。
マゾそれはM。