第1話 プロローグ
俺の名前は南川翔真。
都下の高校に通うしがない高校1年生だ。
学校には友達なんかいない。
むしろいじめられている。
正直心底行きたくないのだが、今や惰性で通っている。
今は放課後。
余り学校に長居したくないので、さっさと家路に着こうとしていたが。
顔面に、何かが飛んできた。
―痛い。
誰かが、俺にボールを投げつけたらしい。
「よっしゃっ!あったりー!」
「お前、相変わらずドンくさいな!」
「ほんと南川ってトロイよなぁ。」
「そうそう。なんでもこいつ、他の高校の一斉試験の日に体調崩して、たまたま試験の日が被らなかったここにしか受からなかったらしいからな。」
―またお前らか。
こいつらは泉、大井、福田。いつも俺をいじめてくる奴らだ。
「悔しいか?悔しいか?あ?」
「なんだ?何か文句あんのか?」
「やめとけ。ウスノロのお前にはどうせ何も出来やしないんだから。」
―いつか・・・いつか俺だって・・・!
言い返そうとしても、言葉は出てこない。
俺は視線をそらし、窓の外を見た。
窓越しの校庭に、同学年の直竹樹里奈の姿が見えた。
ストレートの長い黒髪に、やや小柄の身長。
ふくよかな胸をもつ彼女は、聞こえてくる噂だと男子にはかなり人気があるらしい。
最も、友達のいない俺はそういう話には加わらないが。
「おい見て見ろ、直竹がいるぞ。」
「やっぱスタイル良いよなぁ。」
「胸もデカいしな。」
「あいつ、性格はなんか暗そうだけど、いい体してるよな。」
「一度付き合ってヤりまくってみたいよな。」
「俺今度あいつにアタックしてみよっと。少しおせば簡単に落ちそうだし。」
―ものすごく下品な会話をしているが、俺には関係ないな。
「ぐっ!」
腹に強烈な痛みが走る。
泉の奴が隠し持っていたスタンガンを押し付けたようだ。
「どこ見てんだよウスノロ。」
―この野郎、スタンガンは校内持ち込み禁止のはずだぞ。
俺は奴らをにらみつける。
「あれか、まさかお前も直竹に気があるのか?」
「こいつだけは絶対にないから心配しなくていいな。」
「そうそう。」
泉は去り際に捨て台詞を残した。
「お前が担任に訴えた所で信用なんかしやしないさ。なにしろ成績だって俺達の方が全然良いんだからな!」
「そうそう。」
「さ、こんな奴なんかにかまってないで行こうぜ。」
「そうだな!」
ようやく奴らは立ち去ったようだ。
―色々と痛いが、とりあえず、家に帰ろう。
幸い、今日は金曜日。明日は学校に行かなくていい。
俺の家は、高校の最寄駅から電車に30分乗り、終点の駅から更にバスで40分揺られた山奥にある。
両親は離婚し、学費と生活費だけを残して消えた。
兄弟もいない。
家でも、学校でも、俺は独りだ。
―その内、何かいい事があるといいな。
とりあえず、今日はもう寝よう。
翌日、目が覚めるともう昼過ぎだった。
特に用事もないから良いけど。
―しまった、昨日買い物するのを忘れた。スーパー遠いのに・・・
俺は憂鬱な気分になりながら、山のふもとにあるスーパーまで自転車をこぎだした。
買い物を終え、山奥への家路につく。
意外と時間がかかってしまい、もう夕方だ。
スピーカーが役場からの連絡を伝えている。
「・・・熊が目撃されました。付近の皆さんは・・・」
―なんだ、また熊が出たのか。
今月で2回目、今回は俺の家のすぐ近くだな。
別に大したことでは無い。
俺の家は山奥にあるので、熊もたまに現れる。
今の時間は活発に動き回ってるだろうから、少し用心しよう。
薄暗くなっていくなか、俺は家の近くの川沿いに差し掛かっていた。
ガサガサガサ!
「…!」
―なんだ?
前の方が騒がしいな。
俺は自転車をこぎながら、慎重に近づく。
いや、もう大体「何」がいるかは分かっている。
そいつがうなり声を上げた。
ウオオオオ!
ほら、やっぱり熊だ。
―あれ?
よく見ると、いるのは熊だけでは無かった。
その目の前の道路わきに、若い女の子が座り込んでいる。
休日だし、ハイキングにでも来た帰りだったんだろう。
「あ・・・!たすけ・・・!」
予想外だったであろう熊との遭遇に、すっかり怯えきっている。
まあ、都会の人はそりゃそうなるよな。
そこで。
俺はあることに気付く。
―あれ?この女の子、どこかで見たような・・・?
記憶を辿り・・・
そして驚愕した。
「直竹さん!?なんでこんな所に!?」
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